対決!怪人アリス=ヒュブリス=ルシフェル!①
ご覧いただき、ありがとうございます!
「でやあああああ!」
「フフン」
こよみさんが“ブリューナク”でアリスの足元を薙ぎ払うが、アリスは事もなげに上空へと飛んで躱す。
先輩達とグリフォニアが部屋を出ていってから、こんな一進一退の……いや、アリスが若干押しているか……?
……やっぱり、一瞬の推進力、突破力はこよみさんに分があるとはいえ、近接攻撃しかないこよみさんにとって、飛行することができ、かつ、光の球体による遠距離攻撃ができるアリスが相手では少し分が悪い。
「このお! さっきからチョコマカと!」
「アハハ! 悔しかったらオマエも空を飛んでみなさいよ!」
「やかましいわ!」
こよみさんが少し屈んでから飛び上がると、アリスはヒラリ、とそれを躱す。
だけど。
「ソコや!」
「っ!?」
こよみさんは天井にぶつかりそうになったところで水泳のクイックターンの要領で身体をクルリ、と反転させると、そのままの勢いでアリスに迫る。
「生意気っ!」
アリスは三対の翼を羽ばたかせ、こよみさんの突撃を咄嗟に躱す。
そして。
「くらえっ! “ライトボール”!」
アリスは右手をかざし、光の球体をこよみさん目がけて射出する。
「舐めるな!」
こよみさんは光の球体が到達する前に、床を蹴って壁へと飛び退いた。
光の球体は誰もいない床に直撃し、凄まじい音とともに部屋の中を粉塵が舞った。
「ゲホッ! ゲホッ! 俺達も部屋にいるんだから考えろっての!」
「ゴホッ! あ、あはは……」
青乃さんがアリスに向かって吐いた悪態に、僕は思わず苦笑いする。
そもそもアリスは敵なんだから、そんなこと考えないと思うんだけどなあ……。
「キイイ! オマエ! ちょっとはじっとしてなさいよ!」
「アホか! どこの世界に敵の攻撃待つ奴がおるねん!」
二人の会話だけ聞いてるとほのぼのとした感じなんだけど、既に二人の攻撃で部屋の中はメチャクチャ になっていて、実際はすごく殺伐としている。
「ああもう! メンドクサイ!」
そう叫ぶと、アリスが今度は壁に向かって両手をかざした。
すると、アリスの両手の前に、光の球体……いや、なんだアレはっ!?
球体はみるみる大きくなっていき、その大きさは直径一メートルを超えた。
「“明けの明星”」
そう呟くと、大きな光の球体が壁へと一直線に向かう。
そして。
——ドオオオオオオオオオオオオンンン!!!
耳を劈くような爆音と光が周囲を覆い、僕達の視覚と聴覚を奪った。
「うわああああああ!?」
「っ! 耕太あっ!」
その直後に来た爆風で吹き飛ばされた僕だったけど、青乃さんが僕を庇うように回り込み、僕を受け止めた後に後ろの壁に激突した。
「イチチ……」
「あ、青乃さん……すいません、大丈夫ですか……?」
「お、おう……何とかな……」
瓦礫に埋まりながら、青乃さんが右手でサムズアップした。
「そ、そうだ! こよみさんは!?」
僕は慌てて身体を起こし、辺りの状況を確認する。
すると、こよみさんは“アイギスシールド”を構え、綺麗に開いた壁の穴を背に立つアリスと対峙していた。
よかった……無事だった。
「オマエ! いきなりなにしてんねん!」
「アハハハハ! 分からない? まあ、アンタの頭じゃ分からないかあ! これはねえ……」
そう言うと、アリスはぽっかりと開いた壁へ向かって走り出した。
「チョ!? どこに行くねん!?」
こよみさんが慌ててアリスを追いかける。
だけどこれって……まさか!?
「アハハハハ!」
アリスは巨大な壁の穴から外へと飛び出すと、その翼を羽ばたかせた。
そして、登り始めた朝日を背にこよみさんを正面に見据えると、不敵に微笑んだ。
「ウフフ……ホラ、手も足も出ない」
「あーもう! さっさと降りてきて勝負せんかい!」
こよみさんがアリスに向かって“ブリューナク”と“アイギスシールド”を振り回して抗議するけど、当のアリスは素知らぬ顔で微笑んだままだ。
「そして、私はこんなこともできるの。“明けの明星”」
アリスは両手をかざし、壁に穴を開けた先程の光の球体をこよみさん目がけて射出した。
「っ! 耕太くん、伏せて! “アイギスシールド”!」
こよみさんが“アイギスシールド”を前面に展開し、光の球体を受け止める。
——ドオオオオオオオオオオオオンンン!!!
先程と同じように閃光と爆音が周囲を埋め尽くすが、今度は“アイギスシールド”によってこよみさんの後ろは何一つ被害がなかった。
「チイッ! 厄介な盾ね!」
「フフン、何や、そんなモンかいな!」
悔しそうに舌打ちするアリスに対し、こよみさんが煽るように鼻を鳴らす。
だけど。
「ハッ! その台詞は、私に攻撃を当ててから言ってみなさいよ!」
「何やて!」
逆にアリスに煽られ返されたこよみさんが激高し、外へと飛び出そうとする。
「見とれ! 今……「こ、こよみさん!? 落ち着いてください!」わっ!? 耕太くん!?」
慌てて僕はこよみさんの身体にしがみついて止めた。
あ、危ないところだった……。
「こよみさん! 無茶しないでください! 今飛び出したら、真っ逆さまに下に落ちるだけですよ!」
「ゴ、ゴメン……」
僕に叱られ、こよみさんがシュン、となってしまった。
つ、強く言い過ぎたかな……?
「あああああ! もう! もう! 何なのよ! 何で私がそんなの見せられなきゃいけないのよ!」
アリスが怒り狂いながら、自分の髪の毛を掻きむしる。
「何でって……こよみさんは僕の婚約者だから、危なかったら止めるのは当たり前だと思うんだけど……?」
「ハアッ!?」
僕の言葉に、アリスが空中で固まった。
お読みいただき、ありがとうございました!
次話は明日の夜更新予定です!
少しでも面白い! 続きが気になる! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!




