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あの日地球にダンジョンが出現した(~ニート × ファンタジーは最強です~)  作者: 笠鳴小雨
【第4章】北海道奪還作戦決行 編

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前例がない?作るものだ!

 


 そのダンジョンのゲートの見た目はただのゲートであり、そのまま奥が丸見えの置物みたいなものだった。

 しかし、そのゲートに足を踏み入れた瞬間世界が変わった、景色が変わった、空気が変わった。


 ダンジョンの中は眩しい光が差し込む青空広がる大草原の上空。

 そこを自由落下していく俺と同じ部隊の人たち。

 これはダンジョンに入る際に起こる特有の現象。


 俺は三度目の経験のためもちろんだが、他の人たちもこの落下現象は慣れている。

 むしろ他の人の方が慣れているようだ。

 そのため、誰も焦らない。

 それは皆一様に知っているからだ、この後に物理法則を無視した着地を行うことを。


 そして、俺達二部隊二十名は無事にそのダンジョンの土地に降り立ったのである。


 まず俺は着地と同時に地面を触り始めた。


「予想通りですが、ここは至って普通の草原ですね。土の匂いも草の匂いもよく俺の知っている匂いで、感触も一緒です。強いて言うならば少し硬めの地面ですね」


 俺は感じたことを淡々と全員に話していった。

 すると、ダンジョンの入り口前とは打って変わってキリッとした顔持ちで、らしからぬ雰囲気を醸し出している原田さんが口を開けた。


「湯楽隊員、索敵を頼む」


「もうやってるっす。けど、自分の索敵範囲内に反応は一つもないっすね。それに見渡す限り木と草と土だけっす」


 そう言った湯楽隊員は魔法を使用しているとき特有の現象なのか、その目の虹彩と瞳孔は日本人でよく見る黒や茶色ではなく黄色に光り輝いていた。


 なるほど、これだと敵を目の前にして安易に使えない魔法だな。

 俺のようにお面などを使って隠したほうがより良いと思うのに。

 勿体ない使い方だな。


 それにしてもどこに行けばいいか分からない以上気軽にここから動けない。

 別に俺一人だったら適当に歩いて行っただろうが、今は他の人も一緒だしな。


 集団行動は大事だが面倒くさい。

 こんなにも説得力のあることを言えるのは元ニートの俺ならではだな。


「加山さん、今までにこういったダンジョンは確認されてますか?」


 俺は考え込んでいた加山上官に前例がないかを尋ねた。

 しかし、一向にその考え込む態勢から動かない加山上官。

 脳内検索でも掛けているのだろうか。


 俺がもう一度声を掛けようとした瞬間、加山上官は顔を上げた。


Number1(ワン)、何も案がなければ私が提案してもいいでしょうか」


 加山上官は今までになく真剣な顔で聞いてきた。


「まあ、一応ありますが先に加山さんの案を聞かせてください」


 そう、意外だろうが俺はどうでもいいことを考えながらも打開案をずっと考えていたのだ。

 凄腕ゲーマーには脳が二つあるなんて昔俺が賢人に言った覚えがある。

 凄腕の後衛職になろうものならば複数のことを同時に管理するリアルスキルが必須だからな。


 と、そんなどうでもいいことは置いておいて全員に話を聞いてもらうために一か所に纏まってもらった。


「まず私の知る限り道しるべのないダンジョンはありません。このダンジョンが初の事例になります。ここで私が提案するのは、ここに陣営を築きワイバーンたちをここで迎え撃つ方法です。ワイバーンたちの帰還日数は約1日なので、1日もここで待っていたら自ずとあちらからこの入り口に来るでしょう。それらが全て片付いたら、あとは簡単。ワイバーン達が来た方向に全員で向かう、といった作戦です。どうでしょうかNumber1(ワン)


 俺は話を振られたが、その作戦に首を横に振った。


「まず前提なのですが、ワイバーン達がこの入り口に戻ってくるという根拠はありますか?」


 俺は加山上官に聞き返した。


「いえ……ありません、あくまで可能性の一つです」


 そう言って加山上官は申し訳なさそうな顔をした。


「いえ、ただ自分の経験上その可能性は低いと考えています。俺はダンジョンを制覇した後は転移で地上にひとっ飛びでした。なので、このダンジョンでもそういった機能がある可能性は高いでしょう。となると、ワイバーンの大群がここに来るとは限らないという話になります」


