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あの日地球にダンジョンが出現した(~ニート × ファンタジーは最強です~)  作者: 笠鳴小雨
【第4章】北海道奪還作戦決行 編

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適当でも愛着は湧くものだ

 


『黒雷落とし』


 その言葉と同時にワイバーン達の上空に急激に雨雲が生まれ始める。

 雨雲の色が灰色から淀みのない黒へと変化した瞬間、極太の黒い雷が氷の防御を突き破りワイバーンの軍勢へと落ちた。


 それと同時に技による反動と魔法による衝撃波が俺を襲う。

 俺はすぐさまハニカムシールドを一枚背後に展開し、そのシールドに背中を預ける形でその反動を凌いだ。


 もし俺が中二病の真っ盛りであったら『暗黒神の裁き!!』なんて言っちゃっていたかもしれない。

 それぐらいに神々しくも感じる魔法であった。


 でも、この魔法はまだまだ終わりではない。


 俺は剣先でその極太の黒い雷を操作する。

 そして、最初の一撃を逃れた魔獣たちは再び黒雷の恐怖に襲われることとなる。


 今までは反動が怖くてこの魔法を多用してはいなかったけど、これはこれでゲームの必殺技みたいで面白いな。

 モヤモヤしたときとかに使う魔法にしよう!


 そんなゲーム感覚でこの大技を操作し、次々とワイバーンやドラゴンたちを蹂躙していく。


 と、その瞬間頭がくらっとする。

 そして、貧血のような眩暈が起こり目の前が真っ黒になり、俺はバランス感覚を失い地面に片膝をついた。


 うっ、なんだ?

 あっダメだ、体が上手く動かない…………。


 俺は手に持っていた短剣を地面に落とす。

 それと同時に精霊解放が維持できなくなり、精霊たちは普通の防具姿へと強制的に戻っていく。

 ついに片膝で体を維持するのも難しくなり、俺は力なくその場に倒れた。


 しかし、次の瞬間に俺は誰かの腕に支えられた。


「大丈夫か?」


 ああ、この声は原田さんか。

 倒れた俺を見て助けに来てくれたのかな。

 でもごめん、今声出せるほどの力入らないや。


「ダメか、湯楽隊員! ちょっとNumber1(ワン)を支えてやってくれ。恐らく魔法の使いすぎだろう。二、三分もすれば治るはずだからそれまで俺があいつらの相手して時間稼ぎする」


「了解っす! 無理は禁物っすよ!」


「わかってるよ、これでもお偉いさんの護衛を任されているくらいには戦えるからな」


 その言葉を言った後には会話が聞こえなくなった。

 もう行ったのだろう。


 それにしても魔法の使い過ぎか…………初めての経験だな。

 それほどまでにさっきの魔法はMP消費がやばかったのだろう。

 こんなときに情けない。

 MP管理のできない後衛職なんて笑われ者だな。


 おっ視界が戻ってきた。


 俺はぼやける湯楽隊員のげっそりした顔を見る。


 あっこいつ多分笑ってやがるな。

 絶対にあとでいじってくるつもりだな。

 …………その顔忘れないからな?


 そうしていると、体も徐々に動かせるようになり俺は轟音のする方に顔を向けた。

 そこでは自らの拳一つでワイバーン達と戦っている原田さんの姿があった。


 あの人の本気の戦闘姿は初めて見たけど…………普通にワイバーン相手に一対多でも戦えているじゃん。

 あーでも、防ぎきれるってだけで決め手がないのかな。

 見ているだけでも倒したワイバーンの数二体だけ。


 なるほどね、ワイバーン相手だと強さの基準が測りやすいな。


「湯楽さんありがと、もう大丈夫だよ」


「了解っす。でも、今日はもう魔法を使っちゃダメっすよ! 無理に使うとさっきよりも酷い貧血になるんで!」


「そうなのか、わかったよ。あとは武器で戦うよ」


 俺はそう言って自力で立ち上がり、アイテムボックスから一本の武器を取り出した。

 一番最初に手に入れた武器の内の一つ、「はじめての脇差」がいつの間にか変化? 進化? した「名も無き脇差」。


 俺の中では一番最初に手に入れて一番愛用していた小さな刀。

 そして、何の変哲もない「普通」が似合う武器だと思っていたが実際は非常に貴重なダンジョン産の武器らしいのだ。

 ダンジョンで武器アイテムはほとんど手に入らない代物らしい。

 もちろん魔獣の使用している武器であれば手に入れるのは容易だが、これのような魔獣からドロップしていない武器は性能の桁が違うらしい。

 その為、地球上ではダンジョン産の武器というだけで非常に価値が高い。


 それにこの俺の愛用しているはじめての脇差改め名も無き脇差はその中でも貴重な成長する武器らしい。

 要するに武器の卵、原石みたいなものだ。

 身に着けていると微量のMPを常に持ち主から吸収し続け変化していくらしい。

 卵の時点ではそこら辺の魔獣が使っているようなちんけな武器と変わらない性能だが、成長した俺のこの武器はもうそこらの武器を超えた性能を有しているらしい。


 と言っても、使い続けていた俺にとってはさほど変化がわからない。

 けれども、確かに魔獣のレベルが上がっても低レベルの魔獣と同じように使える武器は変だとは思っていた。

 そんな能力があると知ったのはつい最近のこと。


 それを知ったからなのか俺は今この武器に対して増々の愛着を抱いている。


 名も無き脇差?

