対決!怪人グリフォニア!②
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■紫村由宇視点
「さあ! 高田様の崇高な理想を邪魔するオマエ達を、この私の手で消し炭にして差し上げます!」
全身を炎でまとい、グリフォニアが高らかに吠えた。
「……なんでアンタが高田光機という男にそこまでご執心なのか知らないけど、私達にも負けられない理由があるのよ!」
そう、私にだって闘う理由がある。
お父さんに代わって、この私が全てを終わらせないといけないんだ。
そして……そして、私がお父さんと一緒に、私の大切な仲間達を幸せにするんだ!
「フフフ……」
「……何が可笑しいの?」
「ハハハハハ! これが笑わずにいられますか! オマエ達の理由など、高田様の理想の前にはゴミに等しい……いや、ゴミ以下です!」
嘲笑うグリフォニアに、私の全身がかあ、と熱くなり、私は思わず飛び出そうとする。
だけど。
「待て、紫村」
飯綱先生が私の肩をつかんでそれを阻んだ。
「っ! だけどあの女が!」
「まあ落ち着け。紫村の理由や私の理由など、高田光機という男に妄信しているグリフォニアにとっては、取るに足らないことなのだろう」
「飯綱先生! アンタはそれでもいいの!? 私は……!」
「最後まで聞け。私が言いたいのは、向こうがそう思うのと同じように、グリフォニアが何を言おうが、グリフォニアにどれほど崇高な思想があろうが、そんなものは我々にとっても取るに足らない話だということだ。そうだろう?」
そう言うと、飯綱先生がニヤリ、と口の端を持ち上げる。
その表情を見て、私の肩から急に力が抜ける。
「あ、あはは……飯綱先生も結構辛辣じゃない」
「ふふ、事実だよ」
私は苦笑いし、飯綱先生は含み笑いをしながらウンウン、と頷く。
だが、それはかなり効果があったようで。
「フザケルナ! キサマ達のような下賤な者が、“神”となられる高田様を語るな!」
私達の態度や飯綱先生の言葉が彼女の逆鱗に触れたのか、グリフォニアは犬歯を剥き出しにして吠える。
「あらあ? あんな男が“神”だなんて、何を言ってるのかな?」
「そうだな。所詮、高田光機という男は、反町様の研究を横取りしたにもかかわらず、反町様を超えることができない、憐れな男でしかないぞ」
私が煽るように尋ね、飯綱先生が残念なものでも見るかのような表情でかぶりを振る。
「キ、キ……キサマ等ああああああああ!」
激高して理性を失ったグリフォニアが、その大きな翼を羽ばたかせ、私達目がけて突撃してきた。
「フン、そんなやみくもの突進、当たるわけないでしょ?」
私と飯綱先生が二手に分かれて飛び退き、グリフォニアの直線的な突進を躱す。
「“トゥエルブ・ウィッチ!”」
そして私は十二枚のパネルを、グリフォニアを囲むように展開させる。
「クッ!? こんなもの……!」
グリフォニアがその翼をまるで腕のように振り回し、パネルを弾き飛ばそうと試みる。
だが。
「なっ!? さっきは私の翼でいとも簡単に薙ぎ払えたのに!?」
「あらあ、当たり前でしょ? さっきは飯綱先生が攻撃しやすいように、わざと退けたんだから」
「何っ!?」
焦るグリフォニアは翼やその太い腕で何とかパネルを取り除こうとするが、一向に脱出することができない。
「先生」
「任せろ」
飯綱先生が高速移動でグリフォニアに肉薄すると、二本のショーテルでグリフォニアの身体に切りかかる。
「なぜですっ!? 炎で覆われている私の身体が、なぜ攻撃を受けるのですかっ!? さっきは炎で溶けて変形したじゃないですかっ!?」
「ふ……オマエも知っているだろう? 『DS-n細胞』は……」
「っ!? 進化したというんですかっ!?」
「御明察だ」
そう言うと、飯綱先生の両腕が肉眼でとらえることができないほど高速で動き、グリフォニアの身体をさらに切り刻んでいく。
「ギャアアアアアアアッ!?」
全身から血が飛沫となって勢いよく吹き出し、グリフォニアが膝をついた。
「終わりだ……“サウザント・ワン”!」
二本のショーテルを重ね合わせると、飯綱先生は低く屈んで全体重を乗せ、まるで白銀の弾丸のようにきりもみ回転しながらグリフォニアへと飛び込む。
そして。
「グ、グウウウウ……!?」
グリフォニアの右脇腹が飯綱先生の攻撃によって綺麗にえぐり取られ、その身体をまとっていた炎も掻き消されていた。
「グオオオオオオオ! まだ! まだです! この私が……高田様の隣に立つ唯一の存在たるこの私が、負けるわけにはいかないのです!」
「っ!? なんだど!?」
消えた炎がグリフォニアの全身を再び包む。
だけど、これは……。
「青白い炎……」
「……グリフォニア、死ぬ気か?」
私と飯綱先生が思わず呟く。
青白い炎は先程までの炎と比較にならないほど高温であることを物語っている。
そして、そこまで高温に包まれたその身体は……。
「グオオオアアアアア!」
グリフォニアがパネルをその翼で振り払うと、あまりの高温にパネルは溶け、力なく床へと転がった。
「死ねええええええええ!」
グリフォニアが叫びながら飯綱先生へと向かって行く。
まるで、飯綱先生を道連れにするために玉砕するかのように。
だけど。
「……それでも、その攻撃は私には届かんよ……」
飯綱先生は悲しそうにそう呟いたかと思うと、まるでその場から忽然と姿を消したかのように見えた。
「紫村……アイツを……グリフォニアを楽にしてやってくれ……」
高速移動によって突然私の後ろに現れた飯綱先生が、悲痛な声でそう懇願する。
……同じ“ファースト”だから、思うところもあるわよね。
だから。
「分かったわ」
私は飯綱先生の言葉に力強く頷くと、右手に持つ紫のパネルの先をグリフォニアへと向けると。
「“カースド・ウィッチ”」
静かにそう呟いた。
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次話は明日の夜更新予定です!
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