戦隊ヒロインのこよみさんは、やっぱりごはんを邪魔される!
ご覧いただき、ありがとうございます!
いよいよ最終回!どうぞお楽しみください!
「さあて、と」
僕は冷蔵庫から玉ねぎ、長ネギ、しょうが、にんにく、白菜、しいたけ、ニンジン、ゴボウの野菜類と、豆腐、鶏もものひき肉を取り出す。
「じゃ、始めましょうか」
「うん!」
元気に手を挙げるこよみさん、最高に可愛いです。
早速僕は、玉ねぎの皮を剝いて、半分を薄切りに、残り半分をみじん切りにする。
おっと、長ネギもみじん切りにしないと。
「それじゃ、こよみさんは白菜とニンジン、ゴボウを洗ってもらってもいいですか?」
「うん! 任しとき!」
こよみさんは野菜を受け取ると、嬉しそうにしながら野菜を洗い始めた。
さてさて、その間に僕は……。
土鍋の三分の二ほど水を入れ、そこにお酒を一カップ入れて火にかける。
にんにく一片けとしょうが同量をすりおろして……薄切りにした玉ねぎと一緒に土鍋に投入。
土鍋が沸騰したら、そこへ顆粒だし、鶏がらスープの素、塩、コショウ、醤油を適量入れてさらに一煮立ち。
お酒のアルコール分がしっかり飛んだか確認して……。
「うーん、もう少し塩を入れたほうがいいかな?」
僕はもう少しだけ塩を加え、再度味見をする。
「うん、これでオッケー」
「耕太くん! 野菜、洗い終わったで!」
「あ、ありがとうございます」
僕はこよみさんから野菜を受け取ると、ニンジンとゴボウの皮をピーラーで剝く。
で、ゴボウはささがきにしてボウルで水にさらして、ニンジンは輪切りにすると。
「はわあああ……お花みたい!」
「あはは、これは“ねじ梅”という切り方ですね」
後は白菜を三センチ間隔でざく切りにして、ざるに上げておく。
次に、僕はボウルに鶏もものひき肉、玉ねぎのみじん切り、長ネギのみじん切りを入れ、さらにごま油と片栗粉、塩、コショウも。
「で、これを粘りが出るまでこねます」
「あ! それウチがやる!」
「はい、ではお願いしますね」
こよみさんがボウルの中身を丁寧にこねると、粘り気が出てきた。
「うん、これでバッチリです!」
「えへへ、やった!」
こよみさんが小さくガッツポーズする。
はあ、本当にこよみさんは可愛いなあ……。
「あ……もう耕太くんは、またウチに見とれてるやんか……」
「はい……こよみさんが可愛いからです」
「はわ……うん……」
そして、こよみさんは「えへへ……」と嬉しそうにはにかむ。
うん……こよみさん……僕の、僕だけのこよみさん……。
これからも、ずっと大切にしますからね? ……って、料理に集中しないと。
「さあて……それじゃ、次はこよみさんがこねてくれたひき肉を、団子にしましょう」
そう言うと、僕はこよみさんにスプーンを渡す。
「え? ウ、ウチがするん?」
「というか、一緒にしましょう。こうやって……」
「はわ……!」
僕はこよみさんの後ろに回ると、こよみさんの右手に僕の手を添えながら、ボウルのひき肉をスプーンで綺麗に団子状にする。
「で、これを鍋に落として」
肉団子が土鍋の中の熱湯をくぐると、すぐに色が変化する。
「さあ、ボウルの中身全部を団子にしますからね」
「うん……」
すると、こよみさんがポスン、と僕に身体を預けた。
「えへへ」
「あはは」
僕達は微笑み合いながら、ボウルの中身全てを肉団子にして土鍋に投入した。
「後は、ささがきごぼうとニンジンと……」
それと、豆腐、石突を取って十字に切れ目を入れたしいたけ、最後に白菜をこんもりと入れたら、弱火にして蓋をして、と。
「あとは、五分もすれば鶏つみれ鍋の完成です」
「はわあああ……楽しみ!」
こよみさんは、瞳をキラキラさせながら土鍋を見つめている。
「あはは、それじゃ、他の準備も……あ……」
すると、こよみさんは後ろから手を回し、キュ、と僕を抱きしめた。
「耕太くん……生きててくれて、ありがとう……」