「なるほど、ダンジョン攻略後は転移で地上に出られるのですか。それは初耳です」


 加山上官とその他の隊員たちも納得するように頷いた。


「じゃあ、ここからは俺の考えている案を話します。と言っても加山上官の作戦に補足するような作戦ですが。現状、ワイバーンの軍勢に一人で対抗できる人は俺と(じん)さん、そして淡谷(あわや)さんの三人だけです。この三人を俺、そして神さんと淡谷さんといった具合に分けてダンジョン内とダンジョン入り口前で待機しましょう。ワイバーンは確実にあのゲートからは出てくることは事前調査で分かっているので、これならば加山上官の作戦が外れてもどちらか一部隊は対応できることになります。正直、ワイバーンの掃討作戦は俺頼みであることは理解していますので、俺の方が当たれば良し、外れればアイテムですぐに合流すれば良しだと思うんですよ。どうでしょうか?」


 俺は加山上官の作戦に補足する形で自分の考えた作戦を伝えた。


 神さんと淡谷さんの強さは事前に見せてもらい把握している。

 全てのワイバーンを抑えることはできないまでも、俺が来るまでの数分の足止めなら彼らならば容易だろう。

 それぐらいの強さは持っている二人だ。

 さすが俺が地上に戻るまで日本で一番と二番を背負っていた人たちだ。


 すると、加山上官が口を開いた。


「申し訳ない……私たちに力がないばかりに。神くんと淡谷くんはその作戦でもいいかな? 私はその作戦に賛成だよ」


「問題ない」


 加山上官の問いに最初に答えたのは神さんだった。


 神竜也(じんたつや)

 かつて日本内でランキング一位だった寡黙な男。

 その男は戦う時に笑う………なんていう見出し記事を見たことがある。


 実際に見ると確かに寡黙な男だが、普通に美青年。

 というか、ハーフっぽい。

 短髪で金色の髪をしているが、顔は日本人の血が濃いタイプの若干関わりたくない感じの見た目。

 だけれども、いつも周りをよく見ており誰かが困っていたら率先して手伝うし、何か落ち込んでいれば話し相手にもなってくれる。

 外見もイケメンで内面もイケメン。

 ゲームの相談に乗ってくれた時は危うく惚れかけるところだった。


「まあ、いいですよ。別に俺は経験値貰えれば文句はないです、スクロールが出れば尚よしですよ」


 次に答えたのは俺を除けば日本で二番目に強い人、淡谷小太郎。

 こいつは俺とほぼ変わらない年齢らしいがそうとは思えないほど何を考えているか分からない人。

 常に何かを考えている頭のいい人、たぶん。


 けれども、強さに文句は言えなかった。

 効率的で実にスマートな戦い方。


 日本には神派や淡谷派なんて言われるほど人気が高いらしいが、俺は断然に神派だね。


 とりあえず、二人の了解が得られたことなのでどちらがダンジョンの外に出るか決めるか。


「じゃあ、どっちに来るかもわからないので、ここはコイントスで決めましょうか!」


 俺はアイテムボックスから五百円玉を取り出し、手のひらに載せて見せた。


 しかし、周りの反応があまり良くない。


 なんだよ!

 ここには遊びに来てるんじゃないって言いたいのかよ!

 いいじゃないか、こんな時ぐらいしかこういう運ゲーみたいなことできないんだからさ!


