第三話 異世界戦隊大暴れ!
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コラボ作品の第三話です!
「お、お前ら。一体なんなんだ! 何モノなんだぁ!」
ダークスフィアの残党達が叫ぶ中、僕達は横一線に並ぶ。
うん、帰りたい。
「ワシらはのぉ!」
あー……始まっちゃった……。
「あのぉ、本当にやらなくてはならないのかしら。わたくし、とても恥ずかしいんですけどぉ」
その気持ち、激しく同意します!
「マム、ここは勢いでやるのじゃ! この間陛下と一緒に暴れん坊皇帝やったじゃろ。あのノリなのじゃ!」
「そうなのぉ、リーヤちゃん。分かったわ、チエさん、行きますわ!」
「おうなのじゃ!」
あ、エレンウェさんも陥落してしまった。
もはや、逃れる術はなくなったようだ……。
「異世界帝国異界技術捜査室、室長。ファンタジーエルフィン! エレンウエィ・ルーシエン!」
って、超ノリノリじゃないですか!?
オマケに白い煙と共に爆発う!?
「同じく、捜査室警部補。ファンタジータイフーン! リリーヤ・ペトロフスカヤ!」
あー……リーヤさんは……子どもだから仕方ない、か……。
「同じく、捜査室巡査長。ファンタジーウルフ! ヴェイッコ・カルヒ!」
ファンタジーウルフって誰!?
僕はその名乗りにツッコミをせずにはいられない。
見ると、こよみさんもツッコミたくてうずうずしてる。
「同じく、捜査室巡査。ファンタジードワーフ! ギーゼラ・ギンスター!」
ファンタジードワーフって何!?
ああ……ツッコミができれば、どれほどスッキリすることか……。
「同じく、捜査室巡査。ファンタジースナイパー! 守部武士!」
武士さんまで!?
多分、僕の今の顔は、ポータムに来て一番魂が抜けていると思います。
「次はコウタ殿じゃ!」
「ええ!? 僕もですかあ!?」
僕はリーヤさんに促され、思わず自分を指差す。
イヤイヤイヤ、僕は嫌ですよ!?
でも。
「耕太くん……もはや諦めるしか、ないみたいやで?」
そう言うと、こよみさんは他の面々を見やる。
僕も同じようにそちらに視線を向けると……うわあ……全員、ものすごく期待した瞳でコッチを見てる……。
よし、諦めよう。
どうせポータムだし、先輩達も僕達がこんな恥ずかしいことしてるとは思わないだろうし。
僕は覚悟を決め、ビシ! とポーズを決めると。
「ヴレイファイブ後方支援、そしてこのたびこよみさんと結婚した、上代耕太です!」
僕はモモに跨りながら高らかに宣言した。してやった。
あははははは……もうどうにでもなれ……。
「勇者戦隊ブレイファイブの一人、ヴレイピンク=ヴァルキュリアの上代こよみや!」
こよみさんは “ブリューナク”を構えて名乗りを上げる。
あ……今、“上代”って……。
ああ……それだけで、僕は幸せです……。
「そして、異界の魔神にしてデウスエスマキナ! 魔神将 チエ!」
女の子がそう叫ぶと、なぜか長身で妖艶な魔神の姿に変身した!?
え? え? どういうこと!?
「われら!」
あ、考える時間はいただけないようでした。
「「「「「「「「異世界戦隊 ファンタジーエイト!!!」」」」」」」」
うわあ……お願いだから知り合いには見られたくない……。
「お、オマエラ、マジか! ようもワシの前で吼えたわ。せっかく名乗り上げを待ってやったんだ。生かしては返さんぞ! いけ、ヒト化獣よ!」
「ぐるぅぅ!」
えー……その前に仕掛けてくれたら、名乗りを上げずに済んだのに……だからダークスフィアはダメなんだよ……。
「それってオークやコボルトとどう違うの?」
武士さんが不思議だと言わんばかりにキョトンとする。
あー……ここはポータムだから、そういった種族もいますよねー。
「なんだとぉ! 彼らはワシが丹精こめて豚や犬に人間の遺伝子を組み合わせたヒト化獣なのだ!」
「でもオークさんよりも賢そうに見えないし、よわそーなのじゃ!」
ええと……オークって、そんなに強いんですか?
「こ、こ、このぉ! 者共、早くいけー!」
などと、神埼という男がいかにも悪役然とした台詞で部下達をけしかける。
すると。
「ほいな!」
武士さんが開口一番、手に持つ銃で怪人の脛を打ち抜いた。
いやいや、射撃の腕が半端ない。
「バカめ。ワシが作り上げた怪人が、たかがライフル弾で倒れるはずはない。DS細胞の再生能力は無敵……ん?」
神埼は自慢げに語るが、当の怪人は脛を押さえながらもんどりうっている。
「あのね、敵の正体が分かっているんですから対抗策を考えていて当たり前でしょ? DS細胞も所詮レトロウイルスによって書き換えを行ったもの。なれば別のレトロウイルスで書き換えれば……ね。それと対魔法能力なんてある筈ないですよね」
そう語る武士さん。
その傍らでは、リーヤさんが、ええと……アレ、魔法かなあ……。
「誰だぁ。我等の悲願を邪魔するやつらはー!」
「さあ、皆さん。一気に殲滅しますわよ! 一応、手加減して出来るだけ殺さないように。後で地球送りにしますから」
「あいあい!」
「拙者、このところ楽しいでござるぅ」
「アタイもこういうの楽しいね。 ハイ!」
うーん……全員好戦的だなあ……まるで金色の髪に変化するどこかの戦闘民族みたい……。
「神埼だかなんだか知らへんけど! 行くで!」
こよみさんが“ブリューナク”の切っ先を向け、そのまま突撃するけど……躱した?
