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あの日地球にダンジョンが出現した(~ニート × ファンタジーは最強です~)  作者: 笠鳴小雨
【第5章】海底ダンジョン攻略 編

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冷凍ミカンは好きですか?

 


 俺は動物たちが運んでくる果物の中でも、特に柑橘系の果物を好んで貰っていた。

 ほどよく解凍することで、冷凍ミカンのようなシャキシャキ感を残しつつ、甘酸っぱさを楽しめるからである。


 そうして最終日の今日。

 日が暮れるまで滝の上で熱のコントロールの修行を行っていた時だった。


 前触れなく目の前に神様が華麗に着地したのだった。


「お疲れ様です」


「ああ、ミタマ様か。その耳さわらせ……」


「ゴホンッ。では、改めまして。雨川蛍、冷狐の試練を合格と致します。これからも修行は怠らないように、私の子を大切にしてくださいね?」


 良かった。

 俺の考えと修行方法は間違っていなかったのか。


「もちろんだよ。それよりもここと地球って時間の流れは一緒?」


「いえ、全然違います。こちらの一週間はあちらの半日にも満たないでしょう」


 なるほど、こういうところはファンタジーのお約束なのね。

 でも、ありがたい。

 これなら健をもう少し放置しておいても大丈夫そうだ。


「じゃあさ、試練の延長をお願いしたいんだけど……」


「もちろんいいですよ。期間は?」


「あと三週間くらいかな。それぐらいあればなんとか習得できそう」


「分かりました。それではまた三週間後改めてここに来ますね」


 神様は意外に淡々とした口調で言い、ふらっとどこかに消えたのだった。


 さあ、修行の再開だ。




 ******************************




 コン、コン。


「ウググ、カカト、居るか?」


 扉をノックしてからすぐにその扉は開いた。


「んだ、蛍だっぺな。んが、見違えたっぺ、すっげぇ頑張ったんだな。ちょうど暖かいお茶を淹れたところだっぺ、上がっていくんだな」


 へへへっ、そんなに見違えたかなぁ。

 カカトは素直なやつだから、なおさら嬉しいな。


「んじゃ、お邪魔します。よお、ウググ!」


「グゥ!」


 家の中に入ると、ウググはキッチンでお茶を三人分入れている最中だった。


「って、ミタマ様もいたんだ」


「私も暇なのだ。ちなみにですが、カカトも神ですよ」


 嘘っ?!


 俺は何度も何度もミタマ様とカカトを見比べた。


 ミタマ様は確かにオーラもあり、綺麗で神様っぽいけど。

 カカトは背も小さくて、髭も髪の毛も伸びっ放しだし、カッコ良くもない。


「んだ、おらは神だ。黙っててごめんな、蛍」


 そう言いながら、カカトは俺を席に案内してくれた。


「何の神様なの? あっちなみに俺に神様とか言われてもあまりピンとこないから、敬うとかないよ、安心して」


「それは秘密だっぺ。でも、おらは神の試練を受ける者全ての下に訪れヒントを与えるのが好きなんだっぺ。人が成長するのを見るのが好きなんだな」


 ふーん……。

 って、今凄いところにいるんだな俺。

 神様二人とお茶してるよ。


「うまっ、ウググは相変わらずお茶を淹れるの上手いな、一家に一体ウググが欲しいな」


「いいっぺよ。ウググも蛍が気に入ったって言ってるっぺよ」


 えっ……いいの?