 名前がないなんて可哀そうじゃないか。

 だから、俺はこの脇差に名前を付けた。


 ボンボン丸、と。


 名付けは…………うん、俺のセンスじゃ無理だった。

 だから、俺がゲームをするときに使っているキャラクター名のボンボン丸からとった。

 それだと元々愛着ある名前だから呼びやすし便利だよね。

 元々ボンボン丸って先輩がゲームの名前入力の時に適当に打って決まった名前なんだけどね。


 ということで、魔法が使えない今、ボンボン丸だけが頼りである。


 俺は原田さんに歩みより、隣に立った。


「交代です、引き付けてくれてありがとうございます」


「うわっ、いつの間に俺の横に?! びっくりした」


「あっすいません、つい癖で」


「いや、後は頼むよ」


「わかりました」


 そう会話した後すぐに原田隊員はワイバーン達を警戒しながら下がっていった。


 さて、とりあえずは…………。


 俺は攻撃してきたワイバーンを幻影回避のスキルを使用しながら回避し、すれ違いざまに次々と首を落としていく。


「今の何ですか?! やばい攻撃された! と思ったらNumber1(ワン)の姿が霧みたいになって次の瞬間にはワイバーンの首が落ちてるっすよ!」


 うるさいよ湯楽さん。

 今は無音のお面付けてるから答えられないし。


 そんなガヤもありつつ、俺はワイバーン狩りを進めていき着々とその数は減っていった。

 もうワイバーンは俺でも目視で数えられるほどに減った。


 しかし、不思議なことが一つある。

 あの風心竜以外の生き残っている十体のドラゴンが一向に手を出してこないのだ。

 ワイバーンだけを俺達にぶつけてきて、自分たちは安全距離を常に保つだけ。

 何を考えているのかさっぱり分からない。

 もし逃げたいならば逃げるチャンスはいくらでもあった。

 しかし、逃げずにただ様子をみているだけ。


 まあ、とりあえずはワイバーンを全て始末するだけだ。


 俺は目の前にいるワイバーンに向かって走っていき、尻尾の振り下ろし攻撃を敢えて背中に当たらないギリギリのところで躱し、そのまま尻尾を切り落とす。

 そして、方向を転換するための足場を天足で空中に創る。

 それを踏み台にしてそのワイバーンの首を切り落とした。


「ワイバーンはそれがラストっす!」


 おっもう終わりか。

 後はドラゴンが十体ほど。


 俺はそのままの勢いを落とさずにドラゴンに向かって走っていく。


 すると、十体のドラゴンたちが俺を囲うように陣を組み始めた。

 五体のドラゴン、それぞれ緑青黄赤茶の色を持つドラゴンを最前線に置き、その後ろに四体、黒灰薄緑肌色のドラゴン、そして一番後ろ側に白いドラゴンという陣形。


 ドラゴンたちは明らかに戦闘の意思があるようだ。


 俺はつい笑みを浮かべながら、一番近くにいる青いドラゴンへと切りかかる。

 しかし、俺の剣はドラゴンに届くことはなかった。

 突如目の前に現れた氷の壁に阻まれたのだ。

 そして後ろの灰色ドラゴンが立て続けに灰のブレスを発動し、俺の視界は灰に包まれた。

 その瞬間、灰を掻い潜るように四方八方から火やら風やらの魔法の弾幕を浴びせられる。


 俺は灰の不規則な動きを事前に観測し、自分の周りを覆うようにハニカムシールドを展開する。

 ドラゴンたちの魔法はハニカムシールドを破ることなく、衝突と同時に霧散していく。


 ハニカムシールドでドラゴンの魔法は十分に防げているようだ。

 俺が思考している間、休むことなく魔法が放たれていた。


 あのドラゴンたちは明らかに連携慣れをしているな。

 防御に阻害、そして攻撃と流れが早すぎる。


 …………魔法が使えればすぐにこの場面は打開できるんだけれど、今は使えない。

 かと言って、今のところこの剣一本で打開する案が思いつかない。


 さて、どうするか。

 この場合は厄介な後衛から倒していくのがセオリーだよな。


 俺はそう考えハニカムシールドを自分から一メートルのところに維持しつつ、一旦後方へと走っていき灰の弾幕から距離をとる。

 灰が薄くなっていき視界が確保できる場所までいくと周りには完全に俺を中心としてドラゴンの陣形が完成していた。


 こいつら完全に俺を逃がさないつもりだな。

 それに俺が後方へ移動すると予測してこの陣形を作ったのか。

 知能も高く連携の取ってくるドラゴンってか。

 厄介極まりないな。


 すると、ドラゴンたちは無傷な俺を見て傷を与えられていないと判断したのか三体のドラゴンが三方から一斉に突撃してきた。