 ということで、Number1(ワン)の我儘権限ということでコイントスで決めます。

 強制です。


 俺はそんな視線など気にせずにコインを親指の爪で飛ばし、手の甲でキャッチする。


「表ならばダンジョンの外、裏ならばここに留まるってことで、神さんどうしますか? 神さんが開くか、俺が開くか」


 俺は神さんに聞くもただじっと俺の手を見つめる神さん。


「ちなみに俺は動体視力を強化するスキルを持っているのでこのコインが表か裏かは知ってます、全部見えていましたので」


 そう言って俺は笑みを浮かべた。


 いやー、こういうのがしてみたかったんだよね。

 普通はコインが裏か表かなんかよーく観察してもわかるもんじゃないけど、俺だけは見えてたよ! 的な奴を。

 実際に俺はこのコインが表か裏かがわかっている。


 そうしてニヤニヤしながら神さんを見ているとついに口を開いた。


「俺が開く」


 俺はその回答を聞いた瞬間、その手を開かずに言った。


「コインは…………表でした! 神さんと淡谷さんの部隊は地上にアイテムを使って帰還してください!」


「見せろ」


「あっそう言えばまだ開いてませんでしたね。どうぞ!」


 そう言って、手の甲に乗ったコインをみんなに見せた。

 その手の甲には空を向く桐の絵に入った五百円玉の姿があった。


「確かに表だな。外へ行く」


「ちなみにですが、地上に行くのは全員です。こっちには俺一人いれば十分なので!」


 俺がそう言うと加山上官が口を挟んできた。


「いや、それだけはさすがに困るよ。せめて湯楽隊員だけでも残していく」


 そうして俺の茶番劇は終了し、このダンジョン内には俺だけが残った。

 いや、湯楽隊員もいたんだったな。



 ******************************



 その日の夜、俺は焚火を湯楽隊員と囲っていた。


「ディードナルドのハンバーガーでも食べますか?」


「そんなのあるんっすか? さすがにアイテムボックス持ちのダンジョン攻略はリッチっすねえ。ありがたく頂きますっす」


 ダンジョン内なのに綺麗な星空が浮かんでいるこの空をぼーっと眺めていた湯楽隊員がゆっくりと起き上がり、渡したハンバーガーを受け取った。


「あっご一緒にポテトもいかがですか?」


 俺は笑顔100%の店員風にポテトを渡した。


「じゃあ、それも貰うっす。なんかこんなにも安全で美味しいダンジョンって罪を犯している気分になるっすね」


「それは罪なほど美味しいこれを作る人たちに言うことだな」


 そんな今から大量の魔獣に襲われる人たちとは思えないような気の抜けた会話を続けていた。

 と、焚火を囲んでから初めて湯楽隊員から口を開いた。


「そういえばなんでさっきのコイントスの時に細工なんてしたんっすか?」


「ギクッ!!」


「それをリアルで言う人初めて見たっすよ」


「小説や漫画じゃないんだから自分で言うしかないかなって。たぶんこの世界が漫画だったら今頃俺の背景は「ギクッ」ってカタカナで大きく表示されてっるはず」


Number1(ワン)は多分アニメや漫画の見過ぎっす。そんなこと考える人は普通いないっすよ」


「まあ、そんな気にするなよ。それに折角こんな綺麗な場所で焚火してるんだ、静かにしようじゃないか」


「あっこの流れは話をすり替えようとしてるっすね! 無駄っすよ。自分は偽物っすけど、索敵魔法の使い手ですよ。小さな魔法でも魔法を使ったらすぐにわかりますよ、あの時に何の魔法を使ったかまでは知識不足で分かりませんでしたが」


 くっ、妙に鋭い奴だな。

 意外とアホっぽいから話のすり替えができると思ったのに。

 でも、まあ……目的は達成しているからいいか。


「今から言うことはトップシークレットですよ」


「わかったっす! 代わりに自分も秘密を一つ教えるのでそれでトントンっす!」


 どうせご飯の量をこっそり減らしてもらってるとか、訓練量をちょろまかしてるとかなんだろうな。


「まあ、それでいいよ」


「了解っす。まずはNumber1(ワン)の秘密から話すっす!」


「いや、トップシークレットとか言ったけど別に隠してるわけじゃないんだ。単純なことだけど周りに人がいる環境が邪魔だった。それだと本気を出せないってだけだよ」


「なるほど! そういうことっすか! これで今まで感じていた違和感の意味が分かった気がするっす」


「違和感?」


「そうっす! ここからはトップシークレットっすよ?」


 湯楽隊員はそう言って、俺の真似をしてきた。


 それに意外と湯楽隊員の秘密ってのも面白いものかもしれないな。


「わかったよ」


「約束っす!」


「おう」


 そう言って何故か小指を差し出されたので、俺はそれを受け取り日本特有の針千本を約束破ったら飲まされる中々に非道な約束をさせられた。


「実はっすね、自衛隊も自分の持っている能力は遠隔魔法だけと勘違いしてるんっす。でも、本当は『別世界の瞳(アナザーアイ)』って言う結構レアなスキルを持ってるんすよ」


「別世界の瞳?」


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