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あの日地球にダンジョンが出現した(~ニート × ファンタジーは最強です~)  作者: 笠鳴小雨
【第4章】北海道奪還作戦決行 編

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命名が単純すぎるなんて野暮なこと言わないでください

 


 陸路で移動している俺たち一同は2年近く全く整備されていなく、雪も少し残る荒れた道路に苦戦しながらゆっくりと留萌に向かって進んでいた。

 俺は席を補助席に移動し、隣で運転をしている佐藤さんに声を掛ける。


「佐藤さん、今どの辺りですか?」


「もう少しで千歳に着きますよ。そこで一度休憩を取ろうかと思ってます」


 千歳か、空港あるとこだっけ。

 確か千歳って札幌と近かったよな。

 行ったことないから分からないけど。


 それに建物が多い場所の夜道を走ると、いきなり角から魔獣が出てくるなんてこともあり得る。

 一度、休んで朝まで待つのは賢明な判断だろう。


「了解です、もう暗くなってきて危険ですしね。それにティアも春田さんもすっかり夢の中ですしね」


 俺は補助席から後ろで仮眠をとっているティアと春田隊員を見て言った。


 ちなみに春田隊員とは最初に運転をしていた自衛隊員の人のことだ。

 春田健さんっていう名前らしい。

 確か32歳妻子持ちって言っていた。


 そして、俺の隣で春田さんに代わって運転をしているのはアイスゴリラと戦闘を行っていた佐藤さん。

 本名は佐藤海さんって言うらしい。

 こっちは若くて26歳独身。


 まあ、あとはティア隊員。

 魔法とスキルは優秀なのに本人自体はポンコツ。

 同い年の17か18歳。


 もう一台、後ろの車にも4人ほどいるがあまり関りがないのでよく覚えていない。


 覚えられないのも仕方がないと思う。

 地上に出てからというもの、人との関りが多すぎるのだ。

 それも初めましての人ばかり。


 そんな緩い空気感の車内とは裏腹に、外は夕日の淡い色が少なくなり、夜空になりつつある空に変わっている。

 俺はそれを眺めながらこっちに向かって走ってくる魔獣の数を頬杖を突きながら数えていた。


 一、二、三…………十五。

 初見の魔獣が十五体いるな。


 欠伸をしながら黄昏ている俺を見て、佐藤さんが声を掛けてきた。


Number1(ワン)、どうしました? そんな黄昏て」


「ふわぁ。別に黄昏てるわけではないですよ。あっちから走ってくる魔獣の数を数えてたんです」


 そう言ったと同時に、佐藤さんは急ブレーキをかけた。


「ちょっ! それは先に言ってくださいよっ!!」


「えっ、まあ………はい」


 急ブレーキで起きたのか、後ろの二人が「何だ?!」って大きな声で言っているのが聞こえる。

 そんなのお構いなしと言わんばかりに佐藤さんは俺が見ていた方向をジッと見る。


「どこに魔獣がいるんですか? 全然私には見えないのですが」


「えっいるじゃないですか。あっちから黒いカンガルーみたいなやつらが」


 俺がそう言うと、佐藤さんと春田さんは目を入念に擦り再び黒いカンガルーの方を見始める。

 すると、急ブレーキに反応して間抜け顔して飛び起きたティアが寝起きの言葉を発した。


「おっ本当っすね。黒ルーガーの反応が十五体っす。よくわかったっすね、まだかなり離れてるのに」


 へえ、あの凄いジャンプしてこっちに向かってきてる魔獣は黒ルーガーって言うのか。

 まだ、異世界鑑定の範囲外だったから分かんなかったんだよね。


 というか、この暗闇よりも黒い影が15個もぴょんぴょんと跳ねまくってたら嫌でも目に入るよ。


「私には全然見えないですね……」

「私もです……」


 ティアの言葉にそう答える佐藤さんと春田さん。


 普通の人にはあれが見えないってことはこれも俺のスキルの影響なのかな。

 だとすると、超動体視力か。

 明らかに通常の人の目は超えているということか。


「黒ルーガーって強いんですか?」


 俺は目を凝らしている佐藤さんに尋ねた。


「黒ルーガーは単体では弱いですが、群れで襲ってくるので厄介な部類に入ります。あの黒い体を活かして闇に紛れ群れで一斉に奇襲を仕掛けてきます。物理攻撃には強いですが、魔法にはめっぽう弱いと聞きます」


 なるほど。

 夜の暗殺者、カンガルー!

