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あの日地球にダンジョンが出現した(~ニート × ファンタジーは最強です~)  作者: 笠鳴小雨
【第4章】北海道奪還作戦決行 編

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ナマエダイジ、ゼッタイ

 


 はぁ。

 それにしても…………疲れたなぁ。


 サリエス師匠との会話を思い出していると疲れがどっと襲ってきた。

 俺はその場に勢いよく寝そべり、暑苦しいお面を取る。


 すると、先ほどまでは感じなかった涼しくちょうど良い風が顔を撫でたような気がした。

 その風が俺にはこの戦闘の終了を知らせる風に感じた。


 そして、この男………。


「いいんすか? 自分の前でお面取っちゃって」


 空を見ていた俺の目を覗き込むように湯楽隊員が問いかけてきた。


 湯楽隊員のこの終始空気読まない感じはデフォルトなんだな。

 でも、人がちょっと戦いの余韻に浸ってるときは話しかけてこないで欲しいな。


 そんなことを考えながら少しジト目して返事をする。


「ん、もういいよ。湯楽さんはもうなんかいいやって感じ」


「そうっすか。それは光栄なことっすね」


「まぁ、湯楽さんはいつも通りに俺に対しては接してね。そういえば、湯楽さんって下の名前なんて言うの?」


 俺がそう聞くと湯楽隊員はそっと目を逸らした。


 え、何かまずいことでも聞いちゃったかな。

 でも、名前聞くだけでその人の闇に触れることってそうないと思うんだけど。


 そう考えていると、意を決したように湯楽隊員が口を開いた。


「……笑わないでくださいっすね」


 笑う?

 いや、笑うわけないでしょ。

 人の名前で笑うほどひどいやつではないよ。


「もちろん」


 俺がそう答えると、少し間を置いて湯楽隊員が答えた。


(ティア)…………(なみだ)と漢字で書いてティアって読むっす」


 ………。

 キラキラネームだったんだね。

 いや、というよりも英語だね。


 もちろん俺は笑ったりしない。

 というか笑う要素がどこにあるというのだ!


「ふっ。もしかして……ハーフだったり?」


「あっ今笑ったっすね!! 自分はこう見えても記憶力に自信あるっすよ!」


 何言ってるんだよ。


「…………(ティア)。ふっ」


「あー言いましたね! 言っちゃいましたね! せっかく褒めてあげようと思ってたのにっすよ!」


 ん?

 褒めてくれる予定だったの?


 俺はその言葉に反応し、寝姿から地面に座り直してから湯楽隊員に向き直った。

 いや、湯楽隊員はもうやめようか。

 涙隊員で………。。。


「ねえ、(ティア)。ごめんって。もう(ティア)って言わないから、褒めてもいいよ? というか、頑張った俺を盛大に褒めてくれ、(ティア)! 俺は褒めて伸びるタイプなんだよ。ねえ、だから褒めてよ(ティア)


「それってもうわざとっすよね。今の一言だけで四回も言ったっすよ?」


「ソンナコトナイヨ、ティア」


 涙隊員の顔を見ると笑ってしまいそうになるので、俺は誰もいない方向にぼそっと言った。

 すると、割って入るように原田隊員が涙隊員の背中を強く叩いた。


「仲良くなったようで良かった!! 湯楽隊員の代わりに俺が褒めてやろう………の前に。」


「前に?」


「助けていただき感謝する」


 そう言って、原田隊員は敬礼ではなく深く頭を下げてきた。


「いやいや、助けてもらったのはお互い様ですから頭上げてくださいよ。それにそんなの原田さんらしくないです。あっやっぱり今のなし。その姿写真撮っとこ」


 俺がそう言って瞬時にスマホを取りだし、カメラを原田隊員に向ける。

 ……というのは、嘘。


「ちょっ待ってくれ!!」


 慌てて俺を制しようとする原田隊員。

 その顔を見るためだけの嘘だったのだ!


「嘘ですよ、カメラなんて起動してないですよ。ほら」


 そう言ってスマホ画面を見せる。

 そこに映っているのは今期アニメの一押しキャラだけ。


 それを見て安堵する原田隊員に、隣で笑いを堪えている涙隊員。

 恐らく涙隊員はここで笑ったら後で訓練量増やされるとでも考えて耐えているのだろう。

 その涙隊員の顔もまた面白いんだけどね。


 そうやって、戦闘で出まくっていたアドレナリンを消化していくかのように少しの間三人で談笑した。



 ******************************



「おっと、そろそろ地上の方にも連絡しないと怒られるな。Number1、その前にいくつか答えられる範囲で構わないから答えて欲しい」


 原田隊員が談笑から急に話を真面目な方向に転換した。


 まあ、いずれ聞かれることは分かっていたから答えてあげようじゃないか。


「いいですよ」


「助かる。まず前提の疑問なんだがNumber1はいくつの魔法とスキルを持っているんだ。正直な話、自衛隊で想定していた強さを遥かに超えている。というよりも、明らかに異常なんだ」


 おっと、いきなり核心を突くような質問か。

 想定を超える………か。


「いくつ、ですか。スキルや魔法の数だけでは強さとは関係ないのでは?」


「それもそうなのだが…………」


 少し返答に困っている様子の原田隊員。

 それにそっと涙隊員が助け舟を出す。


「それは自分も思ったっす。明らかに所持できる魔法やスキルの最大可能数を超えているっす」


 最大可能数?