「グゥ!」


 いいんだ……。


「でも、さすがに常日頃からウググを連れて歩くのは無理だぞ?」


「大丈夫だっぺ、ウググは特殊な魔獣で、おらの友達だっぺ」


 カカトがそう言うと、ウググはみるみる小さくなっていき、小さなピアスに変化した。


「おお、これでいつでも呼び出せる的な?」


「ウグッ!」

「そうだっぺ!」


 おお、何か……俺の周りのやつら人外が多くなってきたな。

 ンパにディール、クウ、ぽん、アイ、そしてウググか。


 俺は小さくなったウググの白いピアスを耳に……。


 あっ、耳に穴空いてないや。


 そう思っていると、俺の耳に吸い込まれるようにピアスが装着されたのだった。

 おお、久しぶりのファンタジー要素だ。


「んじゃ、俺はお別れの挨拶をしに来ただけだし、このお茶飲んだら帰るよ。てことで、ありがとうカカト!」


 俺は手を差し出す。


「んだ、気にするなっぺ。蛍とはまた会えるんだな、建御雷神と竜田姫のところでまた何だな!」


 そう言って、カカトは俺の手を強く握り返してきてくれた。


「ミタマ様、頼むよ」


「分かった。では、蛍私の耳にキスを」


 キスね。

 うん。


「了解…………今、何て言った? 俺の頬ファーストキス奪ったやつが何て言った?」


「う、煩いのじゃ! 帰れ! 蛍、帰れ!!」


 ミタマ様は頬を赤らめながら、俺に向かって手を払ってきた。

 そして、俺の意識は徐々に遠のいていき、再びダンジョンへと戻ったのであった。


 キス……いらねえじゃん。




 ******************************




「ピヤァァァァァァッ!!」


 よし、行きますか。


 俺はボス部屋の扉を開いた。

 先にいるのはもちろんカメカメンのボス。


 体の中で練っていた熱エネルギーを左手に凝縮。


 すると、カメカメンが魔法を仕掛けてくる。

 水の槍が数え切れないほど発生し、俺に向かって隙間なく襲ってくる。


 ふむ、水底魔法と幻影魔法の合わせ技かな。

 五本は本物の魔法、残りは偽物ってところか。


 俺は薄く、広く体の周りに熱のエネルギーを展開する。


 そして、偽物の水の槍だけを見極め、少しづつカメカメンとの間合いを詰めていく。


 焦り出したカメカメンはどんどんと魔法が荒く、雑になっていった。


 そうして、距離が数メートルまで近づいた時、俺はついに攻撃を仕掛ける。


 熱エネルギーの爆発で瞬時にカメカメンの頭上を位置取り、その甲羅の上に手を添える。


(放熱ッ)


 カメカメンの甲羅はマグマのように溶けだし、勢いよく弾け飛んだのだった。


「ふぅ、良い感じに体に慣れてきたな」


 あの神様の世界から帰ってきた俺は、今の体と少しのずれが生じていた。

 だから、敢えて体を動かし、熱エネルギーでの戦闘を行うことで体に馴染ませようとしていたのだった。


 それともう一つ変化が起こった。


「クウ起きてるか?」


「クウッ!!」


 そう、クウがほとんど寝なくなったのだ。

 と言っても話しかけないとあまり反応しないが。


 そして……。


「よし、じゃあまた頼むよ、訓練」


「クウッ!!」


 クウは自立戦闘ができるようになったのだ。


 俺の首元からスラスラと降りると、クウのからだが数周りも大きくなり、俺とそう変わらない大きさまで成長する。

 幼かった狐が、凛々しい姿へと変化するのだ。

 その姿はまさに神獣と言われても納得できるほど、毛並みが整い、薄っすらと銀色に輝く。


 もちろん氷雪魔法は俺もクウもどちらも使える状態で、だ。


「行くぞ、クウ!!」


 俺は魔法を使わずに、熱エネルギーだけで戦闘を開始した。


 と言っても、やはり能力を使わなければ俺ではクウの相手にすらならない。


 ……。

 …………。


「やっぱり、クウ強すぎ」


「クウッ!」


 クウはえっへんと言わんばかりのドヤ顔で、地面に倒れた俺の顔を舐めてきた。


 クウの戦闘スタイルは、空駆ける氷雪使いの狐って感じだ。

 自在に空を駆けまわりながら、氷雪魔法で攻撃。

 シンプルだが、強い。


 やはり魔法やスキルとは偉大だったのだ。


 適度に動いた俺たちは、一度クウにマフラーに戻るように指示を出し、ボス部屋を後にした。

 そして、部屋の前でゲーム一式を取り出し、ゲームを起動する。


 すると、いきなり画面に現れる『大型アップデート記念、ギルドランキング戦受付開始!!』という妙に力の入れたデザインの文字。


「よし、このイベントで俺たちのギルドの名前を売ってやる!!」


 俺は再びゲーム画面へと没頭したのであった。




 ******************************




「ふぅ、これで周回終了。なんだかんだ、こっちの時間基準で9日も掛かったな」


 と言っても、こっちの時間よりもあの世界で過ごした時間の方が長かったから、あまり周回作業していたという実感はないけど。

 俺は再び自分のステータスを確認してみることにした。



【status】

 名前 ≫雨川 蛍

 称号 ≫Number 1

 スキル≫P≫超動体視力Lv.―

       早熟Lv.―

       魔法力Lv.―

       超バランス感覚Lv.―

    ≫A≫異世界鑑定Lv.max

       アイテムボックスLv.max

       幻影回避Lv.max

       造形操作Lv.max

       ハニカムシールドLv.5

 魔法 ≫水魔法Lv.max

     氷雪魔法Lv.max(共存共栄)

