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あの日地球にダンジョンが出現した(~ニート × ファンタジーは最強です~)  作者: 笠鳴小雨
【第5章】海底ダンジョン攻略 編

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脳内イケボ変換推奨です

 


「よーし、それじゃあぽんの試練受けてくるわ」


「頑張れ、期待して待ってるぞ」

「ほたるん、ガンバだよ!」


 ホカホカしながら、お肌すべすべになった二人が俺を見送りに来てくれた。

 でも、この後すぐトランプを始めるんだろうけどね、俺が頑張っている間に。


『超級魔法・建御雷神(たけみかづちのかみ)


 発動ッ!


 徐々にカルナダ姉さんと健の姿が霞んでいく。


 そして、気が付いた時には俺はダンジョンとは別の場所に佇んでいた。

 白くてふわふわした地面が地平線までずっと続き、上を見上げれば雲一つない空……ん?


 もしかして?


 俺はその場で屈み、地面の白いふわふわを触ってみる。


「あれ、触れる…………綿あめみたいな地面だな、面白いな」


 もしかしてここは雲の上なんじゃないかと思ってたけど、雲を触れるわけないもんね。

 うん、勘違いだったみたいだ。


 にしても、ここはどこだろう?

 周りを見渡しても全く人影がない、というか影一つない。なのに日差しが暑く感じない不思議な感じだ。


 まあ、こういうときにやることと言えば……やっぱりあれだよな。

 ふわふわ地面に、幻想的な場所でやる定番行動。


 ボフッ、と俺はそのまま後ろに倒れ込んだ。


「おー、こりゃ凄い。まじで雲の上で寝てるみたいな感じだ」


 まあ、雲の上の感覚とか誰も知らないんだろうけど。

 何となく漫画で出てくるような、ボフッて感じの柔らかさだ。


 そして、俺はそこから………。


 ゴロゴロゴロゴロゴロっとめちゃくちゃ横に転がってみた。


「あー、超やばいこれ、めちゃくちゃ楽しいんですけど。ちぎって家に持ち帰れないかな? このふわふわでベッドとか作ったら最高だと思うんだけどなあ」


 と、呟いたその時だった。


「ええ、その通りそれで作った寝床は最高ですよ。雨川蛍、よくここまで来てくれました」


 中性的な男の美声が聞こえてきたのだった。


「うわっ!?」


 あまりに突然で、常時発動していた『守りの流水』にまったく揺らぎが無かったので、俺は思わず驚き立ち上がった。

 えっ、神にこの技って効かないのかよ。

 まじで近くに来るまで気づかなかった。


「ああ、ごめん驚かせちゃったかな? そんなつもりはなかったんだけどね」


 そう優しい美声で俺に話しかけた人物は、超絶イケメンだった。

 細マッチョに鍛えられた褐色肌の上半身には宝石があしらわれた豪華な装飾だけが飾られており、サルエルパンツのような黒いズボンを履いていた。黄金に輝いて見える金髪は外ハネが特徴のイケメンヘアとして纏め上げられており、そのキリッとした目じりがさらに彼の完成度を上げている。


 いや、彼と言うのが烏滸がましいほどに、カッコ良く神々しい。


「あなたが建御雷神様ですか? もっと日本っぽい着物とか来ている美青年かと勝手に思ってました」


「おや、もう私のことは知っている様子ですね。ミタマ様か竜田姫様のところですでに試練を受けたのですか?」


「あっ、はい。さきにミタマ様のところで試練を受けました、何かすいません」


「うん、気にしなくていいよ。私はそういうことに関しては特に興味がないからね、それと……私はやはり変に見えるかな?」


「変とは?」


「この格好さ、一応私は日本の神としても登場するけど、日本とか外国とか異世界とかそこまで区別しない性格なんですよ。だから、私は私が一番好きで着やすくて、似合う服を着ることにしているんですよ」


「ああ、なるほど……別に俺も気にしないですよ? むしろ俺は和服とかよりも、その恰好の方が建御雷神様に似合っている気がします。むしろ腐女子たちが興奮する仕上がりで、日本だと好まれると思いますよ?」


