第2話 出会ったのは触手な日本人でした。
ジョーカーズさんの作品とのコラボ企画!
「戦隊ヒロインのこよみさん」×「一本から始める異「触」なライフ。 〜 エロスキルしか使えない触手に転生した俺は、 それでも健全な生き方を目指します! 〜」
第2話です!
「おう、ここは“ヒューマニア”って人間の国だよ」
男の一人が放った言葉に、僕は思わず背中が汗で冷たくなるのを感じた。
ひょっとして……異世界に転移した?
イヤイヤイヤイヤ! いくらあの怪人の能力が“空間転移”だったとしても、だからって異世界にでるだなんてそんな、ねえ……?
でも。
僕はチラリ、と男達を見ると……うん、やっぱりどう見ても盗賊スタイルだ。
それにあの街……中世ヨーロッパの地方都市みたいな街並みだよね……。
「オラ! もう話はいいだろ! サッサと身ぐるみ置やが「そこまでだ」」
突然、男の一人の首元から、剣がニュ、と現れた。
見ると……騎士の姿をした女性だった。
「盗賊ども、ツイてなかったな」
「クッ!? テメエ! 騎士か!」
「そうだ。おとなしく縄にかかるんだな」
凛としたたたずまいの女騎士さんは、クイ、と首で合図すると、物陰から兵士達が現れて盗賊達を拘束する。
「ふむ……こんなところを一人でうろついていると……って、オイ、おかしな恰好をしているな?」
女騎士さんはまじまじと僕の姿を眺めると。
「うむ、怪しい奴だ。貴様も一緒に来い」
「はあ!?」
ちょ、ちょっと待って!? 僕も!?
「お、お待ちください! 僕は決して怪しい者では!」
「怪しい奴は全員そんな台詞を言うんだ。とにかく、おとなしくついてこないと、手荒な真似をしないといけなくなるが……どうする?」
そう言うと、女騎士さんはニイ、と口の端を吊り上げた。
うわあ……有無を言わせないって、こういうことを言うんだな……。
僕はこよみさん達のことが気がかりながらも、とりあえず女騎士さんに従い、そのまま連行されていった。
◇
「へえ……!」
女騎士さんに連れられて僕は街に入ると、その様子に感嘆の声を漏らした。
だって、こんな景色、日本……いや、世界中どこだってお目にかかることができないんだから。
「ん? なんだ、街が珍しいのか?」
キョロキョロと街を眺めている様子の僕が気になったのか、女騎士さんが声を掛けてきた。
「ええ。こんな街、僕が住んでいるところでは絶対に見ることができませんから」
「ふうん……大分田舎から出てきたのだな。ところで、お前の名はなんだ?」
「あ、はい、僕は“上代耕太”と言います」
「“上代耕太”? 変な名前だな」
「あはは……」
女騎士さんの言葉に、僕は頭を掻いて思わず苦笑する。
ま、まあ、日本人の名前なんて、異世界じゃあり得ないか……。
「ふむ。私は王国騎士団『白百合』の団長、“エリス=ライトニング”、まあ“エリィ”とでも呼んでくれ」
「は、はあ……」
王国騎士団って……結構偉い人だった!?
僕が女騎士さんもといエリィさんに慄いていると。
——ヒュウウウウウウウウン!
うなりを上げ、エリィさんの手首にいばらの蔦……ヴレイウィップが巻きついた。
「上代くんを離しなさい!」
見ると、ヴレイバイオレットに変身した紫村先輩が道の真ん中で仁王立ちしていた。
え!? この世界の人々は、あの恰好でも誰も何とも思わないの!?
「ふむ……この男の仲間か?」
「そうよ! 私の“大切な人”なんだから!」
えええええ!?
ちょ、先輩、何言い出すんですか!?
「そうなのか?」
エリィさんがこちらを見て尋ねてきた。
「いやいやいや!? 僕、婚約者がいますから!」
慌ててそう説明すると、今度はエリィさんが怪訝な表情を浮かべて先輩を見やった。
すると、先輩は明後日の方向に急に口笛を吹きだした。
せ、先輩……。
「と、とにかく! 上代くんを離しなさい!」
「まだ素性が分からない以上、この男をまだ解放する訳にはいかない! というか! お前もだいぶ怪しいぞ!!」
先輩とエリィさんが睨み合う。
ヤ、ヤバイ、止めなきゃ……!