「はい……これも、アリスのお陰、ですね……」
僕はそっと自分の胸に手を当てる。
あの時、高田光機に風穴を開けられた僕の胸は、髑髏のヴァルキュリア……アリスの身体である『DS細胞』によって、完全に修復された。
その後も、念のためにと医療機関で検査をしたけど、何の問題も見つからず、僕の心臓をはじめとした重要器官は全て復元され、そして、正常に動いていた。
「……あの時はウチ、ホンマにどないしようかと思た……」
「すいません……」
震えるこよみさんの手に、僕は手をそっと添えた。
「絶対に……絶対に、ウチの前から消えたりせんといて……? 絶対に、死んだりせんといて……?」
「はい……もう、闘いも終わりましたから……」
高田光機の死をもってダークスフィアは崩壊し、国家安全対策部ダークスフィア対策推進室……要は、“勇者戦隊ヴレイファイブ”が解散された。
もちろん、高田光機及び並井十蔵に関連する、国家の中枢にいた者達も芋づる式に検挙され、この国はどうなるのかとも思ったが、ガネホッグさんが所属するグループの人達が秘密裏に処理を行ったため、結局は何の混乱もなく平穏な日常を取り戻した。
それは、僕とこよみさんも。
ただ、こよみさんの場合は経緯も経緯なので、今も国から監視対象とされており、そのせいでこよみさんがキレて国に殴り込みをかけないかとヒヤヒヤしているのは内緒だ。
そうそう、紫村先輩と飯綱先生ももちろん監視対象ではあるんだけど、あの二人は特に気にする様子もなく、先輩は飄々と、飯綱先生は凛としながら、今まで通りの毎日を送っている。
え? 反町一二三?
あの脳味噌については、一応優秀らしいので、ガネホッグさんが傍につきながら日本政府のブレーンみたいな役割を果たしているらしい。
もちろん僕はあの最終決戦での所業を許すはずもないので、暇を見つけてはあの脳味噌にネチネチと精神攻撃を加えている。
本当は物理に訴えたいところだけど、先輩がどうしてもと懇願するので、仕方なくその程度に留めておいてやっている。
だけど……いつか絶対に痛い目に遭わせてやる!
あ、あと青乃さんは、公安組織に配属されることになったって、この前聞いたなあ。
ただ、何でも書類仕事が多すぎて辟易してるとも……お、お疲れ様です……。
そして、相棒のモモも記憶回路が無事だったおかげで、今も元気にアパートの駐輪場に陣取っている。
「……耕太くん?」
「え? あ、すいません……ちょっと考え事を……」
「そう?」
「それより、もうお鍋も完成ですので、ご飯にしましょうか」
「うん!」
そう言うと、僕はお鍋をリビングに運び、鍋敷きの上に乗せる。
すると。
——ピト。
「えへへ、もちろんこれも!」
こよみさんが僕の頬に缶ビールを当てて微笑む。
「はい、もちろんこれも外せませんね」
「うん……はわあ……今思たら懐かしいなあ……雨に打たれて耕太くんが道端でうなだれてて……」
「ええ……それをこよみさんに救ってもらって……」
「ほんで、一緒に缶ビール、何本も飲んだんやもんね」
「あはは、朝になったら隣でこよみさんが寝ていたのにはビックリしましたよ」
「そやったそやった!」
僕達はあの時のことを思い出しながら微笑み合う。
あの時の出逢いがあって、今の僕達がいる。
僕はあの日の奇跡に、そっと感謝した。
「なあなあ耕太くん! ウチ、もうお腹ペコペコや! 早よ食べよ!」
「ええ、そうですね。それじゃ……」
——ピピピ。
「あれ? 電話や……」
「ええ……」
僕は一抹の不安がよぎりつつも、とりあえずスマホの画面を見る。
「ええと……青乃さんです」
こよみさんにそう伝え、僕は通話ボタンをタップすると。
『おう耕太! そこにピンクもいるんだろ!』
「ええ……いますけど……」
僕は不思議そうに眺めるこよみさんをチラリ、と見る。
『だったらよかったぜ! とにかく今テレビをつけて見ろ!』
