休暇③
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「こよみさん、準備できました?」
「あ、うん、もうちょっと待って!」
僕はふすま越しに寝室にいるこよみさんに声を掛けると、そんな返事が返ってきた。
うん、女性の身支度はどうしても時間が掛かってしまうし、それに、荷物も多くなってしまうから、仕方ないよね。
……新幹線の切符、時間変更しとこう。
僕はスマホを取り出し、切符予約のサイトを開いて時間変更の手続きを行う。
元々予約していた時間の一時間後でいいかな……よし、変更完了。
「耕太くんごめん! お待たせ!」
「おお……!」
今日のこよみさんは白黒チェックのブラウスに、デニムのホットパンツ、黒のストッキングに、アクセントとしてサスペンダーを使用している。
その顔も、うっすら化粧していて、唇の淡いピンクのルージュがこよみさんの可愛さをより強調していた。
うん、これはこよみさんが悪いな。
「はわ……ん……ちゅ……」
僕は我慢できなくなり、こよみさんを抱きしめると、そのままキスをした。
「ぷぁ……もう……」
「すいません」
「悪いと思ってへんくせに……」
少し怒った仕草をしながら、こよみさんが僕に抱きついてきた。
「嬉しい……」
「僕もです」
もっとこのまま抱き合っていたいけど。
「こよみさん……そろそろ行きましょうか……」
「あう……うん……」
こよみさんは名残惜しそうに僕から離れ……ずに、僕の服をつまんでいた。
「あはは、じゃあ行きましょう」
「うん!」
僕達はようやく部屋を出て、一路駅へと向かう。
ここから品川駅に出て新幹線で京都まで向かう行程だ。
「えへへ……耕太くん、ありがとね」
手を繋ぎながら歩いている途中で、こよみさんがそんなことを言った。
「ええと、何がですか?」
「あ、うん……ウチの両親に会うてくれるんて、その……」
こよみさんがもじもじしながら、上目遣いで僕を見る。
その瞳は、少し潤んで輝いていた。
「はい……も、もちろんその、こよみさんにも正式には、まだ、なんで……あれですが……」
「うん……」
「だ、大学を卒業したら、その……ですからそれまで、待っていて、くれ、ますか……?」
「は、はい……!」
すると、こよみさんは僕に抱きつく。
「ウチ……ウチ……嬉しい、よお……!」
「僕もです……」
僕達は、住宅街の道端で、ただ抱き合っていた。
出逢いも雨の中の住宅街だったので、僕達らしい……かな。
◇
「こよみさん……こよみさん……」
僕は、隣で眠るこよみさんの身体をゆすりながら声を掛ける。
「ふみゅ……ん……」
「そろそろ京都ですよ」
「ふあ……あ……ふうん……」
ダメだ、熟睡してしまって起きてくれない……。
……仕方ない。ちょっと恥ずかしいけど……。
「……はむ」
僕はこよみさんに顔を近づけ、こよみさんの耳たぶを甘噛みした。
「ん……んう……!? はわわわわわわわわわわ!?」
こよみさんは驚きのあまり、顔を真っ赤にしながら飛び上がった。
「お、おはようございます……」
ちょっとやり過ぎたかなあ……。
で、でも、こよみさんの甘い声……ど、どうしよう、理性が……!
「は、はわわ……こ、耕太くん、おはよ……」
「は、はい……その……もうすぐ京都、です……」
「う、うん……」
それから僕達はお互い無言のまま、新幹線を降りた。
「さささあて、ほほほほな行こか!?」
「そそそうですね、いい行きましょうか!?」
だけど、まだ時間が少しあるな……。
「ねね、ねえこよみさん」
「なな、なんや耕太くん」
「ま、まだ時間があるので、その観光なんてどうですか?」
「あ、う、うん! 行く! 行きたい!」
「よし、じゃあ行きましょう!」
「うん!」
うん、観光に意識を向けたら、こよみさんも正常に戻ったぞ。
という訳で、僕達は観光を楽しんだ。
……途中、思わぬ事態に出くわしたけど。
観光? を終えた僕達は私鉄に乗ると、奈良の橿原神宮がある駅まで向かう、
「あはは、結構遠いやろ?」
ようやく落ち着きを取り戻したこよみさんが、はにかみながらそんなことを言った。
「いえ、こういった電車旅ってあまりしたことがありませんから、すごく新鮮です」
「ホンマ?」
「はい。それに……こよみさんと一緒ですし……」
「はわ……もう……やっと落ち着いたトコやのに……」
そう言うと、こよみさんはピト、と身体を合わせた。
「こよみさん……僕、幸せです……」
「ん……ウチも……」
寄り添い合いながら、僕達は目的の駅を目指した。
◇
「着いたー!」
こよみさんが両手を突き上げて伸びをする。
「ここがこよみさんの故郷……」
僕は駅の周辺をまじまじと見る。
マンションが建っていたりビルがあったり、意外と栄えてるところだった。
「はわー、しばらく見いひんうちに、大分栄えとるなあ」
こよみさんの口ぶりからすると、どうやら最近開発されてきたみたいだな。
「ここからは車で移動なんでしたっけ?」
「そや。せやからタクシーに乗って向かうんや」
ということで、僕達はタクシー乗り場へと移動したんだけど。
「え!? お父ちゃん!?」
「おー! おかえりこよみ!」
そこにいたのは、こよみさんのお父さんだった。
お読みいただき、ありがとうございました!
なお、明日は同じく作家のGOMさんとの作品「僕は異世界で美幼女姫様と刑事をする。〜異世界における科学捜査の手法について〜」(https://ncode.syosetu.com/n3313gb/)とコラボした番外編を夕方18時に投稿します!
GOMさんの作品もぜひぜひ!
少しでも面白い! 続きが気になる! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!




