怪人カネショウ①
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■カネショウ視点
「はあ……なんでこのボクが……」
ラボで修復ポッドに入って治療を受けているアリス=ヒュブリスを眺めながら、ボクは思わず溜息を吐く。
だってグリフォニアの奴、アリスの欠損した部分の治療に、ボクの『DS細胞』の一部を提供しろだなんて言うんだもんなあ……。
ホントにアイツ、何様だっていうんだよ!
“あの御方”の寵愛を受けているからって、偉そうに!
ダークスフィアは、元はボクが作ったボクのためだけの組織なんだぞ!
なのに……!
ボクは悔しくなり、その場で地団駄を踏んだ。
「……何をしているのですか?」
「へ?」
振り返ると、呆れた表情のグリフォニアが立っていた。
「あ、い、いや……」
「全く……『DS細胞』の抽出は終わったんですか?」
「あ、う、うん。それはこれから……」
「早くしてください。彼女の再生には、あなたの『DS細胞』がどうしても必要なんです」
何だよ! そんなに急ぎだったら、オマエの『DS細胞』を提供すればいいじゃないか!
「……まるで、私の『DS細胞』を差し出せばいいじゃないか、とでも言いたそうですね?」
「え!? そ、そんなことないよ……」
くそう、何で分かるんだよ!?
「前にも説明しましたが、あなたの『DS細胞』は私達と違って“特殊”なんです。なにせ、私達の『DS細胞』は動物の細胞をヒトの細胞に結合することを前提としているのに対し、あなたのものはヒトの細胞同士を結合させることを前提としているのですから」
「………………………」
「大体、あなたもその細胞のおかげでそのような身体を保てるんじゃないですか。それも、最後の“ファースト”の技術を応用して“あの御方”がわざわざあなたのために開発してくれたおかげで」
「………………………分かってるよ」
くそう……だからボクは“あの御方”に逆らえないんじゃないか。
だって、逆らったら、それこそボクの身体の『DS細胞』を全てダメにされて、またあの醜い身体に戻るだけじゃなく、それこそ寿命なんてものを受け入れなきゃいけなくなるんだから……。
「さあ、理解したところですぐに始めますよ」
「ハイハイ、分かりましたよ……」
ボクはガックリとうなだれながら、ラボの手術台に寝転がった。
◇
「アアモウ! ダカライヤダッタンダ!」
ボクは鏡に映る自分の姿を見て、思わず拳で鏡を叩き割った。
「ナンダヨ! ナンデボクガコンナメニ!」
「カネショウ、落ち着きなさい」
「コレガ落チ着イテイラレルカ! ボクノ……コノワシノ姿ガ、コンナニ醜クナッタノダゾ!」
そう、この儂の身体は、あの愛らしい少年の姿から、サソリの細胞を背中と尻に結合された、しわがれた老人と化していた。
「安心しなさい。アリス=ヒュブリスの修復が無事完了すれば、また『DS細胞』をあなたの身体に戻します。それも、新たに培養した『DS細胞』を」
「……本当ダロウナ?」
「ええ……“あの御方”を信用なさい」
クソ……結局、儂にできることは“あの御方”とグリフォニアの言葉を信じることだけか……。
「さて……次にアリス=ヒュブリスについてですが、今後の彼女の管理は私が行うことになりました」
「ソウカ。ソレダケハ朗報ダ」
そうとも……あの全く言うことを聞かないアリスのお守りから離れられたのは、な。
「そういうことですので、あなたの左腕に内蔵しているアリス=ヒュブリスの制御装置について、取り除かせていただきました」
「……………………ハ?」
どういうことだ!? あの装置がなければ、アリスは……!
「マ、マテ! アレヲ取ラレタラ儂ガ……!」
「何か問題でも?」
「モ、問題トイウホドデハナイガ……」
クソッ! あれがなかったら、アリスが儂に襲い掛かってきおる!
これまであの制御装置があったからこそ、あのアリスが従順であったというのに!
「まあ、あなたがアリス=ヒュブリスと良好な関係を築いているならば、なんら問題はないと思料します」
「ク……!」
忌々しい! 忌々しい奴め!
「では以上です。くれぐれも“あの御方”にご迷惑をかけないよう、よろしくお願いします」
そんな皮肉を言い残し、グリフォニアはこの場を去った。
「クソ! クソ! クソオオオオオオオオ!」
儂は悔しさと惨めさをにじませ、施設中に響くほどの声で絶叫した。
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次話は明日の夜投稿予定です!
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