【番外編】京都での邂逅(「僕は異世界で美幼女姫様と刑事をする。」とのコラボ!)
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今回は番外編として、「僕は異世界で美幼女姫様と刑事をする。〜異世界における科学捜査の手法について〜」(https://ncode.syosetu.com/n3313gb/)とのコラボでお送りします!
なお、GOMさんの作品でも、主人公、守部武士の視点で投稿されておりますので、そちらもぜひお読みください!
「こよみさーん」
僕達はこよみさんの実家へ向かう途中、乗り換えの時間もあり、せっかくなので京都の街を観光することにして、今、祇園の辺りに来てるんだけど。
「ちょ、ちょっと待って耕太くん! ああ! あそこのお店見て見て! 洋食屋さんって書いてあるのにお祭りの屋台みたい!」
こよみさんはキョロキョロと周りを見渡しては、物珍しさにはしゃいでいる。
うん、最高に可愛い。
「なあなあ耕太くん。あそこのお店見てみ? あれって……」
「あ、金平糖のお店みたいですね」
「……チョットだけ覗いてみてもええかな?」
「もちろんです」
「やったー! 耕太くん大好き!」
「はい、僕も大好きです」
「は、はわわ……もう……」
こよみさんは繋いでいる僕の手をキュ、と強く握った。
なので、僕もそのお返しとばかりに強く握り返す。
「えへへ……」
「さあさあ、入りましょう」
中に入ると、多くのお客さんで賑わっていた。
だけど。
「……な、なんだかかなり個性的なお客さんがいますね……」
「そ、そやな……」
見ると、二十代半ばの男性と、その、こよみさんと同じ位の小さな女の子……って、羽と尻尾が生えてる!?
「(な、なあなあ耕太くん……ひょっとして、怪人が金平糖買いに来た……なんちゅうことはあらへんよな……)」
「(え、ええ……さすがにそんな馬鹿な話は……)」
僕達はそのお客さんに気づかれないように、店の隅でこそこそと話す。
「(よ、よし……ちょっと近づいて様子を見てみましょう……)」
「(う、うん……)」
僕達は金平糖そっちのけで、その怪しげな二人組の背後へと近づく。
すると。
「うわあ! 見よタケ! どれも美味しそうじゃ!」
「そうですねえ……で、そろそろ戻らないとマム達が暴れ出しかねないですよ?」
「むう、イヤなのじゃあ。もう少しタケとデートするのじゃ! ……タケは此方と二人っきりで居たくは無いのかや?」
「え!? そ、そんなの……僕だってリーヤさんとは二人でいたいですよ……」
「えへへ……此方、やっぱりタケが大好きなのじゃ!」
……ええと。
「こ、こよみさん、とりあえずは大丈夫みたいですね……」
「そ、そうやね……」
僕達は二人ののろけに中てられてしまい、そっと二人から離れた。
「と、とりあえず金平糖でも見ましょうよ」
「そ、そやな」
僕達は極力二人から遠い場所で金平糖を見ながら、いくつかお土産用に買い、店を出た。
◇
「ですが、先程のカップル……あれって多分、異世界の……」
「ま、まあそうやろな……でも、あそこまであからさまなんは初めて見たかも」
九年前に起こった時空融合大災害で、この世界と別の世界……まさにファンタジーみたいな世界とつながって、向こうの世界の人達と交流があることは知っていたけど……。
「じ、実際に見たら衝撃的ですね……」
「う、うん……ま、まあ怪人かてあんなんやさかい、見慣れてなくはないっちゃないんやけど……それより耕太くん」
向かい合わせに座るこよみさんが居住まいを正し、真剣な表情で僕を見る。
「な、なんでしょう」
「その……この葛切り、メッチャ美味しい!」
満面の笑みを浮かべ、そんなことを宣言した!?
「あ、あはは、それは何よりです」
「こののど越しがチュルンってなって、黒蜜がすごい甘くて、こんなんたまらへん!」
そう言いながらこよみさんは口の中に葛切りを放り込むので、ほっぺたが膨らんでいた。
はあ……可愛いなあ……何時間だって眺めてられる……。
その時。
「お、ここじゃここじゃ!」
「ちょ、ちょっとリーヤさん!? 恥ずかしいんですってばあ!」
騒がしい声が入口のほうから聞こえてきたので振り返ってみると……。
「こ、こよみさん!」
「耕太くん!」
うん、さっき金平糖のお店で見た二人組だった。
となると……やっぱり僕達と同じ観光、みたいだな……。
「お、見るのじゃタケ! あの席が空いているのじゃ!」
そう言って小さな女の子が指差した先は、僕達の席の隣だった。
「あ、本当ですね」
そして二人は、そのまま僕達の隣へと座った。
「さあて! タケ、このお店は何が美味しいのじゃ?」
「ええと、ここは葛切りで有名なお店ですので、葛切りにしましょうか」
「葛切り、とは、さっき話していたモノなのかや?」
「ああホラ、お隣のお客さんが食べているアレですよ」
そう言って、二人は僕達のほうを眺める。
や、そんなまじまじと見られると食べづらいんですけど……。
「なんだかチュルチュルしてるのじゃ!」
「ですね」
や、だから見ないで……。
「うん、此方もアレにするのじゃ!」
「はい。すいませーん!」
二人は店員を呼び、葛切りの注文をする。
うん、これで僕達を見られることは……。
「ところでタケ、日本にも此方のように長寿の者がおるのかや?」
「どうしてですか?」
「だって、どう見ても子どもみたいじゃが、此方達と同じようにデートしておるぞ?」
「チョット!? リーヤさん!?」
な!? 言うに事欠いて僕のこよみさんに……!
