対決!怪人グリフォニア!①
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■紫村由宇視点
「で、私達を一体どこに連れていくわけ? 女同士でデートなんてイヤなんだけど?」
先頭を歩くグリフォニアに、私は皮肉交じりに尋ねても、グリフォニアは私の言葉に一切反応せず、無言でフロアの廊下を歩き続ける。
「(ねえ……もういっそのこと、後ろから不意打ちしてやらない?)」
隣を歩く飯綱先生に、小声でそんなことをささやくと、先生は静かにかぶりを振った。
「そんなことができるならとっくにしている。残念ながら、グリフォニアに隙はない」
「……あっそ」
まあ、そんなことは私も分かってはいるんだけど。
すると突然、グリフォニアがピタリ、と足を止めた。
「フフ……ここまで離れれば、アリスと闘うヴレイピンクに加勢することはできませんね」
「「っ!」」
グリフォニアの言葉を受け、私達は咄嗟に後ろに飛び退いて距離を取る。
「……へえ、別に私達は加勢するつもりはなかったんだけど?」
「フフ……まあ、それもありますが、ヴレイピンクに私の邪魔をされても困りますし」
「あらあ? 随分余裕じゃない。私達を倒せるとでも思ってるの?」
「フフフ……もちろんですよ」
そう言うと、グリフォニアは嗤いながら……その姿を変えた。
その身体からは不釣り合いな獅子のような巨大な爪は変わらないが、全身の色を赤に変え、そして、その翼は炎をまとい、激しく燃え上がっていた。
「フフフ……アハハハハ! これこそ、高田様が私のために貴重な『DS-n細胞』で進化させてくれた今の私……高田様に仇なす者を焼き尽くす存在、“グリフォニア=フェネクス”です!」
グリフォニアが、まるで勝ち誇ったかのように高笑いする。
だけど。
「ねえねえ飯綱先生、アイツ、すごく調子に乗ってるわね」
「ああ、そうだな、たかだか翼が火事になった程度で見苦しい」
私と飯綱先生は、そんなグリフォニアを煽るように嘲笑う。
「フフ……負け惜しみですか? あなた達との力の差、分からせて差し上げますから、早く怪人になったらどうですか?」
「えー、私達は怪人なんかに変身しないわよ?」
「ふふ、そうだな。何せ私達は……」
「「勇者戦隊ヴレイファイブなんだから!」」
私と飯綱先生は左腕をかざすと、ヴレイウォッチのダイヤルを回す。
「「変身!」」
そして私は光に包まれ、その姿を変えた。
今までのヴレイバイオレットとは違い、私の周囲を十二枚の深紅のパネルが衛星のように旋回する。
まるで、ドレススカートを身にまとうかのように。
そして、まるでレイピアのような十三枚目の紫のパネルを右手に持ち、そこに糸を紡ぐようにいばらが巻き付いていた。
隣にいる飯綱先生も、その姿を変える。
銀色のヴレイスーツの上から、さらに身にまとう白銀のヴェールをたなびかせ、両手には二本の白銀のショーテルを持っていた。
「“ヴレイバイオレット=ブライアーローズ!”」
「ふ……“ヴレイシルバー=シェヘラザード”だ」
「「私達二人が、オマエを倒す!」」
私と飯綱先生が武器の切っ先をグリフォニアへと向けると、彼女はなぜか含み笑いをした。
「フフフ……本当に滑稽ですね。『DS-n細胞』による最高の進化を遂げた私に、無謀にもその程度の進化で挑んでくるなんて」
「なら、試してみるがいい……いざ! 参る!」
そう叫ぶと、飯綱先生が一気に飛び出す。
その速さは、イタチソードだった頃をはるかに上回っていた。
「シッ!」
先生のショーテルがグリフォニアの首元に襲い掛かる。
だが。
「むっ!?」
「フフフ……所詮、金属製の武器では私の炎の前では無意味ですよ!」
ショーテルはグリフォニアの翼に阻まれ、そして、その温度のためにショーテルの刃が溶けて変形した。
さらにグリフォニアは、先生に向け、翼から拳大の火球を放つ。
「フッ!」
先生は一息で吐くと、流れるような動きでその火球を躱した。
「なるほど……生半な武器ではその身体を傷つけることもできん、というわけか」
「フフフ、そうです。なので悪足掻きはやめて、大人しく私に殺されては……クウッ!?」
「あらあら、油断大敵じゃない?」
私は左腕から射出されたヴレイウィップでグリフォニアの足首へと巻きつけると、それを思いきり引っ張った。
……どうやら熱による影響は炎の翼だけで、それ以外の部分はそういったことはなさそうね。
「クソッ! 小癪なまねを!」
グリフォニアがその巨大な爪でヴレイウィップを切断すると、今度は私を標的と定め、炎の翼を羽ばたかせてこちらへ突撃する。
「っ! “トゥエルブ・ウィッチ”!」
私は旋回していた十二枚のパネルを正面に平面に並べて展開する。
そして衝突したグリフォニアを、パネルは見事に食い止めた。
「クウ……! なら!」
グリフォニアがその翼でパネルを薙ぎ払うと、炎で溶けなかったものの四方に弾き飛ばされる。
だけど。
「……隙ありだ」
「な!? ガアア!?」
いつの間にか距離を詰めていた飯綱先生が、二本のショーテルでグリフォニアの胸を切り裂く。
「グウ……その武器は私の翼で溶けたはず……なぜ……!?」
「ふ……この武器が元々そういう性質、というだけだ」
「っ! 形状記憶合金かあっ!」
「半分正解だ……このショーテルは『DS-n細胞』と形状記憶合金の結合体だ」
そう言うと、飯綱先生はグリフォニアの眉間にショーテルの切っ先を突きつける。
「終わりだ……」
マスク越しに聞こえる、飯綱先生の声は少し切なげだった。
「フ、フフ……まだ……まだです! 高田様が“神”となるまで! いえ、“神”となった後も、私は彼の隣で支え続けるのです! こんなところで……こんなところで終わる訳にはいかないんですよ!」
そう叫ぶと、グリフォニアの翼の炎が広がり、全身を覆いつくした。
「さあ! 高田様の崇高な理想を邪魔するオマエ達を、この私の手で消し炭にして差し上げます!」
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次話は明日の夜更新予定です!
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