 魔法やスキルには限度があるってこと?


「ちょっと待って。その話自体知らないんだけど」


 俺の疑問には涙隊員がすぐに応えてくれた。


「当り前っす。日本ではごく一部の人間しか知らない話っすからね。ちょっと長くなるっすから入り口近くまで歩きながら話すっすよ」


 そうして、涙隊員から俺にとっては初めて知る事実を知らされた。


 考えてみれば当たり前のこと。

 人間にはできることとできないことがある。

 それは何故か?


 人間にはできることの限度があるからだ。

 誰もが限界値という容量が決まっている。


 人間は一つのことを覚える、または特技や達人と呼ばれる域に達するまでにはそれ相応の時間と努力が必要だ。


 例えば普通の人間が一生を使って、何かを習得し続けたとする。

 それは何でもいい、スポーツや格闘技、生け花だっていい。

 それが普通の人間の限界。


 けれども、俺がいるこの世界には「普通」でない人間もたくさん存在する。

 それはダンジョンと言う、人間の限界値を上昇させる異物。

 もちろんその中には俺も入る。


 だが、それでも限界値というものは必ず存在するのだ。

 例え異物の混入した世界と言えども「無限」は存在しない。


 そこで一つ疑問に思って欲しい。


 魔法やスキルとは何かを。

 あれは異物の中の異物。

 習得に必要な「時間」と「努力」を必要とせずに瞬間的に能力を習得できるのだ。


 それはこうも言い換えられる。

 能力を一瞬で習得する代わりに、人間の許容できる容量を大幅に使用している、と。


 そして、その魔法やスキルという異物を人間の許容量を超えて習得するとどうなるのか。

 この疑問に対して、ロシアで非人道的な人体実験が行われたらしい。


 その結果、その人物は一生起きることはなかったらしい。


 要するに、スキルや魔法を習得しすぎると「死」ということだった。


 これは俺にとっては衝撃的の一言では表せないほどの衝撃だった。

 思い返せばサリエス師匠のあの言葉。



 ******************************



『うん、でもそこまで便利な物でもないよ。制約も多いし、使用条件がかなり難しいからね。だから、もしスクロールを見つけても習得はお勧めしないよ』


『え? 別に習得するぐらいいいじゃないですか。何か減るもんでもないし』


『まあ、いずれ分かるよ』



 ******************************



 サリエス師匠はこのことを示していたんだな。

 だから無駄に容量を使うワープ系統のスキル習得はお勧めしなかったんだな。


 俺は勝手にファンタジーな物はファンタジーで片付けてたけど、それではこれからダメだって言うことになる。

 ファンタジーと言えど、ここは現実の世界で地球で起こっている変化なんだ。


 とは、言えるものの結局ファンタジーの言葉でしか表現できないものも多いんだけどね。

 だって、現実で手から水出したり雷起こしたり、刃飛ばしたりとか。

 地球上のどんな天才だって証明できないことがありすぎる。

 そんなこと知能的に…………寧ろ学校行ってなかった分頭悪い部類に入る俺が説明できるはずもない。


 ということで、これからはスキルや魔法を習得するにしても衝動で動くべからず。

 一度、考えてから動けってことになるのだ。

 やはり現実はそうゲームみたいには甘くないな。



「それで俺がいくつスキルや魔法を持っているか? っていう質問でしたよね。まあ、今後の参考にってことでそれぐらいは応えましょう。…………………ステータスオープン」


 俺は二人に見えないようにステータス画面を表示する。



【status】

 名前 ≫雨川 蛍

 称号 ≫Number 1

 スキル≫P ≫超動体視力Lv.-

       早熟Lv.-

        魔法力Lv.-

       超バランス感覚Lv.-

    ≫A ≫異世界鑑定Lv.9

       アイテムボックスLv.max

       幻影回避Lv.max

       造形操作Lv.max

       ハニカムシールドLv.3

 魔法 ≫水魔法Lv.max

     氷雪魔法Lv.17(共存共栄)

     電撃魔法Lv.12(共存共栄)

     秋風魔法Lv.6(共存共栄)

 装備 ≫防具精霊・冷狐マフラー

     防具精霊・雷狸(衣服:上下)

     防具精霊・紅葉烏(外套)



 えっと、スキルが九個で魔法が四個か。

 うん………………いや、多くね?!