 まあ、そのイケメンフェイスに褐色肌に和服が最高っていう腐女子もいるかもだけど。

 俺はそっちのほうが好きですよ。


「それはよかった、蛍が偏見のない性格の持ち主で良かったです」


「まあ、いつもは偏見の目で見られる側なんで」


 俺はそう苦笑しつつ、返事をした。


「私も稀に下界を見るので、多少は知っていますよ。と、それよりも蛍はここに試練を受けに来たんでしたよね。長話してしまって、すいません」


「いえいえ、神様と話すとか良い体験ですよ。なにより姉さんのスパルタ指導直後に、普通の会話ができるって新鮮で気分転換になります」


 そうだよ、そうなんだよ。

 あの地獄の鬼のようなカルナダ姉さんの雑な口調に、暴力当たり前な日常からしたら……このふわふわ世界でイケメンで、口調も優しい神様との会話とかもう天国だよ。


「ふふっ」


 すると、建御雷神様が不敵な笑みを浮かべたのだった。


「……ど、どうしました?」


 何か含みのある表情だな。

 ……嫌な予感がするぞ、頼むから軽めの試練来てくれよ。


「いつ、私がスパルタではないと言いましたか? 精霊を司る者、第一印象のみで人を安直に判断してはなりませんよ?」


 オーマイゴット!!

 この世は俺に優しくするという言葉を与えてくれないようだ。

 カムバック、あの日の引きこもり生活よ。


「……覚悟はできました」


 俺がそう言った瞬間、建御雷神様の背後に黄金の円環に等間隔で配置された小さな和太鼓が出現した。

 黒、紫、藍、青、緑、黄、橙、赤の八色の不思議な文様がそれぞれ描かれていた。


「と言っても、私はミタマ様のように死んだらバイバイみたいなことはしません」


 えっ死ぬ可能性あるの?


「死にたくないです」


「それは……不可能でしょう」


 おい、この神今なんて言った!

 死なないことが不可能?

 俺は不死属性なんて持ち合わせていないぞ。


「えっと、じゃあ試練降りていいですか? まだ死ぬにはやり残したことが多いので……」


「ダメです」


「お、俺はこの聖剣エクスカリバーを解き放つまで、絶対に死なないと決めているんだ!! 頼む、神様、俺をまだ殺さないでくれ!! 男の夢は神様もよく分かっているだろ!?」


「何を勘違いしているんですか? 確かに蛍は幾度も死ぬでしょう、ですがその度に私が蘇らせますので安心して死んでください」


 今、幾度も死ぬって言ったよね?

 その度に蘇らせる?


 はい、決定です。


 この神、確実に。


 カルナダ姉さんよりスパルタ野郎でした。


「くそーっ!! 俺は逃げる!!」


 俺はその場から全力ダッシュした。

 それはもう人生最高のスタートダッシュに、人生最高の加速、人生最高の現実逃避から生み出された超スピード。


 だったはずなのだが。


「私からは逃げられませんよ?」


 ポンッ、と和太鼓の綺麗な音が響き渡った。


「アババババババババッ!?」


 その瞬間、俺の体は藍色の雷に打たれていた。


 熱い……焼けるようだ……てか、焼けてる。


 皮膚、喉、臓器、血、肉、髪、目、全てが焼けている。

 死ぬほど熱い、全身がまるで沸騰しているような感覚だ。

 あっ、感覚がなくなっていく……。


 そして、俺は死んだ。




「って、死んだ!?」


 俺は反射的に上半身を勢いよく起こし、周囲を見渡した。


 えっ、今俺って死んだの?

 夢?


 やべ、全然分かんない、頭の整理が追い付かない。


「どうですか? 死んでみた感想は」


 すると、頭上からスパルタ野郎の声が聞こえてきた。


 うわっ、さすが神様、普通に空に浮かんでる。


「殺したの間違いじゃなくて?」


「ふふっ、ですがどうでしたか? 私の藍雷の威力は悶絶するほど、絶叫したくなるほど、内側から破裂したくなるほどの苦しさでしたよね?」


「ああ、その通りだよ」


「蛍にはこの八色の雷を何度も体感し、全てを覚えてもらいます。それができたら試練合格です、その後は蛍もこの雷が使えるようになるでしょう」


 ああ、もう……最悪だよ。

 最近の俺は幸運を全て使い切り、運の谷底を彷徨っているようです。


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― 新着の感想 ―
[良い点] マゾ向けの修行ですか? マゾにされるんですか? 神の力が神ですが、地上を覗いてくれてるとなると、ではどうしてもうちょっと人類を助けてくれないのか知りたくなるところ
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