     電撃魔法Lv.max(共存共栄)

     秋風魔法Lv.max(共存共栄)

 装備 ≫防具精霊・冷狐 (マフラー)

     防具精霊・雷狸 (衣服:上下)

     防具精霊・紅葉烏(外套)

     魔神獣・トュルーイエティ (ピアス)



【電撃魔法】

 電撃掌打・ショット

 ディスチャージ・スパーク

 マグネティックフォース・サード(NEW)

 サンダーボルト・麒麟(NEW)

 電速・八連(NEW)

 チャージ・オーバー(NEW)

 黒雷撃・黒龍(NEW)

 黒雷落とし・黒麒麟(NEW)

 エレクトリックヒール・アドバンス(NEW)

 雷化・真槍(NEW)

 超級魔法・建御雷神(NEW)



【秋風魔法】

 初秋風・Ⅰ(NEW)

 金木犀・Ⅱ(NEW)

 金風・Ⅲ(NEW)

 秋風索漠・Ⅳ(NEW)

 黍嵐・Ⅴ(NEW)

 鷹風・Ⅵ(NEW)

 爽籟・Ⅶ(NEW)

 色無き風・Ⅷ(NEW)

 鳥風・Ⅸ(NEW)

 台風・Ⅹ(NEW)

 超級魔法・龍田姫(NEW)



 自分でもここ数日で魔法が多くなりすぎて整理できていない。

 でも、一つだけ決めている。


「電撃魔法と秋風魔法の超級魔法は……後日にしよう」


 さすがにまたあのような地獄を経験するとなると、尻込みしてしまう。

 だから、気持ちが決まってから。

 ついでにゲームのイベント後だっていいじゃないか。


 まあ、あとはこのダンジョンの攻略と同時に細かい検証はしていくつもりだ。


「よし、健と合流するか」


 俺はついに第36階層以降のダンジョンへと足を進めたのであった。




 ******************************




 近いな。

 魔獣の数が明らかに少なくなってきた。


 俺は現在、第50階層に降りてきたところだった。

 特に道中は苦戦することすらなく、地道に新魔法の検証をしながら悠々と進んできた。

 まあ、目ぼしいドロップもなかったので今はもうどうでもいいこと。


「にしても、この階層から魔獣の気配が感じないな。不気味だ」


 事前に健から貰っていたメールから推測するに、そろそろこの階層の下の51階層で休憩でも取っているはずである。

 苦戦していなければだけど。


 俺は魔獣一匹いないこの階層をゆっくりと歩く。


 と。


「着いた、着いた」


 この階層は案外、階段とボス部屋の距離が近かったな。

 10分も掛かってないくらいだった。


 何て言うこともなく。

 本当に何も考えることなく、俺はボス部屋の扉を開いた。


 目に入ってきた光景に、俺の体は震えた。


 腹に剣が突き刺さった健の後姿、その奥に見える赤いフードを被った誰か。


 俺はいつの間にか走り出していた。


「くそッ……離れろ!! 『電速』」


 瞬時にそのフードの人物の横に移動し、熱エネルギーを込めた蹴りをお見舞いしようとした。

 しかし、その人物はそれを予測したかのように、右腕一本で防御しようとしてきた。


 そこで俺は熱エネルギーを急激に膨張させ、爆発したような衝撃を蹴りに加えた。

 意表を突かれたように、その人物は吹っ飛ばされ、壁に激突したのだった。


「『ウォーターヒーリング・ダブル』……頼むから死ぬなよ、健」


 俺はすぐに健の腹から剣を抜き、回復魔法を掛ける。

 傷はすぐに塞がった。


 くそっ、なんでこうなった。


 そう思った時だった。


「はっはっはっ、いいな、お前!! 気に入ったぞ!! 私に全力をぶつけて来い!!」


 壁に激突した人物が高笑いしながら、そう言ってきたのだった。


「ほたるん……逃げて……」


 健が目を覚ました。


「大丈夫か? 苦しくないか?」


「うん、ありがとう。意識がはっきりしてきた。それよりも、あいつ強いよ」


「心配するな。それよりも下がってろ、巻き込みたくない」


「うん」


 会話中、俺の視線は常にその謎の人物に固定されていた。

 赤い外套のフードを被った、女性。


 声と体格から分かった。


「いい! いいな、お前! 名前は何と言う?」


「教えるかよ」


「それもまたいい!! だが、本気を出せ。じゃなきゃ……」


 彼女がそう言った瞬間だった、俺の目の前にフワッと赤い外套が揺らいだのだった。


「死ぬぞ、小僧」



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