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あの日地球にダンジョンが出現した(~ニート × ファンタジーは最強です~)  作者: 笠鳴小雨
【第4章】北海道奪還作戦決行 編

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それではみなさん頑張りましょう

 


 日高山脈に向かうヘリコプター内で。

 一人の自衛隊員が口を開いた。


「改めまして、私は自衛隊ダンジョン対策機関上官であり、この隊の指揮を預かっている加山孝太郎です。新選事務所の飯尾綾人さん、権田孝さん、金井彩夏さん、飼葉鈴菜さん、相羽事務所の相羽瞭さん、相羽才さん、それにNumber1(ワン)。最後に大野木隊員、麻生隊員。これから長い間任務を共にできることを誇りに思います。と、前置きはここまでにして後20分で目標地点に到着しますが、それまで簡単に作戦の確認をしたいと思います」


 俺の組み込まれたこの隊は当作戦における最重要部隊として位置づけられ、少数精鋭の10名のみで構成された。

 自衛隊のダンジョン対策機関に所属している3人は機関の中でも五本の指に入るほどの強者であり、様々な状況にも対応できるスキルや魔法を所持している者が選ばれている。

 俺を除くダンジョン冒険者の6人はチームメイトとの連携面とスキルや魔法を評価されてこの部隊に配属されている。

 その為、日本にいるダンジョン冒険者の中では一、二を争う程強いというわけでもない。

 しかし、この部隊は当作戦における最強の部隊だ。

 その理由はもちろんランキング1位の称号を所持している俺自身である。

 この部隊の指揮は形式上ここで一番偉い加山上官であるが、実質は俺を頂点とし他の人たちは俺の指示で動く予定だ。


 加山上官によって作戦アルファの簡単なおさらいが終わった。


「と、いうことでこれからの指示は全てNumber1(ワン)に委託しますのでよろしくお願いします」


「わかりました。と、言っても今は特に言うことはないので目的地に着くまでゆっくりしましょうか。あんまり考え過ぎず気楽にいきましょう」


 俺はそう言って窓から薄っすらと見えてきた北海道の大地を眺めた。

 みんなも各々色々なことをして精神を統一していたり、音楽を口ずさみ志気を上げている者もいた。


 すると、加山上官が


「みなさん目的地が見えてきました。あそこの山の中腹に見える大きなゲートがダンジョンの入り口です」


 加山上官が指さした方向を確認すると、そこには事前に資料で確認した通りのダンジョンの入り口が見えた。


 山に生えている木々の一部がくりぬかれたように何も生えていない場所に木々よりも少し高くそびえ立つフランスの凱旋門のようなゲートがそこには鎮座していた。


 あれが北海道を混乱に導いた元凶のダンジョン。


 いつもならあの周りにはもっと多くのワイバーンが見張りのようなことをしているらしいが、定期的にそれは二体に減少するらしい。

 それは北海道の各地に散らばったワイバーンが一堂にこのダンジョンに帰還する、その周期だけ。

 その為、上空から接近しやすい今日という絶好機を狙ったのだ。


 俺は作戦を実行するために安全シートベルトを外した。


「それでは行ってきますね」


 俺がそう言うと同時に大野木隊員がヘリコプターのドアを開けてくれた。


「お気をつけて」


 大野木隊員がそう言ってくれた。

 俺は笑みで返答し、何もない空へと身を投げ出した。


 俺の体は重力に任せてどんどんと加速し地面に向かっていく。


 この落下感……ダンジョンの入り口と同じだ。

 けれども、今回はあの物理法則を無視するあの謎の着地はない。

 今回は自分の力のみでこの落下をクリアする必要があるのだ。


 指輪として俺の指に収まっているアイをコツンと指で突き、合図を出す。

 それで起きたアイは防具化し、身に纏い始め、俺は飛行できない翼を得た。


 それを軽く操作し、空気抵抗を高めて若干の減速を図る。

 加えてこれだけの風を身に受けているため、ある程度であれば進行方向を定めることができた。


 これは事前の訓練で実証済みである。

 この翼は飛ぶことに使えなくとも、上空から落ちる際の進行方向ぐらいは定めることができる。


 そうして俺は二体のワイバーンが守っているダンジョンの入り口へと自分の体の舵をきった。

 そのまま進んで行くと一体のワイバーンが俺の存在に気が付いた。

 その巨体をゆっくりと起こし、その大きな翼を一仰ぎすることで空を飛び、俺の方向へと加速してきた。

 もう一体のワイバーンは一体いれば十分と判断したのかそのまま翼を折り畳み眠るように縮こまった。


 それを確認した俺は一度その場に天足の効果で足場を作り、上空に立った。


 あいつら今まで強者を見てこなかったから俺を舐めているのだろうか。

 可哀そうなことに。

 俺はその弱者には当てはまらないよ。


 ここから地上までは4km以内だな。


 俺は手を銃の形にし、ワイバーンに照準を合わせる。


『ディスチャージ』


 指から放たれた紫色の雷は加速しているワイバーンの頭を貫いた。

