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駄作ラノベのヒロインに転生したようです  作者: きゃる
第三章 愛人にはなりません
38/60

微かな変化 1

 いえ、どうもしませんが……


 けれど、ロディは妙なスイッチが入ってしまったらしく、なんとも言えない表情で目を細めた。彼は私の(あご)に手をかけると、整った顔を寄せてくる。鼻と鼻がぶつかった瞬間、私の顔から血の気が引く。


 ――なな、何? まさかロディ、ラノベ化したんじゃ……


 私は(はじ)かれたように席を立ち、部屋を転がり出た。ドレスのスカートを摘まみ、一目散に逃げ帰る。




 自分の部屋に戻った私は、後ろ手にドアを閉めて(つぶや)く。


「何が起こったの? 誘惑なんてしてないのに、ロディはどうして……」

「……ロディ?」


 しまったあぁぁ! 

 ここにはカリーナがいたんだ。

 両手を腰に当て、首を傾げる彼女と目が合う。ローランド王子好きの彼女を、これ以上刺激してはいけない。


「いえ、あの……」

「もう、シルヴィエラったら。今さらごまかすのはやめて。ローランド様と貴女は、昔からの知り合いなのよね?」

「……え? ええ。でも、どこでそれを……」


 私は目を丸くする。コネ採用と思われるのが嫌で、私は彼と幼なじみだということを誰にも語っていないのだ。

 カリーナは茶色い髪を片手で払うと、フンと鼻を鳴らした。淑女らしからぬ行動だけど、女官部屋での彼女はいつもこんな感じだ。


「私の情報網を()めてもらっちゃ困るわね。だって、貴女をここに連れて来たのってローランド様でしょう?」

「ええ、まあ」


 カリーナに嘘はつきたくないから、正直に答えよう。

 ただし、話せる範囲で。


「王城に女官見習いなんて職務はないから、びっくりしたのよね。シルヴィエラはよく働くのにどうして女官じゃないのかって、みんなも疑問に思っていたし」


 女官じゃなくて見習いだから、逆に目立ったってこと?


「ローランド様もひどいわ。内部調査のためかもしれないけれど、自分の恋人を女官見習いとして潜り込ませるなんてね」

「……はい? いえ、それは違うわ」

「あら、調査じゃなかったの?」

「いいえ」

「でも、二人は付き合っているんでしょう?」

「や……あの、それはちょっと……微妙?」


 恋人のフリに付き合ってはいるが、本物ではない。そのことを、ロディの許可なくカリーナに話していいのかどうか。


 結局私は、ロディと幼なじみであることと、頼み込んで女官見習いにしてもらったことを彼女に明かした。婚約の予定については、言葉を(にご)す。


「それならそうと、最初から話してくれれば良かったのに」

「ごめんなさい。幼なじみで特別扱いだなんて、言い出しにくくって」

「特別扱い? そうかしら。むしろ他人よりよく働いていたわよね。私がローランド様に憧れているから、言えなかったのではなくて?」

「う……。まあ、それもあるわ」

()()()よ。貴女、私が怒っていた理由がまだわからないの?」

「え? ローランド殿下と私が、親しくしていたからでしょう?」

「違うわ。ショックだったけど、そんなことでは怒らない。あなた達、誰がどう見ても美男美女でお似合いですもの」

「……は?」


 私はポカンと口を開けた。

 それならどうして、カリーナはずっと不機嫌だったの?


 カリーナは私を見て(あき)れたように肩を(すく)めると、大きなため息をついた。


「まったくもう、シルヴィエラったら。鈍いにもほどがあるわ」

「ご、ごめ……」

「謝ってほしいわけじゃないわ。あのね、私は貴女の口から本当のことを教えてもらいたかったの。隠すなんて水くさい。だって、私と貴女は親友でしょう?」

「……親友?」

「あらやだ。そう思っていたのは私だけ? 年下は嫌い?」

「ち、違っ……」


 私は急いで否定する。

 確かに仲は良かった。だけど、彼女が私を親友だと思ってくれていたなんて……

 胸が詰まった私は声も出ず、ただ首を横に振り続けた。


「え? ちょっと待って。シルヴィエラ、どうして泣いているの?」


 王妃様の前でも涙を流し、今またカリーナの前で泣く。ヒロインのように涙を武器にするつもりはないけれど……

 この時の私は、どうにも止められなかったのだ。


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