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〇〇〇〇りくじょうぶ!  作者: 天笠愛雅
6/11

部活見学に

突然話し掛けられた上、自分の思惑を見透かされて驚いた。

「あ、そうです」

「なんだ、だったら言ってくれれば良かったのに」

恐らく先輩であろうその人に、あなたが変な反応をしたから言えなかったなどとは言えない。

「すみません、ちょっと緊張してて」

「いいよー、そんな大した連中いないし」

「あはは、そうですか」

「見学するの?体験?」

「今日は見させていただきます」

一応着替えは持っているが、入部するか分からない以上、一度やめた陸上をなんとなくやることは、どこか僕の中で許されざることだと感じる部分がある。

「おっけー。じゃあもうすぐ始めるから待ってて」


1分くらいで部室から練習着を着た部員が5人出てきた。

「よろしく、私は部長のゆずりはこと。君は?」

いかにも3年生の部長と言った正統派の見た目の先輩が最初に挨拶してきた。

「1年の風早琉生です。よろしくお願いします」

「よろしく。他の部員からは適当に名前聞いてね」

淡白な挨拶で、お堅い雰囲気だ。楪先輩。

「そう言えば、私の名前言ってなかったね。私は東雲しののめさくら。2年生です!」

金髪の元気で活発そうな先輩、東雲さくら先輩。

「じゃあさくら。この子の面倒見てあげて」

楪先輩は東雲先輩に、僕の面倒を見ろと指示をした。

面倒と言われると、何か子供のような感じがして恥ずかしくなる。

「あいあいさー!」

さくらは、敬礼をして部長に返事した。そしてそのまま僕の方を向き、

「面倒見るって言っても特に変わったことはやらんけどね」

と言った。


部活が始まった。

2グループに分かれて行うようだ。

動きを見れば何故そうなのか、すぐに分かる。

短距離と長距離だ。

東雲先輩は3人での短距離グループ、楪先輩は2人での長距離グループ。

部活と言うには、あまりにも少ない気がする。

そんなことを考えていると、ストレッチをしている短距離グループの内の一人が話し掛けてきた。

「ねぇ、風早くんって、あの風早くんだよね?」

「あ、多分そうです」

「どういうこと?凛」

東雲先輩が、僕に向けられた質問の意味について、凛と言うらしき子に尋ねる。

「風早くんは中学の時、関東大会とか入賞したりしてるんですよ!あ、あと私1年生だからタメで良いよ」

「げっ」

東雲先輩のストレッチのリズムが消えた。

そして、ゆっくりと僕の方を向いて、

「まじか」

と、どこから出しているのか分からない声で言った。

もう1人の部員も、ほぼ東雲先輩と同じ動きをしていて、それはなんだか面白い。

「ま、まぁそうです…けど」

「何で言ってくんなかったんだよぉ。馴れ馴れしくしてごめん!」

東雲先輩が土下座する勢いだったので、必死にそれを止める。

「いや、関係ないですって!」

「ごめんね、私が止めとく」

さっき東雲先輩と同じ反応をしていた先輩は、すっかり驚きから解けたようで、東雲先輩の制御を代わってくれた。

「私、ゆずりはりん。よろしくね」

凛が唐突に自己紹介をしてきた。

後ろでは暴れる東雲先輩と、それを僕に代わって止めるもう1人の部員。

その光景を尻目に話す楪凛は、どこか可笑おかしく思える。

そして、その凛の珍しい名字は…。

「よろしく。もしかして、部長の妹さん?」

「そう!」

「やっぱり!」

「姉妹なのにあまり似てないってよく言われるんだけど」

「あー確かにそうかも。お姉さんの方は厳しそうな方だけど。あ、そちらの方は?」

そちらの方とは、東雲先輩の動きを封じていたが、今やじゃれ合いをしている人のことだ。

たちばな光里ひかり先輩。3年生だよ」

凛が自分の紹介をしたので橘先輩は、東雲先輩をいじる手を休め、僕に向かって正座をして姿勢を正した。

「橘光里です。よろしく!」

「はい、よろしくお願いします」

「いやぁ、でもまじかよ。何で桃花なんかに来たんだよ」

東雲先輩が悠馬と同じような、いや、全く同じ質問をしてきた。

正直、この質問に答えることが、ここ最近で一番きつい。

「まぁ、色々ありまして」

「そっか」

「よし、凛、さくら、行くぞー」

年長の橘先輩が仕切り、3人はアップのジョギングを始めた。

もしかしたら橘先輩は、僕の事情をなんとなく察してくれたのかもしれない。

勝手に僕は、橘先輩のお姉さん感を感じた。

3人は、土の400メートルトラックを1周して戻って来て体操をしている。

「風早君はいつまでいるの?あ、いつまでいるのってそういう意味じゃなくて!」

凛が僕に訊いてきた。

「最後までいるつもりだけど」

「じゃあさ、今日の練習そんな多くないから終わったらどこか行こ?」

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