「ちょ「ちょっと待たんかい!」」
僕が抗議する前に、本気でキレたこよみさんが二人に絡んだ。
「む、なんじゃ?」
「ウチはアンタと違て子どもちゃうわ! れっきとした二十三歳のピチピチのお姉さんや!」
袖をまくり上げ、こよみさんは女の子に啖呵を切った。
あ、これ、止めに入らないとマズイやつだ。
「何じゃ、やっぱり若いのじゃな。ちなみに此方は既に百歳を超えておるぞ?」
は? 今なんて言った?
「わはははは! 子どもがそんなウソ吐いたらアカンで! どう見ても小学生くらいのチンチクリンやないか!」
「なんじゃと! 其方もチンチクリンなのじゃ!」
「なんやて!」
「「あああああ……け、ケンカはやめてください!」」
僕と向こうのお兄さんは慌てて仲裁に入る。
「か、彼女がすいません……」
「い、いえ、こちらこそ……」
僕と男性は顔を見合わせ、お互いにペコペコとお辞儀をする。
「なんじゃタケ! こんな無礼者に頭を下げるなど無用じゃ!」
「耕太くん! こんなん相手にせんかてええ!」
ええと……相手にしたのはこよみさんであって……。
「す、すいません本当に……」
「あ、い、いえ、こちらこそ……」
そう言って、また僕達は頭を下げる。
「タケ!」
「耕太くん!」
気に入らない二人は、声を荒げて名前を呼んだ。
「……お互い苦労しますね」
「はは、そうですね……ですが……」
「「好きになっちゃったからしょうがない」」
おっと、思わずハモってしまった。
「ははは、僕は守部武士。気づいてるかもしれないけど、ポータムから観光に来てるんです」
「あ、僕は上代耕太です。同じく観光に……」
「へえ、地元の学生さんかと思ったんだけど」
「学生というのは合ってます。東京の大学二年生です」
「そっかー、よろしく」
「はい、よろしくお願いします」
僕達はお互い握手を交わして自己紹介をすると、不満なのか、二人は揃って頬をふくらませていた。
うん、こういうところ、そっくりかも。
「ほらほらリーヤさん、これ以上邪魔したら……」
「こよみさん、ほら、葛切りの残りを食べて……」
お互い彼女を窘めている、その時。
——ドオオオオオオオンンン!!
「な、なんだ!?」
突然、外から大きな爆発音が聞こえた。
「い、一体何なのじゃ!?」
「とにかく外へ!」
守部さんとリーヤという女の子は、急いで外へと出て行った。
「耕太くん!」
「ええ!」
僕達も同じように、慌てて外へ出てみると。
「ブブブブブ! コノ京都ノ街ハ、我々ダークスフィアト!」
「メシアによる福音主義同盟が占拠する!」
「「「「はあああああ!?」」」」
僕達と守部さん達四人は、一斉に声を上げる。
「な、なあタケ! あの気持ち悪い金ピカの奴は何者じゃ!?」
「わ、分かりません! で、ですが、あのカラシニコフを持っている連中……この前の連中の仲間ですよ!」
「耕太くん! ダークスフィアの怪人がなんでここに!?」
「分かりません……ですが、あの武装集団と手を結んでいるようですね……」
状況は全然つかめないけど、怪人相手なら僕達がすべきことは一つ。
「こよみさん!」
「うん!」
こよみさんは左腕のヴレイウォッチをかざし、ダイヤルを回す。
「変身!」
そして、こよみさんは一瞬のうちにヴレイピンク=ヴァルキュリアへと変身した。
「ダークスフィア! アンタ達はこのヴレイピンク=ヴァルキュリアが叩き潰したる!」
そう叫び、こよみさんが怪人達へと突っ込んでいく。
おっと、そうだった。
「守部さん! あの怪人は僕達が対処します! お二人は避難……」
「リーヤさん! 行きますよ!」
「任せるのじゃ!」
そう叫ぶと、二人は武装集団へと向かって行った。
「二人とも! 危ないですから!」
「上代くん大丈夫! こう見えて僕達は荒事が得意なんでね!」
そう言うと、守部さんが服の中から銃を抜き……じゅ、銃!?