 俺はその攻撃に対し、上にジャンプし回避する。


 しかし、その判断は間違いだった。


 突撃してきたドラゴンたちは俺の数メートル前で急停止し、魔法を発動する。

 そして俺の退路を塞ぐような形で結界のような壁を張られた。


 俺はそこまでの流れが一瞬のことで思考が止まった時、唯一の退路である上から巨大な雷が落ちてきた。

 はっとした瞬間、ハニカムシールドを頭上に張るも供給MPが足りなく、それはすぐに砕ける。


 そして、俺は思う。

 終わった、と。


 視界が雷の光に包まれる。

 これだけの魔法を食らうと痛みってないんだな。

 あーもしかしてもう俺の人生終わってたりして。

 即死だったから痛くないとかかな。


 と、思ったら眩いその光が収束していき視界が戻ってくる。


 おろ?

 なんだなんだ。

 次は本物の神様にでも会えるのかな?


 そんなことを考えていると、目の前に現れたのは見慣れたドラゴンだった。


 ん?

 あれ、ここってまだダンジョン内じゃん。

 どういうこと?


 …………あっ、そういえば電気系統の魔法効かないんだった。

 サリエス師匠に精霊所持している人には同系統の魔法効かないって教わったんだった。

 攻撃食らうことって滅多にないからすっかり忘れてた。


 ということで、ドラゴンさんも唖然としているところ悪いけど次はこっちから攻撃するね。


 俺は唯一の抜け道の上に再びジャンプして足場を一つ作り、近くにいた青いドラゴンへと刀を振り下ろす。

 ドラゴンは回避しようとしたが、腕一本を斬られた。


 俺はすかさずアイテムボックスからとあるアイテムを取り出す。



【result】

 名称 ≫繭鳥の糸

 説明 ≫繭鳥の巣から採取した白い糸。MPを通すと粘着性が生まれ、強度が増す。また長い月日所持していると思い通りに操作できるようになる……可能性がある。この糸は持ち主を選ぶ。



 これを大量に仕舞ってあるポーチを取り出し腰に巻く。

 そこから一本の糸を取り出し、ドラゴンの翼に向かって飛ばす。


 本当はMPを通さなくては粘着性は出ないのだが、この糸は少し特殊で一度MPを通せば蓄えておくことができるのだ。


 そして、思い描いた通りにドラゴンの翼に糸がくっつき俺は振り子の要領で再びドラゴンに接近する。

 翼を引っ張られバランスを崩したドラゴンに俺は刀を振り抜き片方の翼を斬った。


 片翼を失ったドラゴンは重力のまま地面に落下していく。

 俺はそれに続くように落ちていき止めを刺そうとするが、それを他のドラゴンの牽制攻撃によって阻止された。

 ハニカムシールドを展開したことでダメージは受けていないが衝撃で飛ばされて、ようやく希望の見えた止めを刺せなかった。


 そして、着地と同時に俺は目を疑った。

 先程片翼を斬ったドラゴンの翼が再生していたのだ。


 その原因はすぐに分かった。

 一番後方にいる白いドラゴンだった。



【status】

 種族 ≫白将竜

 称号 ≫竜将軍

 レベル≫988

 スキル≫フライLv.max

     光尾Lv.m5

     真硬化Lv.m4

     物理耐性Lv.5

     統率Lv.max

     知能強化Lv.max

     眷属リンクLv.5

 魔法 ≫白光魔法Lv.max

     竜光魔法Lv.max

     再生魔法Lv.5



 このドラゴン、他のドラゴンと違うのは知能強化のスキルと再生魔法を持っていることだ。

 これだけ連携が取れているのもこいつがいるからと考えていいだろう。


 ということは、こいつを先にどうにかしないことにはここにいるドラゴンは一体も倒せないということになる。

 なんと厄介この上ないのだろうか。

 ここまで来ると強さは抜きにして俺が魔法を使えない状態を考慮すると一番厄介な相手だろう。


 とは言っても、あいつに攻撃しようとするとどうせまた邪魔が入る。

 かと言って、こいつらはゾンビみたいなもので倒す方法が思いつかない。

 即死させればどうにかできるとは思うが、魔法が使えない今連携の取ってくるドラゴン相手に頭を切り落とすことも容易ではない。


 はて、どうしたものか。


 俺はそうこうしている間も常に攻撃を仕掛けてくるドラゴンたちをいなしながら考える。


「打つ手なしっすか?」


 突然、この数時間ずっと聞いてきた自称敬語と語る人の声が聞こえてきた。


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