作戦
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「それで……高田光機の元にはどうやって行くんだ? 向こうは僕達が来ることを踏まえて、万全を期しているんだろ?」
僕は反町一二三を睨みつけながらそう尋ねる。
万全の相手に真正面からぶつかるなんて、ハッキリ言って自殺行為だ。
それなら、できる限りリスクを減らして、最小限の被害で高田光機と対峙しないと……。
『ああ、もちろんそれについては考えてある。ガネホッグ』
「ハッ!」
反町一二三の言葉を引き継ぐように、ガネホッグが一歩前に出た。
「高田達の元へは、二手に分かれて向かうことになる。一方は陽動として動き、もう一方はその裏手から司令本部へと侵入する」
「ちょっと待ってください。それだと、陽動する側が全て受けなきゃいけないじゃないですか。ただでさえ戦力が少ないんです、そんな作戦、すぐに破綻しますよ」
僕はガネホックさんの作戦をすかさず指摘する。
だって、これじゃ下手をすれば全滅しかねない。
そんな危険な作戦に、大切なこよみさんを預けられない。
「大丈夫だ。陽動に当たっては、この私、ガネホッグと自衛隊第二特殊部隊“月光”が当たる」
「「「自衛隊!?」」」
僕達はガネホッグさんの言葉に声を上げる。
「……私は元々、その特殊部隊“月光”の隊長をしていた。そして、国防のために反町様の研究に参加し、そして、自ら志願して改造を受けたのだ」
「そうだったんですか……」
僕は思わず飯綱先生へと視線を向ける。
「飯綱先生はこのことは知っていたんですか?」
「……いや、ガネホッグが自衛隊出身だということは聞いていたが、 “ファースト”でもお互いを知っているわけではないからな……」
「そうですか……」
確かに……そうでなかったら、飯綱先生がカネショウの正体……並井十蔵について知らないはずがないからな……。
「だけど、それならなおさら分からないんですが、なぜ自衛隊が僕達に味方するんですか? 日本政府は高田側についているんじゃないんですか?」
「……政府も一枚岩ではない、ということだ」
ガネホッグさんは、苦々し気にそう答える。
この国の裏の世界の話だ……僕達があえて知る必要もない、か。
「分かりました。では、陽動としてガネホッグさんとその特殊部隊が正面から当たり、その隙に僕達が司令本部に侵入、高田光機及び怪人アリス=ヒュブリス、怪人グリフォニアを倒す、ということで良いですか?」
「ああ」
「ちょ、ちょっと待ちいや! ひょっとして耕太くんも参加する気なんか!?」
それまでじっと聞いていたこよみさんが、慌てて声を上げる。
「はい……もちろん僕も参加します」
「アカン! 耕太くんは普通の人間なんやで!? 何かあったらどないするんや!」
こよみさんは心配するような瞳で見つめながら、僕に詰め寄る。
だけど。
「だったら! ……だったら、こよみさんに何かあったらどうするんですか? 僕はその時、何もできないまま死ぬほど後悔すればいいんですか?」
「っ! せ、せやけど……」
こよみさんが僕の問い掛けに言葉を詰まらせ、顔を背けた。
「僕は誓いましたよね? ずっとこよみさんの傍にいるって、永遠にあなたの傍を離れないって。だから……だから、僕はこよみさんと一緒に行きます。そして、僕はこよみさんと、幸せな未来を築くんです」
「耕太……くん……」
僕の言葉に、こよみさんが肩を落とす。
そして。
「耕太くん……これだけは約束して? 絶対に……絶対に死なんといて! 絶対にウチを一人にせんといて! お願いやから、ウチをこれ以上、不幸にせんといて……!」
「はい……はい……!」
こよみさんの悲痛なお願いに、僕は力強く頷く。
当然だ。
こんな下らないことで、死んでたまるか!
こんなつまらないことで、愛するこよみさんを不幸になんてしてたまるか!
僕は……僕達二人は、これから幸せな未来を過ごすんだ!
「それで……決行はいつにしますか?」
僕はガネホッグさんに向き直り、そう尋ねる。
「決行は十日後の木曜日……時間は、今日と同じ朝四時だ」
「それまでの間、僕達はどうすればいいですか……?」
「普段通りに過ごしてもらって構わない」
「ちょっと待ってください。それだと、高田光機に襲われる危険があるんじゃ……」
『それはない』
それまで黙って聞いていた反町一二三が、強い口調で断言する。
「……どうしてそう言い切れるんだ?」
『高田光機は、桃原こよみさんとの闘いを望んでいる。自分が、この私……反町一二三より上だということを証明するために。自分こそが、神であると証明するために』
そうか……高田光機は完全なる勝利を求める、か……。
「分かった……じゃあそれまでは、僕達は自宅で待機していればいいか?」
『それで構わない』
なら、もうここには用はない。
僕は踵を返すと、こよみさんの手を握った。
「こよみさん、帰りましょう……僕達の、あの部屋に」
「耕太くん……うん!」
僕とこよみさんは、反町一二三とガネホッグさんに振り返りもせず、その場を後にした。
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