 その電撃はそのまま消滅せずに、地上で怠惰に寝そべっているワイバーンの頭蓋骨をも貫通した。


 ワイバーン達はそのまま痛みを感じることも電撃を認識することもなくそのまま光の粒子となり空中に消えていった。


 消滅を確認した俺は再び地面に向かって落下を始めた。

 もう一度だけ足場を作成し、ワンクッション置いてから俺は地上へと無事に着地したのであった。


 着地した場所に鎮座している巨大なゲートを俺は見上げる。


「上から見たらあんまり大きさ分かんなかったけど、これかなりデカいな」


 少しそのゲートに圧倒されていた。

 これだけ大きいゲートならば一度に何十体も通ることが可能だろう。

 さすがワイバーンやドラゴンの生息するダンジョンというところかな。


 おっと、感心している場合じゃないな。

 他にワイバーンが潜んでいないか確認しないと。


 俺はゲートがある場所を中心に周辺の確認を行う。

 と、言ってもあれだけ大きな巨体であれば少し動くだけでわかるだろう。

 そうして周りを確認をするもやはりこの周辺にはもうワイバーンや他の魔獣は潜んでいない様子だった。


 俺は耳に手を当てて通信機のボタンを押す。


「こちらNumber1(ワン)、見張りワイバーンの討伐完了、周囲に他の魔獣は確認されていません」


 そう無線で伝えると、少しおいて返事が返ってきた。


「こちら加山、了解しました。すぐにそちらに向かいます」


 加山上官がそれだけ言うと無線の通信が切れた。

 あとは皆がここに無事到着するまでここで警戒しているか。


 そう考えアイテムボックスから枕を取り出し、ゲートの前で寝そべりながら綺麗な空を眺め待機していた。



 ******************************



 一方、蛍のいなくなったヘリコプター内で……。


「……行ったな。本当にヘリから飛び降りていったよ。……俺もうダンジョン冒険者止めようかな」


 同じ冒険者の飯尾綾人がNumber1の遠ざかる背中を見ながら呟いた。

 ここにいる多くの人がその言葉に同意と哀れな目をした。

 しかし、その言葉に反論するように大野木隊員だけが反応した。


「綾人さん、それはまだ時期尚早な判断だと思いますよ」


 大野木隊員はヘリコプターの扉を締めながら答え、そのまま席に再び着いた。


「本当にそうですかね?」


「ええ、私は彼と模擬戦をしたので実感しましたが、彼は別に人間を止めているわけではありません。彼は私たちより数段上の領域にいるだけであり、いずれ私たちでも手の届く可能性のある領域にいると感じました」


「……それは俺のような普通の冒険者にも可能だと?」


「綾人さんが普通のダンジョン冒険者ならば私たちは普通以下の存在になってしまいますよ」


 大野木隊員はそうフッと自嘲するように言った。


「そんなつもりで言ったつもりはなかったんですが……その、すいません」


「いえいえ、力関係はこの作戦に参加している者ならば理解しています。それにあの模擬戦から私は毎日思うんです。Number1(ワン)の領域に一番に届く人は恐らくこの作戦に参加しているダンジョン冒険者の誰か。その次には私もいずれその領域に足を踏み入れることができるのだろうか、と」


 大野木隊員は蛍との模擬戦で自分の現在地を確認するだけでなく、蛍と同等の力を手にすることを望むようになった。

 しかし、大野木隊員もバカではない。

 現状、日本において圧倒的に強いのは自分たちでダンジョン冒険者の事務所を立ち上げた彼らであり、機関に所属する自分は二番煎じであることを。


「なるほど、実際に戦った大野木さんがそう言うならば信じてもう少しだけ頑張ってみます」


 綾人がそう言うと、みんなの無線に信号が入った。


『こちらNumber1(ワン)、見張りのワイバーンの討伐完了、周囲に他の魔獣は確認されていません』


 そう任務の結果だけを淡々と語るNumer1からの無線だった。

 その無線を聞いた者たちはみんな一瞬だけ硬直した。

 それもそのはずだった。

 作戦ではこの段階で五分は掛かる予定であった。

 しかし、その無線が入ったのはNumber1がヘリコプターを降りてから一分経ったか経っていないかという短い時間しか過ぎていなかったからだ。


 加山上官は慌てて、無線でNumber1に返答する。


「こちら加山、了解しました。すぐにそちらに向かいます」


 そう言うと、加山上官は席を立ち扉を開けた。


「みなさん少し予定よりもゆっくりする時間はありませんでしたが任務を開始します。それでは予定通りの順番に降りてください」


 その言葉にすぐに反応したのは自衛隊員である大野木隊員と麻生隊員であった。

 少し遅れてダンジョン冒険者の面々が行動に移した。


 この差は任務の経験値の差であろうか。

 そのことを理解したダンジョン冒険者たちは、作戦中は絶対に自衛隊の指示に従おうと決心したのであった。


 その後、訓練通りに作戦参加者たちはヘリコプターを降り、パラシュートで目的地へと無事に到着した。


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