最終決戦!怪神デミウルゴス!⑬
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「ア、アリス——————!?」
高田光機により下半身を粉々にされたアリスは、その翼も羽ばたきを止め、力なく墜落していく。
「あっ! 耕太くん!」
僕は堪らずアリスの元へと駆ける。
そして、落下地点に到達すると、僕は空へ向かって両腕を広げた。
アリスを……アリスを受け止めるために。
だけど。
「ああっ!?」
『クフフ……そのままだと怪我してしまうよ、上代くん?』
あろうことか、高田光機は落下するアリスに、その右掌からピンポン球程度の大きさの光の球体を射出し、アリスの上半身を弄り続ける。
当然、アリスのその身体は削れ、抉られ、砕け……。
その手に受け止めた時には、アリスは半分に欠けた髑髏と、僅かに首と左肩を残すのみとなっていた。
「アリス……!」
僕は思わずアリスを抱きしめる。
すると。
——カタ、カタ……。
アリスは一生懸命にその顎を動かす。
何かを訴えかけるように、何かを僕に伝えたいかのように。
「アリス……何だい……?」
僕は流れる涙をそのままに、無理やり笑顔を作ってアリスに語りかける。
アリスは、カタ、カタ、と顎を五回動かした後、その動きを止めた。
「アリ……ス……!」
僕はアリスをもう一度強く抱きしめる。
「耕太、くん……」
「あ……こよみさん……」
いつの間にか傍に来たこよみさんを見ると、こよみさんも、ただジッと僕とアリスを見つめていた。
『クフフ……それで、そろそろこの茶番も終わりにしないかい?』
高田光機がおどけた表情でそんなことを言った。
「茶番、だって……?」
『ああ、そうさ。だって、君達が全員この場で死んで、反町一二三も消滅させて、全ての人間は僕の家畜となる。それは既定路線でしかないのに、君達ときたらそんなに必死になってさあ』
高田光機は何が可笑しいのか、笑いを堪えるため口元を手で押さえる。
『クフフ、そういう訳だからさ、ホラ、僕も面倒なのは嫌なんだよ。だから……サッサと死んでもらえるかな?』
「「っ!?」」
そう言うと、途端に周りの空気が変わった。
『クフフ……それじゃ、君達は丁寧に壊してあげるよ。一枚一枚、トンボの翅を毟る、無邪気な幼子のように』
高田光機がビルの床に舞い降りると、僕達に向かってゆっくりと歩を進める。
そして、高田光機から発せられる異様な威圧感。
第一形態のドラゴンからも、第二形態のペイルライダーからも、そして、第三形態のトランペッターからも感じなかった、まるで“死”というものが背後から忍び寄るかのような、そんな不気味なもの。
それが僕の背中をまとわりつきながら、ゆっくりと心臓を鷲づかみするかのような感覚に襲われる。
息が……苦しい……。
気がつけば、僕は右手で胸をギュ、と握りしめ、冷汗が滝のように噴き出ていた。
『クフフ……』
高田光機が近付きながら顔を歪ませ、嗤い掛ける。
その顔を見た時の僕の心を占めていたのは……ただ、“恐怖”だった。
「あ……ああ……」
僕はペタン、と尻餅をつくと、じりじりと後ずさりをした。
だって……だって、怖いんだ……!
僕は、この高田光機が……“死”が、怖いんだよ……!
すると。
「耕太くん……大丈夫やで! ウチが……ウチが、絶対に耕太くんを護ってみせるさかい!」
こよみさんは高田光機と僕の間に“アイギスシールド”を構えて仁王立ちしながら、僕のほうへと振り向いて、ニコリ、と笑った。
だけど……僕は見てしまった。
こよみさんの脚が、震えているのを。
……こよみさんは、僕を護って死ぬ気だ。
そのことを理解した瞬間——僕は、自分の頬を思いきり殴りつけた。
口の中に鉄の味が広がる。
僕は……僕は、何を考えていたんだ!
こよみさんだって、こんなに恐怖を感じながらも、僕なんかを護ろうとしてその勇気を奮い立たせているのに、僕は何をしようとした!
僕は……!
『さあ……それじゃあ二人仲良く壊してあげるね?』
「っ……!」
高田光機がゆっくりとこよみさんの“アイギスシールド”へと手を伸ばす。
くそっ……! 何か……何かないのか!
高田光機を倒すための“何か”……!
僕はカバンを逆さに向け、中のものを全て床にぶちまけるけど……出てきたのは、タブレットと“ハンニバル”の予備のマガジン、おにぎりの残り、財布、部屋の鍵……。
ダメだ! これじゃあ何にも……!
次に僕は自分のポケットをまさぐる。
ポケットには、“ハンニバル”と……あれ?
これは……。
——それは、一枚のコインだった。
『そして……そのコインは、いざという時が来たら、タブレットの横にあるスロットへ差し込むといい』
『すまん……まだ言えんのだ……だが、それは必ず君達を救う切り札になるはずだ』
あ……。
僕はすぐさまタブレットを拾い、スロットの位置を確認する。
ここに、コインを……。
「く、来るな!」
『クフフ……さしもの“ヴレイヴブロッサム”も、この僕は怖いかい?』
「う、うっさいわ!」
躊躇ってる暇はない!
もう……もう僕達には、これしか残されてないんだ……!
僕はコインをタブレットのスロットに合わせると、勢いよく差し込んだ。
すると、タブレットの画面のバックライトが点灯し、そして。
<ヴァルキュリア、“モード=アテナイ”、起動>
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次話は明日の夜更新予定です!
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