最終決戦!怪神デミウルゴス!⑥
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「クハハハハハハ! さあ、終末を始めようか!」
こよみさんの“ブリューナク”を皮切りに、青乃さんの“タスラム”、ガネホッグさんの“インドラニードル”で攻撃されてボロボロになった膜の球体の隙間から、デミウルゴスの声がこだまする。
「な、何が終末や! オマエの断末魔の間違いとちゃうか!」
そんなデミウルゴスの言葉を認めないとばかりに、こよみさんが大声で叫んだ。
「クハハ! なら、その身で知るがいい! 結局は、無駄な努力だったということを!」
すると、先程と同じように膜の球体がペリペリ、と剥がれると、中から……また別の“ナニカ”に変化したデミウルゴスが現れた。
その姿は、巨大な骸骨が黒の法衣をまとっており、その右手には……ラッパ?
「な、何よ! さっきより弱くなっちゃったんじゃない!」
確かに先輩の言葉通り、第二形態のような武器も持たず、第一形態のような迫力すらないその姿を見れば、明らかに弱体化した、と言えるだろう。
……見た目通りだったら。
「先輩! 油断しないでください! 第三形態と名乗った以上、先程よりも確実にパワーアップしているはずです!」
「そ、そうだけど……」
だけど、やはり先輩は信じられないのか、デミウルゴスを訝し気に見つめる。
「クハハ……やはり上代くんは指揮官として優秀だね。しっかり全員をまとめ上げている」
「そりゃどーも」
「なら、私もそれに敬意を払い、最初から全力で君達に挑もうじゃないか。この、“怪人デミウルゴス=トランペッター”が」
そう言うと、デミウルゴスがその手に持つラッパを構え、口をつける。
「っ! 来ます! 全員こよみさんの後ろへ!」
「「「「「了解!」」」」」
こよみさんがデミウルゴスを正面に見据えながら“アイギスシールド”を構えると、みんながその後ろに身を潜める。
さあ……どんな攻撃を……?
すると、デミウルゴスがすう、と息を大きく数。
そして。
——ブオオオオオオオオオオオオ!
「う、うわ!?」
「何やこれ!?」
突然、そのラッパから大音量が放たれ、僕達の耳を襲う。
こ、この音……耳が……痛い……!
「………………………!?」
こよみさんがこちらを見て驚きの声を上げ…………………………え?
「こ、こよみさん……?」
どうして……?
こよみさんの声が……聞こえない……。
「「「「………………………!?」」」」
先輩や飯綱先生、青乃さん達も何か言っているけど……だけど、僕には何も……。
僕はおそるおそる耳を押さえる。
すると、掌にぬめっとした感触があった。
そっと掌を見ると……なぜか血が付着していた。
……鼓膜が、破れたのか。
「…………………………!」
デミウルゴスがその下顎をカタカタと開閉している。
聞こえはしないけど、多分、嗤っているんだろう。
だけど。
「皆さん! 耳は聞こえませんが、指示は出せます! 大丈夫です!」
僕はそう叫ぶと、こよみさん以外の全員が強く頷いてくれた。
こよみさんは……うん、そんなに心配しないでください。
この闘いが終わったら、ちゃんと治療しますから、ね?
僕はこよみさんに軽くウインクした後、まずは状況確認のために周囲を見る。
すると、やはりこよみさんがいた位置を先頭にして、放射状にビルが粉末状になっていた。
となると……。
「皆さん! ヤツのラッパによる攻撃は、音波振動によって攻撃するもののようです! なので、ヤツがラッパを構えたらなんとしても阻止するか、間に合わないなら“アイギスシールド”の陰に!」
僕がそう言うと、みんなが一斉に頷く。
そして……デミウルゴス=トランペッターとの戦闘が始まる。
「…………………………!」
こよみさんが“ブリューナク”を構え、デミウルゴスに突撃すると、それに合わせるようにラッパを向ける。
「先輩! “トゥエルブ・ウィッチ”でラッパを阻止してください! ヤツの口とラッパの間にねじ込むように!」
先輩は頷くと、デミウルゴスのラッパに向け、“トゥエルブ・ウィッチ”で一斉に襲い掛かった。
当然、今のデミウルゴスには通用するはずもなく、なす術もなく弾かれていく。
だけど……そのうちの一枚が、見事にデミウルゴスの口とラッパのとの間に潜り込み、その演奏を防いだ。
「…………………………!」
その隙に、こよみさんはデミウルゴスに肉薄すると、一気に攻撃を仕掛ける。
「…………………………!」
「…………………………!」
デミウルゴスもさすがに“ブリューナク”とこよみさんは脅威なのか、ラッパの演奏を諦め、こよみさんと一進一退の攻防を繰り広げる。
その時。
「っ!? 飯綱先生!?」
「……………………」
飯綱先生は力強く頷くと、僕の耳を覗き込み、そして……これは!?
「……うだ?」
「え……?」
「聞こえるか?」
どうして!? 飯綱先生の声が聞こえる!?
「飯綱先生!? 一体何を!?」
「『DS細胞』で君の鼓膜を“結合”したんだ……本来はこうやって医療用を目的として研究されたものだからな」
っ! 確かに『DS細胞』なら!
「ありがとうございます! これでよりサポートがしやすくなります!」
「うむ!」
そして、僕は再びこよみさんとデミウルゴスへと見やる。
「やああああああああ!」
「グオオオアアアアア!」
こよみさんが“ブリューナク”を振り下ろすと、デミウルゴスがそれをいなし、逆に空いている左手による貫手で喉元を狙う。
だけど、こよみさんはそれを身体を捻って躱すと、“アイギスシールド”でデミウルゴスの側頭部を横殴りにする。
「ヌウッ!?」
「もう一丁!」
こよみさんは“アイギスシールド”を振った反動を利用し、バックスピンで“ブリューナク”の柄を同じくデミウルゴスのこめかみに叩きつけた。
「グウ……!」
「トドメや!」
そして、“ブリューナク”を振りかぶって、その切っ先を向けると、一息で突き下ろす。
「カアッ!」
っ!? やっぱり第三形態でもあの光線が放てるのかあっ!
「こよみさん!」
「させるかああああああ!」
僕が叫ぶのと同時に、こよみさんも叫び声をあげながらデミウルゴスのその口の中に“ブリューナク”を突き入れた。
「カ……カカッ……!?」
「ああああああああああ!」
そして。
——デミウルゴスの頭が、その胴体と分離した。
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次話は明日の夜更新予定です!
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