「へ? テレビ?」
僕は怪訝に思いながらも、テレビの電源をつけると。
『緊急速報です! 東京駅前に、“秘密結社リベリオン=クロイツ”と名乗るテロリスト達……いや、“怪人”達が現れました! 都民は速やかに避難……』
——プツン。
「さ、さあて、ご飯にしますかねー……」
「そ、そやねー……」
『おおーい!? 待て待て!? とにかく、また怪人が出現したんだよ! だから、“勇者戦隊ヴレイファイブ”が再結成されたんだよ!』
えー……それこそ日本政府で何とかしてくださいよ……。
それより。
「その……何で青乃さんが連絡してきたんですか?」
『決まってるだろ! 俺が“国家安全対策部リベリオン=クロイツ対策推進室の室長……つまり、ヴレイファイブの司令に抜擢されたんだよ!』
「「はあああああああ!?」」
青乃さんの言葉に、僕とこよみさんは驚きの声を上げる。
「え? ええ? なんでそんなの引き受けたんですか!」
『しょーがねーだろ! 俺も中間管理職なんだよ! 察しろよ!』
「そんなこと言われても!?」
『とにかく! 急いで現場に急行してくれ! じゃあな!』
「え!? ちょ!? 青乃さん!?」
——ツー、ツー。
青乃さんに通話を切られてしまった……。
「あああああ! もおおおお! 何やねん! やっとダークスフィアのアホ共がおらんようになったと思たのに、またアホが湧いてきよったやないか!」
こよみさんが頭を抱えて叫ぶ。
その時。
——ドンドン
「二人とも! 部屋にいるんでしょ! 早く行くわよ!」
あああああ! やっぱり先輩が来たあああああ!
「やかましいわ! いっつもいっつも人ん家のドア叩きおって! 近所迷惑や!」
こよみさんが玄関越しに先輩に向かって叫ぶ。
「そんなことどうでもいいから! ホラ! 行くわよ!」
あ、あははー……結局、僕達は晩ご飯を邪魔されるんですね……。
「はあ……しゃあない、サッサと倒して、早いとこ帰ってくるしかないかー……」
「ですね……」
僕達はガックリ、とうなだれ、そして……。
「じゃ、行きましょうか」
僕はこよみさんの手を取る。
「うん……ほんで、早よ家に帰って、晩ご飯食べよ?」
「ええ」
「あー! 今日お鍋でしょ! 帰ったら私も食べるからね!」
「やかましいわ!」
——そして、またあの騒がしい日常が始まりを告げた。
◇
「ゲヒャヒャヒャヒャ! 我等リベリオン=クロイツが、この日本を牛耳るのだ!」
怪人と戦闘員が、東京駅前で破壊の限りを尽くす。
その時。
「やかましいわ! オマエ等のせいで、晩ご飯おあずけになってしもたやないか!」
「そうよそうよ! 私だって、上代くんのお鍋を食べたいのよ!」
「何っ!? 上代くんのお鍋だと!? わ、私も食べるぞ!」
「あ、あはは……」
「だ、誰だ!」
突然聞こえた女の子達のかしましい叫び声に、怪人達は思わず振り返る。
そこには。
「ウチ達はヴレイファイブ! “勇者戦隊ヴレイファイブ”や!」
お読みいただき、ありがとうございました!
おかげさまをもちまして、「戦隊ヒロインのこよみさんは、いつもごはんを邪魔される!」が、無事最終回を迎えることができました!
これもひとえに、この作品を、耕太とこよみさんの二人を応援、見守っていただいた、多くの皆様のおかげです!
二人の物語の本編はひとまず終了となります!
ですが!
明日、またまたGOMさんの「僕は異世界で美幼女姫様と刑事をする。〜異世界における科学捜査の手法について〜」とコラボした番外編を一挙四話投稿予定です!
今回は、こよみさんと耕太の二人が異世界へ!
リーヤちゃん達とこよみさん達の活躍をご期待ください!
少しでも面白いと思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!
また、別の作品でお会いできることを楽しみにしています!




