怪人カネショウ③
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「うーん……」
朝になり、いつもの時間に僕は目が覚める。
そして、隣をチラリ、と見る。
「すー、すー……」
こよみさんが布団の中で可愛い寝息を立てていた。
こよみさんの実家から帰って以来、僕達は同じ布団で眠るようになった。
だって、もう僕達は色々と遠慮をする必要がないんだから。
……可愛い。
僕はこよみさんの寝顔をまじまじと眺めていると、つい可愛くなってしまい、その頬にキスをした。
おっと、起こさないようにしないとね。
僕はそっと布団からでると、朝ご飯の準備のためにキッチンへ。
ええと、冷蔵庫は……豆腐、なめこ、ねぎ、アジの開き……そして納豆。
うん、今日はシンプルに豆腐となめこのお味噌汁とアジの開きを焼こう。
あらかじめグリルに火をおこして予熱をしておいて……。
豆腐を小さく角切りに、ねぎをみじん切りに。
お鍋に水を入れて火をかけ、沸騰したら豆腐となめこ、顆粒だしを入れる。
で、一煮立ちしたら火を止めて、味噌を溶いて、と。
グリルももういいかな。
僕はアジの開きを二匹グリルに入れる。
——ピーッ、ピーッ。
昨日の夜にタイマーをセットした炊飯器が鳴る。
僕はしゃもじの先を水で濡らすと、炊きあがったごはんの粒をつぶさないように、釜の底からしっかりとかき混ぜる。
で……納豆。
こよみさんは嫌いだけど、僕は大好きなんだよね……。
とりあえず納豆を器に入れ、そこへ卵の黄身、刻んだねぎ、だし醤油、和からしを入れてよくかき混ぜる。
ウーン……この匂いがいいんだよね。
すると。
「ふああ……耕太くんおはよ……」
「おはようございます」
眠そうなこよみさんが、目をこすりながらキッチンにやってきた。
「ふああ……はわ!?」
「はは……今日も可愛いです」
僕はそんなこよみさんを抱きしめ、その頬にキスをした。
「もう……ちゅ」
こよみさんもお返しとばかりに頬にキスをする。
あ……ダメだ。
「こよみさん……」
「も、もう耕太くん……は……ん……」
……結局、今日の朝も……うん。
◇
「それじゃ、行ってきます」
「うん、行ってらっしゃい」
こよみさんに見送られ、僕は学校へ向かう。
今日は一コマ目から授業があるから、いつもより朝が早いのだ。
「さあて、遅れないようにしないと……」
僕は少し足早に歩く。
すると、一人のお爺さんがヨロヨロ、と道を飛び出してきた。
そして、そこにはトラックが侵入してくる!?
「あ、危ない!」
僕は慌ててお爺さんを助けに向かう。
その時。
「はあ!?」
なんと、お爺さんのお尻か昆虫の尻尾? のようなものが現れてトラックに突き刺さると、トラックは綺麗に横転した。
あれって……。
「フフフ……上代、耕太……」
僕を知っている……つまり……。
「ダークスフィア……」
「大人シク来テモラオウカノウ……儂ノ不老不死ノタメニ、ノウ!」
お爺さん……怪人の尻尾が、今度は僕目がけて襲い掛かる。
だけど。
——ギャリッ!
「ッ!? ナンジャッ!?」
「へえ……お爺さんの怪人なんて、見たことも聞いたこともないわね」
「先輩!」
先輩のヴレイウィップが尻尾を絡め取り、その動きを止める。
「貴様……スオクインカッ!」
「んふふ……私の前の名前を知ってる、お爺さんは誰なのかな?」
「クソッ!」
怪人は先輩のヴレイウィップを無理やり引きはがそうと懸命に振り回すけど、いばらの棘が食い込んでおり、外れる気配がない。
「うーん、やっぱり見覚えがないわね……だけど、私の正体も知ってるわけだし、それなりに上のほうの怪人だと思うんだけど……」
その時。
「ジャアッ!」
尻尾の先から粘液のようなものが噴き出し、ヴレイウィップに降りかかると、シュワシュワという音とともに溶け出した。
「……へえ、溶解液かあ」
「フオフオ! 儂ノ尻尾カラハ、溶解液ヤ麻痺毒、神経毒ナド、アリトアラユル毒液ヲ出スコトガデキルノジャアア!」
うーん……自分でバラしちゃったけど、大丈夫なんだろうか……。
「ま、だったらそれに対処すればいいだけなんだけど?」
「ナアッ!?」
先輩は左腕、そして右脚からもヴレイウィップを出現させると、今度は尻尾をより丁寧に巻き上げた。
そして。
「グガ!?」
「鬱陶しいから千切るわね」
そう言って、先輩は怪人と尻尾を綱引きのように引っ張る。
ミリミリ、という音が響き、そして、尻尾は怪人の根元から引きちぎられた。
「ギャヒイイイイ!?」
「うわあ、下品な鳴き声」
先輩は耳を塞ぐようなおどけた態度をとり、怪人をあしらう。
「クソ、クソ、クソオオオオオ! 儂ハヴレイピンクを倒サネバナランノジャアアア!」
「ウチがなんやって?」
すると、こよみさんまで現れた。
「ヴレイピンク!」
「オマエ、ようも耕太くんに手え出そうとしたな! このまま一気に叩き潰したる!」
そう言うと、こよみさん“はブリューナク”を構え、腰を低く落とす。
「クソックソッ! 儂ハ死ネン! コノ“並井十蔵”ハ、死ヌワケニハイカンノジャアアアア!」
……は? この怪人、今なんて言った!?
「ア、アンタ、一体今何て……」
「オ、オオ! 頼ム! 儂ヲタスケテクレ! 何デモスル! 何デモスルカラ!」
動きが止まったこよみさんを見て、怪人はここぞとばかりに命乞いをする。
「貴様……! 貴様が並井十蔵かあああああ!」
だが、その名前を聞いて怒り狂った先輩が、より強烈にヴレイウィップを引き絞る。
「せ、先輩! 待ってください!」
「止めないで耕太くん! コイツは……コイツだけはああああ!」
「せ、せめて情報を……!」
「情報ってなによ! どうせ碌でもない、胸糞な話しか出てこないわよ!」
「ワ、儂ヲ殺セバ、ヴレイピンクノ……“ファースト”ノ秘密モ分カラズジマイダゾ!」
……待て。
待て待て待て待て待て待て待て待て!
今、なんて言った?
この怪人はなんて言った!?
ヴレイピンクが……こよみさんが“ファースト”だって、そう言ったのか!?
お読みいただき、ありがとうございました!
次話は明日の夜投稿予定です!
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