最終決戦!怪神デミウルゴス!⑨
ご覧いただき、ありがとうございます!
「……“最終形態”に移行」
デミウルゴスが全身を弛緩させてそう呟くと、その身体が頭部を中心として巻尺のように巻かれていく。
今までと違う!?
「こよみさん!」
「ああああああああ!」
僕が叫ぶと同時に、こよみさんが“ブリューナク”をデミウルゴスに突き刺そうと……何っ!?
デミウルゴスは、その身体を丸めたまま、上空へと昇っていく。
「アカン! これじゃどうやっても届かへん!」
飛び上がったものの、それをさらに上回るスピードで上昇を続けるデミウルゴスに、こよみさんは諦めてビルの上に降りる。
そして、デミウルゴスは肉眼でとらえることができないほど、遥か上空へと飛んで行ってしまった。
「耕太くん! ど、どないする!?」
「……とにかく、臨戦態勢のままここで待ちましょう。少なくとも、デミウルゴスは僕達を倒しに、必ずここに戻って来るはずですから……」
「う、うん……」
僕の言葉を受け、こよみさんは“アイギスシールド”を構えながら周囲を警戒する。
「青乃さんは、先輩と飯綱先生を頼みます」
「そ、そりゃいいけど……耕太、オマエはどうするんだ?」
「僕は……こよみさんと、デミウルゴスを迎え撃ちます」
僕はポケットから、反町一二三からもらった拳銃“ハンニバル”を抜く。
「っ!? 耕太くん、何言うてんの!? そんなんアカン!」
……こよみさんに、聞かれちゃったか。
「こよみさん……もちろん、こんなオモチャみたいなものでデミウルゴスとまともに闘えるとは思っていません……ですが、僕は皆さんの指揮官です。今ある戦力を活かして、何としてでもあの男を倒してみせる……!」
「耕太くん! せやけど!」
「大丈夫ですよ」
不安そうに見つめるこよみさんに、僕はニコリ、と微笑んでそうハッキリと告げる。
「そもそもデミウルゴス……いや、高田光機という男は、こよみさんや他の方に意識を集中していますから、僕の存在はアイツの視界に入っていないでしょうし」
「…………………………」
「だからこそ」
僕はこよみさんを見据え、口元を引き締めて。
「僕は、あの男に勝つ。アイツの信じた夢や理想……その全てを、僕が全部否定してみせる」
「耕太くん……」
「だから……こよみさん、僕に力を貸してください。そして、一緒に高田光機を倒しましょう!」
「もう……ホンマに耕太くんは頑固で意地っ張りでアホや……ほんで、それを受け入れてまう、このウチもアホや……」
そう言うと、こよみさんは視線を床に落とした。
「本当に、駄目な彼氏ですいません……」
「ホンマやで……これから一生、耕太くんには苦労かけられそうや……」
「プ」
「クク……」
「「あははははははは!」」
僕とこよみさんは、お互い向き合いながら大声で笑う。
うん……やっぱりこよみさんは、最高の女性だ……。
「さあ! ホナ、ちゃっちゃと倒したるさかい、サッサと降りてこんかい!」
「そうだそうだ! 僕達が怖いのか!」
「ホンマに怖いんとちゃう? 今頃、空の上でちびってそうや」
「言えてる!」
僕達は、思い思いに高田光機の悪口を言った。
こんな会話、あの男が聞いているとは思わないけど、それでも、僕はこうやってこよみさんと、心を通わせる。
高田光機を倒すために。
こよみさんと、幸せな未来を築くために。
だから。
「「高田光機!」」
「僕が!」
「ウチが!」
「「二人が、オマエを倒す!」」
僕とこよみさんは、空に向かってその拳を突き上げた。
すると。
『ク、クク、クハハハハハハハハ! なんだいそれは! 漫才でもしてるのかい!』
遥か空の彼方から、高田光機の声がこだました……いや、これは直接僕の頭の中に語り掛けてる!?
つまり……反町一二三と、同じ……。
「へえー! 僕達の会話、聞いてたんだ!」
僕は少しの動揺も悟られないよう、あえて少し横柄な態度を見せる。
『クハハハハ! だって、そんな夢みたいなこと言ってるんだからねえ! いくら君が優秀だからといって、そして“ヴレイヴブロッサム”が強いからといって、結局はこの私……いや、この僕に及ばないのに!』
「そんなオマエは、反町一二三に及ばないけどね」
『クハハハ…………………………は?』
はは、扱いやすいなあ。
反町一二三の名前を出されただけで、露骨に反応を示すんだから。
「まあいいや。それより、早く降りてきなよ。僕達が、反町一二三なんかに劣るオマエなんかより上だってこと、教えてやるから」
『キサマアアアアアアア!』
本当に、最終形態になっても煽り耐性ゼロじゃないか。
「なあんだ、ちゃんと自分で格下だって認めてるんじゃないか。だから、いちいち僕の言葉なんかに反応するんだよ」
『グ、グギギ……!』
あーあー、歯ぎしりなんかしちゃって。
『いいだろう! この僕の“最終形態”、とくと拝ませてやるううううう!』
僕達の頭の中に直接そう叫ぶと。
——キイイイイイイイイイイインンン!
「こ、これは……! こよみさん! みなさん! 衝撃波が来ます! 全員、先輩と飯綱先生の場所に集合! こよみさんは上空に向けて“アイギスシールド”を構えてください!」
「う、うん!」
僕の指示を受け、全員先輩達の元に集まると、こよみさんが“アイギスシールド”を構えた。
そして。
——ゴオオオオオオオオ!
「グギギ……な、何やのこれ……!」
「……音速を超えた時に生まれる、衝撃波です」
「ええ!?」
あの音は、高田光機が音を切り裂いた音。
そして、遅れてその衝撃波が来たということは。
「高田光機いいいいい!」
僕はその名を声の限り叫ぶ。
“アイギスシールド”の向こう側にいる、倒すべき相手に向けて。
お読みいただき、ありがとうございました!
次話は明日の夜更新予定です!
少しでも面白い! 続きが気になる! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!




