反町一二三⑥
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■反町一二三視点
高田くんに『DS-v細胞』を打ち込まれ、研究所から脱出してから既に三年が経過し、私は横浜にある倉庫の地下で、ガネホッグとともに隠れている。
私の身体についてだが、どうやら『DS-v細胞』が拒絶反応を示しつつも、私の脳だけは受け入れられ、結果として脳だけの改造人間へと変化したようだ。
……いや、この姿は既に人間のそれではない、か……。
だが、万能である『DS-v細胞』だけあって、脳のみとなっても感覚が研ぎ澄まされ、なぜか視覚、聴覚を有していた。
さらに、会話に至ってはどうやら電気信号によって相手の脳に直接送信する、いわゆるテレパシーのような機能まであることが、ガネホッグとの検査の結果、判明した。
なので、私は何不自由なく過ごしており、今は研究所で行っていた研究の続きと、彼等の動向を注視している状況だ。
「……反町様、戻りました」
並井機関を監視していたガネホッグが戻ってきた。
なお、彼も既に連中に顔が割れているので、今は別の顔に整形している。
『ああ……お疲れ様……それで、どうだった?』
「はい、連中はどうやら『DS細胞』によって改造された人間を“怪人”と名付け、軍事利用するようです。先週も高田光機と並井十蔵……カネショウが防衛大臣と接触したとの情報がありました」
『そうか……』
確かに奴等……いや、並井十蔵にとっては、不老不死を果たした今、後は『DS細胞』の有効活用として軍事利用にシフトするのは分かっていた。
何より、そのために“ファースト”が生み出されたのだから。
そして、高田光機にとっても、軍事利用はエビデンスを蓄積する実験を行うための絶好のプラットフォームとなるからな。
『……それで、君の“上”はなんと言っているんだ?』
「はい、軍事利用自体は肯定的に受け止めているようです。ただ、人道的な観点から、研究の方向性を変えるべきではないかとのことです」
『フ、軍事利用に傾いている時点で、既に人道的とはかけ離れているが、な』
「…………………………」
『……いや、すまない。それをこの私が言うべきではなかったな』
「いえ……」
だが……引き続き、我々には見守ることしかできなそうだな……。
そして、“ヴレイヴハート”と“ブリューナク”、“アイギスシールド”を完成させないと……。
私は私の信号によって繋がれているアームを操作し、再び研究を続けた。
◇
それからさらに数年の月日が流れたある日。
「反町様っ!」
勢いよく扉を開け、ガネホッグが焦った表情で中に入ってきた。
『? どうした?』
「“ヴレイヴブロッサム”の存在が高田光機に知られました!」
『なんだって!?』
バカな!
あの芝居で“ヴレイヴブロッサム”は廃棄処分扱いとなり、そのデータも抹消したはずだ!
それがこの期に及んで一体なぜ!?
『そ、それで!?』
「ハッ! “ヴレイヴブロッサム”はあくまでも高田の部下として養成する体を取るようです! どうやら、高田光機が作った“怪人”と競う目的で……!」
『はあっ!?』
それはつまり、“ヴレイヴブロッサム”の……『DS-v細胞』の存在について気づいたということか!?
『な、なぜそんなことに! 何の目的で!』
「ハッ! 高田は“怪人”を量産し続けているのですが、いまだ“ファースト”を超える“怪人”を生み出せていない現状に、苛立ちを隠せないようです。ならば、自身の作った“怪人”と“ヴレイヴブロッサム”とを闘わせて比較検証をする方向のようです」
結局……結局あの男はそんなことを……!
『……それで、なぜ彼女の存在がバレたのだ?』
「ハッ! 研究に行き詰った高田が、『DS-n細胞』の研究データの洗い出しを行った際に、“ヴレイヴブロッサム”の肉親を活用することを考えたそうです。その時に……」
『近しい遺伝子なら、拒絶反応もなく可能性があると考えたか……それで……』
「ただ、高田はあくまでも『DS-n細胞』のプロトタイプとしての研究だと捉えております。そして、一から研究を見直そうと考えているようです」
『そうか……』
どうやら、まだ『DS-v細胞』にまではたどり着いてはいないようだ。
だが、このままでは、高田に気づかれるのも時間の問題だ。
『……ガネホッグ』
「ハッ!」
『君の“上”を通じ、君が並井機関の技術部門に潜入することは可能か?』
「ハッ! それは比較的容易かと」
『そうか。なら君は技術部門に潜入し、“ヴレイヴブロッサム”がサンプルを採集されそうになったら、代わりに似せて作ったこの『DS-n細胞』にすり替えてもらえないか? そして……来るべき時になったら、この完成した“ヴレイヴハート”と“ブリューナク”、“アイギスシールド”を彼女に渡してくれ』
「ハッ! その任務……必ずやり遂げてみせます!」
『頼む……』
結局、この私は“彼女”に命運を託すことになってしまったか……。
だが、唯一『DS-v細胞』に適合する“ヴレイヴブロッサム”しか止められる者がいない。
なので私は、せめて彼女を裏からサポートし続けよう。
そして全てが終わったら、私は神の裁きを受けよう。
彼女の……“ヴレイヴブロッサム”の手によって。
お読みいただき、ありがとうございました!
反町一二三視点は今回で終了!明日からは耕太視点に戻ります!
次話は明日の夜更新予定です!
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