第3話 元の世界に帰るのは大変そうでした。
ジョーカーズさんの作品とのコラボ企画!
「戦隊ヒロインのこよみさん」×「一本から始める異「触」なライフ。 〜 エロスキルしか使えない触手に転生した俺は、 それでも健全な生き方を目指します! 〜」
第3話です!
「ああ……おっと、まずは自己紹介からだな。俺は“ロプス=ウネリン”、この世界に触手として転生してきた、元日本人だ」
突然放たれた触手……ロプスさんの言葉に、僕は声を失う。
え!? 元日本人!? 転生!? 触手に!?
「はあああああああああああああ!?」
そして、ロプスさんの言葉を咀嚼し終えると、僕の口から出てきたのは只々驚愕を示す叫び声だった。
「こ、耕太くん!?」
おっと、僕の叫び声を聞いたこよみさんが、今にもこちらに飛び出そうとしているぞ。
「す、すいませーん! ちょっと驚いただけで、何でもないですからー!」
僕は慌ててこよみさんにそう返事して制止するんだけど。
「こ、こよみさん!?」
「アカン! やっぱり耕太くんに何かあってもアレやさかい、ウチも一緒にいる!」
結局こよみさんは僕の元にやってきて、身体にぴと、とくっついて離れなくなった。
「あはは……ええと、ロプスさん、彼女も一緒で構いませんか?」
「あ、ああ、俺は別に構わないけど……」
そう言うと、ロプスさんは僕とこよみさんを見やって? 苦笑? した。
うん、触手だから表情が全然読めない。
「そ、それで……ロプスさんは“元日本人”ということ、なんですよね……?」
僕がもう一度そのことを聞き返すと、こよみさんがヒュ、と息を吸い込み、僕の身体を強く抱き締めた。
「ああ。俺の日本人の頃の名前は“新貝ノゾム”って言うんだが……」
それから、ロプスさんはこれまでの生い立ちと今までの経緯を語ってくれた。
ロプスさんは元々海洋調査の仕事をされていて、深海に潜っている時に事故……というか、深海にいた生物……その、“触手”みたいな生き物に襲われて命を落としたこと。
どこからか声が聞こえ、『触手まみれの場所から連れ出してくれ』と頼んだら、何の間違いか触手に生まれ変わっていたこと。
向こうにいるこよみさんくらいの背の高さの女の子……ミアさんに拾われ、紆余曲折を経て今は世界を旅していること。
「……で、ちょうどこの街での事件が片づいて、そろそろこの街を出ようと考えていた時に、君達に出会った……というか、うちのエリィが連れてきたわけなんだけど……」
すると、ロプスさんはチラリ、とこよみさんを見る仕草をした。
「その……なんでこの女の子はニチアサみたいに戦隊モノのコスプレしてるんだ……?」
「「コ、コスプレえ!?」」
え? え? ちょっと待って!?
あれだけ大々的に政府が広報までしてるのに、“ヴレイファイブ”のこと知らないの!?
「あ、あのー……こよみさん達の姿はコスプレではなくて、政府公認のれっきとした“戦隊”なんですけど……」
僕はロプスさんにおずおずとそう説明すると。
「プ」
「「プ?」」
「ぶわあっははははははははははははは……はは……は……」
ロプスさんは突然大声で笑いだした……んだけど、怒ったこよみさんに“ブリューナク”を突きつけられ、身体をヒクヒクとさせた。
「あー……まあその……そ、そんな組織があるんだなー……」
気まずくなったのか、ロプスさんが顔? 触手? を逸らしながら棒読みでそんなこと言った。
……うん、絶対信じてないな。
というか。
「……ひょっとして、ロプスさんが前世でいた世界と、僕達の住んでいる世界は似てるけど違う……?」
うん、そう考えると、会話がかみ合わないのも頷ける。
「耕太くん……?」
「あ、ああ、すいません。とにかく、僕達はロプスさんの知らない“日本”からやってきました。僕達の“日本”にいる、“怪人”の仕業で」
「怪人だって!?」
驚くロプスさんに、僕は怪人イリュージョニスタによってこの世界に飛ばされてしまったことを説明する。
「……ふうん。怪人に、ねえ……まあ、俺がこの世界に転生したりするくらいだから、そんなことが起きても、不思議じゃない、か……」
「……僕の話を信じてもらえるんですか?」
「ああ。だって、君達の恰好は俺の知る“日本”のそれだし、少なくともコッチに転移してきたっていうのは間違いないだろうしな」
そう言うと、ロプスさんはうんうん、と触手を頷かせた。
触手のジェスチャー、意外と分かるものだなあ。
「まあ、いきなりこんなところに来て大変だろうから、とりあえずは俺達が利用してる宿に行こう。それに、宿にいるうちの“軍師”に聞けば、ひょっとしたら何か分かるかもしれない」
「! い、いいんですか?」
「ああ、こうやって出会ったのも何かの縁だ。まあ、できる限りのことはさせてもらうよ」
「あ、ありがとうございます!」
僕はロプスさんに深々と頭を下げた。
まさかこんな人の良い触手がいるだなんて……って、中身は日本人なんだけど。
◇
「……なるほど。事情は分かりました」
僕達とロプスさんから話を聞いたロプスさん達の“軍師”、ハイネさんがそっと目を閉じた。
「ど、どうでしょうか……?」
僕は恐る恐るハイネさんに尋ねると。
「……ロプス様の例もあります。ですから皆様の“異世界転移”の話を否定する事はできません。そしてこの話が事実だと仮定すると……皆さんを元の世界に返す方法は、一つしかありません」
「帰る方法があるんですか!?」
ハイネさんの言葉に、僕は思わず身を乗り出した。
よ、よかったあ……! 何とか帰れそうだぞ!
「はい。ですがその為には『空間魔法』を利用する事が必要です。しかも特定の条件下でないと意味をなさないでしょう」
うん、やっぱり簡単には元の世界には戻れないみたいだ。
「それで、どうすれば元の世界に戻れるんだ?」
これまで静かに聞いていた飯綱先生が、ハイネさんを鋭い視線で見つめながら静かに問いかけた。
「はい。まず皆様がこの世界に来た時の場所、これはどなたの場所でも構いません。そこから皆様のいた世界との“繋がり”を見つけ、そこで『空間魔法』で飛ばせば変える事がるでしょう。ただし、その“繋がり”が簡単に見つかるとは限りません」
ああ……やっぱりそう簡単にはいかないかあ……。
「そして時間が経てばその“繋がり”も消滅してしまいます。急いでその場所に向かう事をお勧め致します」
「「「「えええええ!?」」」」
そ、そういうことは早く言ってください!?
お読みいただき、ありがとうございました!
次話は22時を予定!
なお、ウネリンの視点の番外編は下記からお読みいただけます!
物語本編と一緒にどうぞ!
「一本から始める異「触」なライフ。 〜 エロスキルしか使えない触手に転生した俺は、 それでも健全な生き方を目指します! 〜
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