「くそう。役に立たないヤツラめぇ。ヴレ——イピンク。オマエだけはなんとしても手に入れるぞ!」
ええー……なんでそんな呼び方を……。
すると、神埼と言う男は両手を顔の前でクロスして叫ぶ。
「変身!」
神埼の身体がボコボコと変化を見せると、服が破れ、中から何か脚のようなものが飛び出す。
「これぞ、究極の怪人。ワレこそはカボウラスレーザーだぁ!」
うん……どうやらカニの怪人みたいだ。
あー、そういえば冬も近いから、今度家でカニ鍋しよう。
「死ねい、ヴレ——イピンク!」
「っ!?」
「こよみさん!」
反転しようとした隙を突いてカニの怪人がこよみさんに襲い掛かる。
それを見た僕は、気がつけばモモのアクセルを全開に回し、カニの怪人へと突っ込んでいった。
だけど……カニの怪人は思いのほか固く、僕とモモは弾き飛ばされてしまう。
「ぐぅ。邪魔ものめぇ。この程度、ワシの甲羅の前には効かぬぞ!」
「オマエ……オマエエエエエエ! 耕太くんに何するんやあああああ!」
吹き飛んだ僕をみて逆上したこよみさんが、叫びながら“ブリューナク”を突き出す。
だけど。
「ふん!」
“ブリューナク”がカニの怪人の巨大なハサミで逸らされてしまった。
「な、何やて!? ウチの“ブリューナク”が!?」
こよみさんはバックステップでカニの怪人から離れると、あの高田光機を屠った“ブリューナク”を逸らされた事実に、驚きの声を上げた。
「その槍の事は研究済み、刺さらなければ効果もあるまい。ワシの体表面はシリコン樹脂を含んだ粘液で覆われておる。ヴレ——イピンクの槍先なぞ滑って刺さりはしないのだぁ!」
「ならば!」
調子に乗って高らかに叫ぶカニの怪人の隙を突いて、武士さんが狙撃した。
「ザコに効いてもワシには効かんぞぉ!」
だが、やはりカニの怪人は拳銃の弾丸も容易く弾く。
「さあ、死ねイ! ワシの死の光を受けるのだ」
すると突然、カニの怪人の頭部にあるサソリ? の尾の先端が赤く光り出した。
「危ないのじゃ! 皆の衆、ワシの背後に来るのじゃ!」
妖艶な魔神に変身した女の子の叫びに反応し、僕を含め全員がその指示に従って彼女の背後に集まった。
「喰らえ、カニ光線!」
そう叫ぶと、サソリの尾の先端から、ものすごい熱量の光線が射出された。
だけど。
「ふぅぅ。ワシの全力のシールドで精一杯なのじゃぁ。リーヤ殿、マム殿。フォローありがとうなのじゃ」
「いえいえですわ」
「なのじゃ!」
魔神の女の子が展開した防御シールド? がその光線を受け止めたおかげで、僕達に被害はなかった。
「ほう、ワシのビームを防ぐとはのぉ……しかし、2発目を耐えられるかな?」
そう言うと、カニの怪人が再びサソリの尾の先が赤く光り出した。
「危ないのじゃ、次にカニ光線、イブセマスジーを喰らうたら危ないのじゃ!」
「あれ、チエさん。蟹工船って小林多喜二さんの作品じゃなかったでしたっけ?」
「その突っ込みは20年以上遅れなのじゃぁ!」
あー……僕は今の発言には、あえて触れないでおこう。
「危ないのぉ、みんなぁ!」
え? 今の声、どこから!?
すると、突然カニの怪人の頭上に一斉に弾丸やグレネードが襲い掛かった。
「この程度、ワシに効くかぁ!」
だけど、どうやらカニの怪人には通用しなかったようで、反対に狙われる格好となってしまった。
「リーヤさん、砂塵嵐でシールルグ号の前に壁を作って!」
「ほいや! ストーム!」
またもやリーヤさんの魔法で激しい風が巻き起こり、砂塵を巻き込んで壁を形成した。
「消えよ!」
カニの怪人がそう叫んでレーザーを射出するが、砂塵の壁で威力の落ちたレーザーを躱すことができたようだ。
「小生意気なガキ共がぁ。今度は全員殺す! 真なるカニ光線を喰らうがよい」
今度はカニの怪人の両肩からレンズ状のものが現れ、赤く光りだす。
「不味いのじゃ、今度はコバヤシタキジーなのじゃぁ!」
「だから蟹工船の作者は小林多喜二さんでしょ?」
「じゃから、ツッコミが古いのじゃぁ!」
ええと、意外と余裕!?
だけど。
「さて……どうしますかね……」」
僕はこの戦局を打開するため、頭の中をフル回転させる。
「あの妙なヌルヌルしたヤツのせいで、“ブリューナク”が刺さらへんし……」
そう……たとえ強固な外殻を有しているとはいえ、こよみさんの“ブリューナク”なら貫くことも容易いはず。
それをさせないのは、偏にあの粘液のせいだ。
「カニの関節を……いや、それすらも外殻と粘液で覆われていて……」
そう考えていた時……女の子からテレパシー? が入る。
っ! そうか! ……それなら!
「では、皆さん行くわよ!」
「「「「「「「おー!」」」」」」」
そして、ダークスフィアの残党……カニの怪人との最後の戦いが始まった。
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引き続き、どうぞよろしくお願いします!