なんで銃なんか持ってるの!?
え、ええと、二人も気になるけどこよみさんは……あ、怪人と対峙してる。
「ブブブブブ、貴様、ナゼヴレイピンクガ京都ニ!?」
「知らんわ! 人がせっかく彼氏と京都観光を楽しんどったのに、何さらしてくれてんねん!」
そう言うと、こよみさんは金色に輝くパンチパーマの怪人へと“ブリューナク”を突き出す。
「ブブブブブ!? 鋼鉄ヨリモ固イ、コノ怪人コガネブダノ身体ガ!?」
かろうじて怪人は躱したが、左腕にかすったようで、その左腕が“ブリューナク”によってえぐり取られた。
「フン、ただの怪人がウチの相手になる訳ないやろ!」
「ブブブ!? マ、マズイ! ニゲ……!」
「終わりやあああああ!」
叫び声と共に、こよみさんは背中を向けて逃げ出す怪人の身体に、“ブリューナク”を貫通させた。
「ブブブブブブブアアアアアアア!?」
こよみさんが奇妙な断末魔をあげる怪人の身体から“ブリューナク”を抜くと、怪人はそのまま地面へと崩れ落ち、そして、消滅した。
そ、そうだ! 守部さん達は!?
「フン、大したことないのじゃ!」
「ふう……とりあえずこれで全員無力化できました」
見ると、武装集団は全員地面に倒れており、リーヤさん? がドヤ顔で仁王立ちしていた。
うん、本当にあの二人、何者なんだ!?
「おっと、警察が来たぞ」
うーん、こよみさんは一応休暇ということになってるし、東京じゃないから面倒なことに……。
すると。
「上代くん!」
守部さんが手を振りながらこちらへとやってきた。
「き、君達のアレは何だったんだい!?」
「あ、ええと……」
マズイ!? 二人に正体を言う訳には……!
「ああ……なんとなく分かったよ。まあ、僕達も同じようなものだからね」
「す、すいません。察してくれて助かります」
「ははは、いいよいいよ。それより警察が来たけど、君達は大丈夫?」
そうだった! 面倒になる前に退散しないと!
「はは、京都府警には知り合いの刑事さんもいるから、君達は早く行って」
そう言うと、守部さんはニコリ、と微笑んだ。
「は、はい! それじゃお言葉に甘えて! 失礼します!」
僕は挨拶もそこそこに、こよみさんの元へ走ると。
「こよみさん! 早くここから立ち去りましょう!」
「はわ!? え!?」
「こよみさん、ここは京都ですよ!」
「あ、そやった! ホ、ホナ早いとこ退散や!」
そうして僕達は、慌ててその場を立ち去った。
◇
「はあ……えらい目に遭うたなあ……」
「本当ですね……」
僕達はこよみさんのご実家へのお土産と金平糖を抱えながら、ホームで電車を待つ。
「せやけど、けったいな二人やったなあ……結局あの二人は何者なんやろ?」
「さあ……ですが、拳銃も持ってましたし、警察とも知り合いみたいですから、ポータムの要人とかかもしれませんね」
「そうやろか……ホナあの男の人は、あのチビッ子のお守りっちゅうことやろな」
「いえ、恋人同士だそうですよ」
「ええ!? ホ、ホナ、あの百歳以上っちゅうのも……異世界ではあんなんが標準なんかなあ……」
「さあ……」
——ピンポンパンポン。
お、電車の到着の合図だ。
そして、ホームへと電車が乗り入れる。
まあ、何はともあれ。
「さあ、それじゃこよみさんの、その、ご実家に向かいましょうか……」
「う、うん……」
僕達は電車に乗り込み、吉野へと……!?
「こ、こよみさん! アレ!」
「へ? ……ってうわあ!?」
電車の窓越しに見える守部さんと彼女さん、そして……多分、異世界の人達なんだろうなあ……。
「また会うでしょうか……」
「ど、どやろ……」
僕達はなんとなくまた会いそうな予感がしつつも、今度こそ吉野へと向かった。
お読みいただき、ありがとうございました!
今回はGOMさんとの作品「僕は異世界で美幼女姫様と刑事をする。〜異世界における科学捜査の手法について〜」(https://ncode.syosetu.com/n3313gb/)とコラボした番外編をお送りしました!
初の試みでドキドキでしたが、非常に楽しく書かせていただきました!
GOMさん、ありがとうございました!
皆さんもGOMさんの作品もぜひぜひ!
なお、本編はこの後夜21時~22時前後で投稿予定です!
少しでも面白い! 続きが気になる! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!




