目的
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「……あの怪人は一体……」
僕はカエルの怪人が最後にいた場所を睨みつける。
「上代くん、あの怪人のことなんだけど……」
「何か知ってるんですか!?」
「え、ええ……私達がグリフォニアを倒した後、突然その場に現れたの。そして、グリフォニアが『後は頼んだ』と……」
グリフォニア……いや、高田光機は、アリスの回収が目的だったということなのか?
つまり。
「……アリスは、最初からこよみさんに倒される前提だった」
「「「っ!?」」」
「上代くん!? それはどういうことだ!?」
僕の言葉にみんなが驚きの表情を見せ、飯綱先生が詰め寄る。
「いえ、これは僕の想像でしかないですし、本当は次善の策としてだった可能性もありますけど……だだ」
「ただ?」
「グリフォニアの『後は頼んだ』という言葉、そして、その後のカエルの怪人によるアリスの回収。これは、グリフォニアがアリスの回収をカエルの怪人に指示し、怪人はそれを実行したということなんです」
「ご、ごめん耕太くん、それが何で初めから負ける前提っちゅうことになるんや?」
「ええ……まだ結果も出ていないのに、回収要員である怪人がいて、グリフォニアがその回収の指示をしているということなんです。それって、最初から倒されるって分かっているからですよね?」
「あ! そうか!」
そう……こよみさんに勝つつもりなら、グリフォニアはそんな指示を出さないし、カエルの怪人もここにはいないはず。
仮に万が一敗れた場合としての怪人の配置だとしても、グリフォニアが頼む必要はない。
だからこそ。
「……高田光機の考えが読めない。あの男は、一体何を企んでいるんだ……?」
アリスを連れ去られて混乱していた頭は、今では急速に冷めている。
考えろ……考えるだ……!
そもそも、高田光機はどうしてこよみさんと一対一で闘わせたんだ?
最初から負ける前提なら、別に一対一にこだわる必要はないし、かといって勝つつもりなら、グリフォニアと一緒に闘えばいい。
初めは、高田の最高傑作であるアリスがこよみさんに勝利することで、反町一二三を超えるためという自己満足のためのものだと思っていたんだけど……。
「……せやけど、アリスも初めからウチに負けるために、あんな何回も改造させられて、最後はこうやって死んだ後も連れ去られてしもて……こんなん……こんなん……!」
こよみさんが呟きながら拳を強く握りしめ、口元から血が流れるほど唇を噛んだ。
「こよみさん……」
「耕太くん……アリスはあんな奴やったけど、それでも、ウチと同じ人を好きになったんや……せめて最後くらい、静かに寝さしたるべきやんか……そやのに……」
「……そう、ですね……こよみさんの言う通り、何度も改造…………改造!?」
まてよ!?
そういえばアリスは、何度も改造手術を受けているんだったぞ!
「せ、先輩! 確か『DS細胞』……いや、『DS-n細胞』は、進化するんでしたよね! そして、それは精神力によって左右されると!」
「え、ええ、そうだけど……」
僕の勢いに、先輩が少したじろぐ。
「か、上代くん、それがどうしたのだ?」
「……アリスは今日こよみさんに倒されるまで、都合四回の改造手術を受けています」
「うむ」
「それって、要は『DS-n細胞』が四回進化しているということです。つまり……」
「っ! そうか! 高田光機は、アリスの体内にある『DS-n細胞』を進化させることが目的だったのか!」
飯綱先生の叫びに、僕は無言で頷く。
高田光機の目的は、進化した『DS-n細胞』を入手することで間違いないだろう。
「ちょ、ちょっと待ってよ上代くん! そんなことしたって、肝心の器であるアリスが死ぬ前提で進化させてどうするのよ!?」
「違う……違うんだ、紫村……」
飯綱先生が苦しそうな表情でかぶりを振った。
「例えば、アリスの体内にある進化した『DS-n細胞』を抜き取り、それを別の被験体に結合したとしたら、どうなると思う……?」
「そ、そんなの、『DS-n細胞』は進化したままだし、結合したってそれは……そういうこと!?」
そう……次にその進化した『DS-n細胞』を結合する被験体は、一回ないし二回の改造手術で、リスクを負うことなくその能力を受け継ぐということ……。
「じゃあその被験体って!?」
「……恐らく、高田光機本人、でしょうね……」
“怪人”という人間の上に立つ新たな人種を生み出し、高田光機自身はそれを超える “怪人”として頂点に君臨する。
これこそが、グリフォニアが言った高田光機が“神”となるということについての全容だろう……。
「さ、最悪……」
「ええ……ですので急ぎましょう! こんなことをしている間にも、高田光機はその『DS-n細胞』の結合手術を行っているはずです!」
「そ、そやね! 結合手術終わらせる前に、ウチ達が高田光機を倒さへんと……!」
「うむ! 万が一手が付けられない程に強化されてしまってはまずい!」
「だだ、だったら行くしかねーじゃねーか!」
青乃さんの言葉が合図となって、僕達は部屋を飛び出し、司令本部のあるフロアに向かって全速力で走る。
高田光機……オマエの思い通りにはさせてたまるか!
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次話は明日の夜更新予定です!
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