黒い決意
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「上代くん、ピンク……そろそろ……」
変身を解いた先輩が、今なお抱き合って泣き続けている僕達に声をかけてくる。
チラリ、と見ると、先輩の瞳も涙を浮かべていた。
……先輩も、まさか信じていた高田司令が黒幕であることに、驚きと失望と、そして、悲哀が隠せないんだろう。
「こよみさん……」
僕は涙を堪え、こよみさんの背中をポンポン、と叩く。
「こ、耕太くん……」
「行きましょう……僕達も、これからのことを考えないと……いけませんから……」
こよみさんは止まらない涙をそのままに、ただ静かに頷いた。
「先輩……とりあえず、飯綱先生と合流しましょう。元“ファースト”の先生なら色々と知っているかもしれませんから……」
「……ええ」
僕達は悲しみに暮れたまま、一路大学へと向かった。
◇
「はい……って、三人ともどうしたのだ!?」
大学の研究室を訪ね、ノックをすると飯綱先生がドアを開けて出てきた。
だけど、僕達の様子がおかしいから、先生は驚きの表情を見せた。
「先生……少しお話が……」
「む……分かった、中に入るといい」
先生は僕達三人を研究室の中へ招き入れ、別室の会議スペースへと通された。
「それで……君達に一体何があったんだ?」
「はい……」
僕はカネショウ……並井十蔵との一件について説明する。
怪人カネショウの正体が、あの並井十蔵であったこと。
ダークスフィアを操る真の黒幕は、こちら側の人間……高田光機司令であったこと。
……そして、こよみさんが先生と同じ“ファースト”であったこと。
「……それで、“ファースト”だった先生なら、何かを知っているかと思いまして……」
「……そうか……」
先生は僕の話を聞き終えた後、一言そう返事をして目を瞑った。
だが、先生は肩を震わせ、拳を強く握りしめていた。
「……私にも思うところは色々ある。反町様からのお言葉だと信じて動いていたものが、まさかカネショウに……政府にいいように操られていただけだったこと、カネショウがまさか我々“ファースト”の宿敵、並井十蔵だったこと……」
そう言うと、先生はふう、と一息吐いた。
「そして、まさか桃原くん……ヴレイピンクが我々と同じ、“ファースト”の一人だったなんて……」
「……先生は知らなかったんですか?」
「……ああ」
僕の問い掛けに、先生は力なく頷く。
その様子からも、先生がとても嘘を吐いているようには思えない。
「……“ファースト”の最後の一人は小さな子どもだということは知っていたから、同じく子どもの姿だったカネショウを“ファースト”だと思い込んでいた……だが、君達の話を聞き、なるほどと頷ける……」
先生がチラリ、とこよみさんを見る。
「……結局、ほとんど分からないのと同じじゃないのよ……」
先輩が顔をしかめ、吐き捨てるように呟いた。
「いや、そうでもない」
「「「……え?」」」
先生の言葉に、僕達は一斉に反応を示す。
「忘れたのか? ガネホッグの奴が言った言葉を」
「ガネホッグ…………………………あ」
そうだ、あの時確かにあの男は言っていた。
『一か月後、反町様との面会の場を用意する』、と。
「そうだ、そしてもうすぐその約束の一か月後になる」
「一か月後……」
あの反町一二三なら全てを知っているはず。
怪人の秘密も、高田司令の正体も、そして、こよみさんのことも。
「……だから、我々はガネホッグからの連絡をただ待てばいい。そして、反町様に全てを明らかにしてもらうのだ」
「ええ……」
それだけじゃない……。
僕の胸の中に黒いものが渦巻く。
僕は……こよみさんをこんな目に遭わせた、反町一二三を……この手で殺す。
必ず……必ず、この手で鉄槌を下してやる!
僕は誰にも気づかれないように拳を握り締め、静かにそう決意した。
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次話は明日の夜投稿予定です!
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