「おいエリィ、何やってるんだ?」
すると、突然背後から声を掛けられたエリィさんが振り返ったので、僕もつられて振り返ると……ち、小さな女の子に抱えられた、その、モ、モンスター!?
RPGとかによく出てくる雑魚キャラ、そして、前に桐谷の奴が無理やり押し付けてきたエッチなマンガに出てきた、ヌメヌメとした……“触手系”、だった……!
「っ! エリ「“ロプス”殿! 街の郊外を巡回していたら、盗賊と怪しい男を捕まえたのだ!」」
僕が警戒するようにエリィさんに声を掛けようとしたら、なぜかエリィさんはこの触手を見て嬉しそうに話し掛けた。
え……? まさか……エリィさんは、この触手が趣味……!?
ま、まさか……!
「(ね、ねえねえ……ひょっとしてこの女騎士、いわゆる“くっころ”ってヤツじゃない?)」
いつの間にか僕の傍に来先輩が僕に耳打ちする。
はい、僕も先輩と同じこと考えました……。
「へえー、怪しい男なあ……って、そ、その恰好は!?」
ええ!? なぜか触手が僕達の姿を見て驚いているぞ!? なんで!?
「な、なあ……ひょっとしてだけど……」
そう言いながら、触手は震える触手を僕に伸ばそうとすると。
「待たんかい!」
その聞き慣れた叫び声と共に、桃色と銀色の影が颯爽と僕達の前に現れた。
「耕太くんに指一本触れてみい! ただじゃ済まさへんからな!」
「こよみさん! 飯綱先生!」
“ブリューナク”の切っ先を触手に向けるこよみさん。
その姿に安堵した僕は思わず駆け寄り、そして。
「はわ!?」
「こよみさん! 無事でよかった!」
こよみさんを、後ろから強く抱き締めた。
「も、もう……ウチは大丈夫やで? それより、耕太くんも何ともなくてホンマよかった……」
照れくさそうにそう言うと、こよみさんはそっと巻き付いた僕の腕に手を添えた。
こよみさん……。
「……コホン」
「「ハッ!?」」
咳払いされ、思わず周りをキョロキョロと見る僕とこよみさん。
……どうやら、目の前の触手のものだったらしい。
「イチャついてるところ悪いんだけどさ、君達と話がしたいんだ。いいかな?」
「「は、はあ……」」
苦笑しながら尋ねる触手に、僕達は呆けたまま頷いた。
ほ、本当にこの触手は何なんだ……?
なんというか、その……普通に紳士的なんだけど。
「悪いな。それで……君達はひょっとして、“地球”……しかも、“日本”から来たりしてないか?」
「「「「っ!?」」」」
触手の言葉に、僕達四人は固まった。
この触手、“日本”を……僕達の世界を知ってる!?
「ど、どうしてそれを!?」
僕は思わず触手に詰め寄ると。
——シュル。
「うわ!?」
突然、触手は小さな女の子から僕の身体へと巻き付いた。
「っ!? 耕太くん!?」
すぐに臨戦態勢を取り、触手を引き剥がそうとするこよみさん。
だけど。
「こ、こよみさん! 僕は大丈夫です! それより……」
僕はチラリ、と触手へと目を向けると。
「ああ、話が早くて助かる。ちょっと向こうで話をしようか?」
やっぱり……この触手、エリィさん達に聞かれたくない事情でもあるのかな?
僕は触手の言葉に静かに頷いた。
「と、とりあえずこの方と少し話をしてきますね?」
「こ、耕太くん! 大丈夫なん!?」
「ええ、大丈夫ですよ」
そう言って頷くと、僕は肩に乗る触手と一緒にみんなから離れた。
「ここまで来れば話は聞こえないと思います。それで……話ってなんでしょうか?」
僕は触手に尋ねると。
「ああ……おっと、まずは自己紹介からだな。俺は“ロプス=ウネリン”、この世界に触手として転生してきた、元日本人だ」
お読みいただき、ありがとうございました!
次話は21時を予定!
なお、ウネリンの視点の番外編は下記からお読みいただけます!
物語本編と一緒にどうぞ!
「一本から始める異「触」なライフ。 〜 エロスキルしか使えない触手に転生した俺は、 それでも健全な生き方を目指します! 〜
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