陸上競技部の部室に
そして、その日の放課後。
「よし、行こっか琉生」
「うん」
僕と悠馬は、とりあえず陸上部の部室に向かう。
慣れない場所に行くのは緊張するものだ。
どうってことの無い事なのになぜか心拍数が上がっている。
陸上部の部室はグラウンドの端っこにあった。
プレハブ小屋のような簡素な建物だ。
「えーっと、ノックすれば良いのかな」
僕はどうやって入っていこうか迷った。
普段部外者が入る場所ではないから余計だ。
「あーそれで良いんじゃない?」
コンコン
正確にはコンコンと、2回もノックしていない。
ノックしている最中にドアが開いたのだ。
ドアを開けたのは、金髪の女子生徒だった。
僕とその女子生徒は目が合い、お互い硬直した。
そうしていると、部室の中から、
「どしたー?」
と言う声が聞こえてきた。
「男が来た…」
目の前にいる金髪が、僕以外に聞こえないくらいの大きさで呟いた。
「え、あ、すみません!間違えました!」
僕はそう叫んで部室のドアを閉めた。
女子部室だったなんて聞いてない。
後ろにいた悠馬にそう伝える。
「どうゆうことだよ」
「いや、陸上部の部室はここしかないよ」
「だって、男が来たってビビられたって言うか…」
「それは…そうかもしれない」
「何でだよ」
「だってここ、去年まで女子高だぞ」
「え?」