第1章 Prologue
運命なんて言葉は大嫌いだった。
定めなど知らない。
決められた未来など信じない。
運命なんかに、自分の未来を決められてたまるか!
おれはずっと、そう思っていた。
だけど、間違っていたのか。
全ては決まっていたことなのか?
おれがどれだけ足掻こうと、何の意味もなかったと?
いや、そんなことがあってたまるか……!
……だけど、それなら。
これはおれのせいなのか。
おれがどこかで、何かを間違えたせいなのか?
でも、どこで? どこから?
……分からない。
おれにはもう、分からなかった。
どうすればよかったんだろう。
おれは、どうすればよかったんだ。
逃げ出せばよかったのか。
……逃げられたんだろうか?
それとも……すればよかったのか。
そうしたら、こんなことにはならなかったのか?
だけど、そんなの……!!
どうすればよかったのか、分からない。
分からないけど、戻りたい。
あのバカみたいな陽だまりに、もう一度……。
だけどもう、戻れない。
そんなことは分かってる。
どんなに願っても、戻れるわけがないことぐらい……!
それでも、考えずにはいられなかった。
どうすればよかったんだろう?
おれは、どうすればよかったんだ。
こうなる前に。
こうなってしまう前に。
そして、これから…………!
*****
夢を見ているんだと思った。
そう、これはきっと悪い夢だ。
だってあんな奴ら、いるはずがねぇ……!
全力疾走したせいで、心臓は口から飛び出しそうだ。
あいつら一体、何なんだよ……!
木立の合間から垣間見える真っ赤な瞳。
無数のそいつらがおれを見据える。しっかりバッチリ、目が合っちまう。
やば……。
次の瞬間、
ヴオアアアア!!
つんざくような大音量の咆哮。
そのまま一斉に駆けだしてくる。
嘘だろっ!?
本能が逃げろと叫んでいた。やり合ったら殺される。
だったら逃げるしかないじゃねぇか……!
どこへ、なんて分からない。
大体、ここがどこかも知らねぇ!
息の続く限り走る。それしかなかった。
――何でこんなことに。
そんなことを考える余裕なんて、ありはしない。
だけど頭ん中がぐちゃぐちゃで、ぐるぐる、ぐるぐる、記憶が無限ループしてるみてぇだ。
一体なんで、こんなめに。
その原因を必死になって探してた――。