対決!怪人アリス=ヒュブリス=ルシフェル!③
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■桃原こよみ視点
耕太くんに背中を押されて飛び出したウチは、一直線に東京の上空を突き進む。
黒い球体を穿つために。
その向こうにいる、怪人アリス=ヒュブリス=ルシフェルを穿つために。
「ああああああああああ!」
黒い球体は周囲のものを吸い込みながら、ゆっくりとウチへと向かってくる。
そして、いよいよ黒い球体と激突する、その時。
「“ブリューナク”!」
ウチは右手に持つ“ブリューナク”を黒い球体に突き刺した。
すると。
「ぐ、ぐううううううっ!」
ウチの身体が丸ごと黒い球体に吸い込まれていく。
そして、完全に中に吸い込まれたウチの視界に映る黒い球体の中は、ただ真っ黒な世界やった。
「ま、負けるかあああああ! ウチは……ウチはこの闘いに勝って、耕太くんと添い遂げるんやあああああ!」
“ブリューナク”と“アイギスシールド”を握る手に力を籠める。
「もう一丁やあああああああ! “アイギスシールド”っ!」
ウチはさらに加速するため、“アイギスシールド”を手放すと、それに乗って思いきり踏み込んだ。
「やああああああああああ!」
勢いを増したウチはさらに突き進むと、突然、“ブリューナク”が黒い球体の“ナニカ”に触れた感触があった。
「ここが……ここがドンケツかあっ!」
ウチは渾身の力を籠め、“ブリューナク”をその“ナニカ”に勢いよく突き刺した。
——パアアアアアアン!
黒い球体が破裂する音が耳に響き、それとともに黒い球体に吸い込まれる前と同じ、早朝の東京の空がウチの視界に広がる。
そして、ウチの眼前には……アリスがいた。
「っ!? ピンクううううウウウウ!」
「これで終まいやっ! くらえええええええ!」
ウチの勢いはそのままに、空で羽ばたくアリスに向かって突き進む。
アリスも、ウチを迎え撃つためにその両手を前にかざした。
「“明けの明……「させるかああああああ!」」
アリスが光の球体を形成する途中、一足早くアリスへと到達したウチは、その球体を“ブリューナク”で突き破り、そして。
「っ!? ガハア……ッ!?」
「届いた!」
“ブリューナク”はアリスの両手を弾き飛ばし、身体の中心に深々と突き刺さった。
「あ……あ……ゴフッ!」
アリスが口から血を吐き出し、その翼の動きをゆっくりと止める…………………………って、このままやとウチも一緒に真っ逆さまやんか!?
「ど、どないしよ……!?」
ウチは何とか戻れへんかと回りを見渡すけど……。
「ア、アカン……そもそも空にそんなモンあるわけないやんかあああああ!」
ウチは思わず頭を抱える。
すると。
「ア、アハハ……せめ、て……オマエだ、け、でも……道連れ、に……!」
「ウチはイヤや! ウチは生きて帰って、耕太くんと幸せになるんや! 絶対に……絶対に諦め「……みさーん!」……え? この声……こ、耕太くん!?」
突然、ウチの耳に聞こえてきたのは、間違いなく耕太くんの声。
聞き慣れた、ウチをいつも幸せにしてくれる、耕太くんの声。
「こ、耕太く——————ん!」
ウチも力一杯叫ぶ。
耕太くんに聞こえるように。
耕太くんに届くように。
「ア、アハハ……ム、ダ、なの……に……」
「やかましいわ!」
死にかけの癖に、しょうもない悪態吐きよって!
その時。
——ヒュウウウウウウウウウウンンン。
ウチの顔の横を何かが通り過ぎ……って、これは……!
それは、バイオレットが放った一本のヴレイウィップやった。
そっか……バイオレットにも感謝、やな。
ウチはヴレイウィップをつかみ、そして……。
「な……ん、の……ま……ね……?」
「……最後くらい、耕太くんとほんのチョットだけ、話させたるわ……」
ウチは空いている手でアリスの身体をつかむと、ヴレイウィップが高速で引き戻された。
「はわわわわわわ!?」
その勢いに、ウチは思わず握った手を離しそうになる……って、絶対に離さへんからな!
ウチは必死に握りながら、ビルへと視線を向けると……そこには、心配そうに見つめる耕太くんの姿があった。
「耕太く——————ん!」
「こよみさ——————ん!」
ああ……耕太くんの声や……!
そして。
「はわわわわわわ!?」
「きゃあああああ!?」
勢い余ってウチはバイオレットとぶつかり、二人揃って部屋の奥まで吹き飛んだ。
「ア……アイタタタ……」
落ちた時にどうもお尻からぶつかったみたいで、ウチは思わずそのお尻をさすった。
「こよみさん……」
いつの間にか涙をぽろぽろと零す耕太くんが、ウチの傍で身体を震わせていた。
「耕太くん……戻ってきたよ……」
すると。
「こよみさん……こよみさん……!」
耕太くんがウチの身体を強く抱きしめる。
ああ……耕太くんの温もりや……。
ウチは、耕太くんの中に戻ってきたんやなあ……。
すぐに変身を解き、ウチも思いっきり耕太くんに抱きつき、そして。
「耕太くん……ちゅ」
ウチは耕太くんに軽くキスをした。
「こよみさん……おかえりなさい」
「うん……耕太くん、ただいま!」
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次話は明日の夜更新予定です!
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