 改めてみると多いな!


「えっと、スキルが九個で魔法が……」


 俺がそう言おうとすると、


「「九個?!?!」」


 二人して盛大にハモりながら驚く。

 そして、その驚きにびっくりする俺……の構図が完成した。


「いや、いきなり大きな声出さないでくださいよ。びっくりするじゃないですか」


「いやいやいや、おかしいから! 九個は違う!」


「そうっすよ! 嘘はだめっすよ!」


 二人して否定とは……。


「いや、マジだから。俺に嘘つくメリットないし。むしろ嘘つくなら数控えめに言うタイプだよ俺」


「それも……そうだな」


「それと魔法は四つある」


「「っっっ!!!」」


 Hey!

 声出してよ!


「ちなみに原田さんは?」


「お、俺は世間にステータス公開してるぞ? いや、Number1と比べると貧相な内容だけど。というか、見せるのも烏滸がましいというか………」


 原田隊員はいつもの強気な雰囲気台無しなほど弱気な姿勢を取る。


 いや、烏滸がましいとか思わないでよ。

 俺と原田さんの仲だろ?

 …………俺と原田さんの仲ってなんだろ。

 少し気の合う、かつ年上なのに年上っぽくなくて心ちょっとだけ許してる仲かな?

 そうでもない仲だな。


「いいから見せてくださいよー。今後の見識のために!」


「わ、わかったよ。でも、溜息は吐くなよ? ステータスオープン」


 そう言いながら渋々原田隊員はステータスを見せてくれた。



【status】

 名前 ≫原田(はらだ) 真司(しんじ)

 称号 ≫Number 3,054

 スキル≫P ≫冷静Lv.-

     A ≫体重操作Lv.max

        硬化LV.8

        異世界鑑定Lv.5

 魔法 ≫シールド魔法LV.6

 装備 ≫小さき盾

     ロエル製の練習着



 と、こんな感じだった。


 スキルが四つに魔法が一個。

 あんまり賢人とも変わらないくらいだなと言った印象。


 それよりも!


「原田さん、3054位ってめちゃくちゃ強いじゃないですか!! そんなに強い人だったなんて知らなかったですよ!」


「え、あっ、いや、Number1に言われると………」


「あっそういう意味で言ったんじゃないですよ! 純粋に凄いなと思ったんです!」


「おう、ありがと………」


 何か歯切れの悪い返答しか返ってこない原田隊員。


 それよりも、これくらいのステータスで世界三千番目に強い人ってことか。

 賢人のステータスよりも全体的に少しレベルが高いか


 と、考えると案外賢人の八千万位から三千位くらいはどんぐりの背比べほどしか変わないのか。

 いや、やっぱり違うな。

 俺は考えるときの基準が俺になってるからな。

 そりゃ俺のステータスと見比べたらそう思うかもだけど、他の人は違う考えを持っているかも。

 だから、決めつけは良くないな。


「原田さんはそれ以上スキルや魔法を習得する予定はないんですか?」


「魔法はまず習得しないだろうな。スキルよりも魔法の方が人間の容量を多く使うそうなんだ」


「なるほど、魔法は貴重ですし一つあるだけで強いですからね」


「そういうことだ。まあ、習得するにせよレア度の低いスキルを後一個か二個程度に留める予定だ」


「確かレア度が高いほど容量も食うんでしたよね」


「ああ、ちなみにNumber1のレア度は教えてはくれないか?」


「ええー、何かここで言ったら自慢みたいに聞こえるかもなのでやめときます」


「だよな! やっぱりNumber1は秘密主義だ!」


 原田隊員が高らかに、何が嬉しいのかそう叫ぶと上空から先ほど分かれたダンジョン攻略部隊の面々が降りてくるのが見えた。


 その中の飯尾綾人の服が汚れていることから、ダンジョンの外でも多少の戦闘があったことが分かる。

 恐らくあの白将竜が奇襲の意味も込めて数匹ほどダンジョン外にワープさせたのだろう。


 まあ、それぐらいならば外の人でもどうとでもなると確信してたから心配はしてないけど。


 それにしてもなんだろう。

 対して親しくもないはずなのに、たくさんの人の顔を見ると安心感が増すのは。


 みんなの無事な顔を見れたことで俺はこの作戦が完了したことを確信した。


 ******************************


 北海道奪還作戦、初日の奇襲作戦、作戦名「アルファ」

 日高山脈に位置するダンジョン内に生息するワイバーン及びドラゴンの掃討。


『Number1による八面六臂の活躍により、怪我人及び死者を一人も出すことなく完了』


 この朗報はすぐに日本に住む全ての住人に向けて発表されたのであった。

 その発表は日本の未来を照らす一筋の光が見えた瞬間だった。


 そして、蛍は知らなかった。

 この発表により、日本ではNumber1に関する考察や報道が過熱し、ブームが起こり始めていることを。


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