 って感じか。


「ありがとうございます。また佐藤さんたちがやりますか?」


「いえ、Number1(ワン)にお願いしてもいいでしょうか? 私たちでは時間が掛かってしまい、完全に暗くなる前に千歳に着けなくなりますので」


 黒ルーガーってやつはスノウゴリラより強いという評価なのか。

 よし、物は試しだ。


「いいですよ。じゃあ、窓開けますね」


 俺はそう言うと、窓を開けて右手を外に出す。

 そうして、目まぐるしくジャンプする黒ルーガーに照準を合わせる。


「トーン、ト、トーン、トーン。いや、ト、トーン、トーン、トかな」


 リズムを口にして黒ルーガーの次の動きとリズムを予測する。


「野暮な質問ですが、Number1であればどれぐらいで終わりますか? できれば最速でお願います。もうだいぶ暗くなり視界が悪くなってきているので」


 魔法を放とうとリズムを刻んでいると、隣の佐藤さんが質問してきた。


「すぐですよ。…………おっ、このリズムかな。行きます」


 俺は会話中に黒ルーガーたちが一瞬密集するタイミングを掴んだ。

 それと同時に隣から「あっはい」という声が聞こえた。


 掴んだタイミングを見計らい俺は意識を集中する。


 ここだ!


『ディスチャージ』


 指先から一瞬光が発生し、一筋の電撃が黒ルーガーたちに向かって放たれる。

 その電撃は黒ルーガーの一体目を貫くまで一直線に動き、その後は意志を持ったように次々と黒ルーガーの胴体を貫いていき、最後の個体を貫いた後すぐに消滅した。


 よし、完璧な軌道だ!


「い、一瞬………ですか」

「速い……」


 その攻撃に佐藤さんと春田さんが驚いたように反応した。

 次に同じように………ティアが反応する。


「いやー、改めてそのビリビリを近くで見ると圧巻っすね。早すぎて目で追えなかったっすよ」


 ふむ、ティアが俺を素直に褒めるんなんて素直に嬉しい。


「まあ、この技は威力よりも速さ重視の魔法だからね」


 俺のその言葉にさらに驚きを隠せないでいる両隊員。


「なるほどっす。それよりも佐藤隊員、暗くなる前に出発するっす」


「す、すまない」


 ティアの言葉に我に返った佐藤さんはすぐにエンジンをかけ出発した。


 そして、その後三十分ほどで千歳に入った。

 そのまま遮蔽物の少ない周囲の警戒がしやすい場所を見つけ宿を取ることとなった。


 他の冒険者との合流予定は2日後の朝7時。

 この調子で行けば十分に間に合う行程で順調に俺たちは留萌に向かっていた。



 ******************************



 その夜、みんなと仲良くなるためと春田隊員が持ってきていたトランプで遊んで楽しく過ごせた。

 そんな中でも佐藤隊員との水魔法トークは一番盛り上がった。


 佐藤隊員は惜しみなく訓練した水魔法の応用技を披露しコツまで教えてくれた。

 俺はその見返りとして水魔法の最後の最後に覚えることのできる禁忌と言われてもおかしくないほど強い「超級魔法・オプティカルカモフラージュ」を披露してあげた。


 俺の姿がいきなり消えてあたふたする佐藤隊員とティアの顔と言ったらそれはもう面白かった。


 その後、ティアは「かくれんぼ最強じゃないっすか」などと言っていたが、誰がこの年になって本気でかくれんぼやるんだよと思った。


 その後、二時間ごとの見張り番を決めそれぞれ体を休めるべく就寝したのであった。


 もちろん俺も見張りを行う。

 最初は断わられたが、何とか説得した。


 そして、ティアと共に見張り番をしていたときそれは起こった。

 俺達の見張り番は一番最後の朝型。


 ティアがこれでもかと大きな欠伸をした瞬間、近くの木々で寝ていた鳥たちが一斉に空に飛び立った。


「オォォォォッ!!」


 突如として聞こえた何かの雄叫び。

 その音から遅れるように伝わってきた地面の揺れ。


「うわっ、今の声なんっすか?」


 その雄叫びで目が冴えたのティア。


「多分あいつだよ」


 俺はその質問に遥か遠くにいる何かを指さした。


「………何すか、あれ。デカすぎるっす」


 ティアが「デカすぎる」と表現し、俺が指さしたあれ。

 ここから見えると雲にも届きそうなその巨大さに鍛えられた筋肉が剥き出しになっており、その背中には二対の大剣がクロスしている。

 その顔はひどく何かに怒っているような険しく、無精髭を生やしている。


「オォォォォォッ!!」


 再び地鳴りと共になるあいつの雄叫び。


「ティア………情報通りならあれは札幌にいたはずの凶悪魔獣の一体『憤怒のタルタロス』だよ」


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「まあ、あとはティア隊員。  魔法とスキルは優秀なのに本人自体はポンコツ。  同い年の17か18歳。」 ----- (42)「っす」は敬語ではないが親しみは感じるにて、 「あー確かに言…
[気になる点] 魔法とスキルは優秀なのに本人自体はポンコツ。 同い年の17か18歳。 ↑誰の事言ってるのかきちんと書いて
[良い点] 面白いです。楽しく読ませていただいています。 [気になる点] ティア隊員って湯楽隊員のことですよね?42話目で自己紹介で19っすって言っているんですが…
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