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あの日地球にダンジョンが出現した(~ニート × ファンタジーは最強です~)  作者: 笠鳴小雨
【第3章】東京 編

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トーストに何を付ける?

 


 俺、秋川賢人の日常は朝のブルーベリージャムトーストから始まる。


 朝起きて、シャワーを浴びて身だしなみを整えてから制服を着る。

 その後、好物のブルーベリージャムをできたてのトーストにたっぷりと塗り頬張る。

 歯を磨き、ニュースで天気予報を見てから学校へと向かう。

 規定の6科目の授業を受け、放課後はクラスメイトが部活に向かう中、俺は蛍の家へと運動がてら自転車で向かう。

 そこで緩く仕事をこなしていく。


 内容はそれほど難しくないし、忙しくもない。


 蛍から預かっているアイテムを一つ一つ丁寧に確認するだけだ。


 異世界鑑定をかけ、動作確認できるものは自分で確認し、できないものは鑑定だけ。

 その時に2枚から4枚ほどの写真を撮影し、動作確認できるものは動画を撮る。

 それをダンジョン対策機関のアイテム管理局に書類とデータを提出し、アイテムも同時に倉庫に預ける。

 すると、それが自衛隊管理のサイト上にアップされ売りに出される。

 買い手の優先権は対策機関にあるが、最終決定権は事務所に帰する。

 そのため誰に売るかの裁量はうちの事務所が有するのだ。

 アイテムが売れれば事務所の口座にお金が振り込まれ、配送は全て自衛隊が管理する。

 このアイテム売買システムを利用するにあたり年間の契約金として毎年一定額を払うのだ。これが日本では一番安全な方法だ。

 俺たちの事務所もこのアイテム売買システムを利用しアイテムを売り捌き、収入源としている。

 一応、蛍はアイテムとは別に自衛隊との契約で毎月多少の給料は貰えるそうだが、それは全てひよりちゃんのために貯金しているそうだ。

 案外まめな奴だよな。


 このように今行っている主な仕事はたったのこれだけだ。


 ただし、現状でもこの事務所のチームは冒険者の蛍に、ベース管理者の俺、最後に蛍の我儘に応えるための機械部門担当の雪葉先輩の3人だけなのだ。

 蛍は元から貧乏性でお金を使わないし、俺も今は親と生活しているためそこまでお金を必要としていない。

 雪葉先輩は色々な素材や機材を購入するために一定額は使ってるがそれでも余裕がある。

 なので、そこまで仕事を焦る必要もなく、俺のペースでゆっくりと仕事をしている。


 それにアイテムの売買は現在の市場を鑑みて、俺はアイテムの申請を行っている。

 蛍が持っていたアイテムの半分近くは市場に出ているアイテムと比べて強力すぎるのだ。

 これをそのまま市場に出してしまえば、これらのアイテム価格が高騰しすぎて混乱を招く恐れがある。

 その為、そういったアイテムは自衛隊にのみ売るか、俺か蛍の手元に残しておくことにしている。


 俺が所持しているアイテムは蛍の所持していた全アイテムの1/3ほどに過ぎない。

 もし蛍のアイテムを全て売りに出したら億万長者も夢ではないのだろうが、俺達はそれを望んでいない。

 無駄に敵を多くしたくはないからね。


 このような感じでNumber1がいる事務所にも関わらず細々とした経営となっている。

 まあ、俺たちにとってはこれぐらいの緩い感じでちょうどいいのだ。


 そんな感じで仕事をこなしていると、勧誘した日以来初めて雪葉先輩が蛍の家に来た。

 先輩は俺が自分用にコーディネートした部屋にあるソファに座ってもらった。


「それでチームに入ってくれるかどうか考えてくれましたか先輩?」


「決めたわ、チームに入ることに。元々私は技術者か研究者志望だったから自分専用の作業場を貰えるというならば私にとって悪くない話かなって」


「良かったです! これで手の回らなかった部分に手が回ります。それで作業場の場所に希望はあります? 俺的にはこのマンションの地下の一部屋を確保しているのでそこでいいならば助かるのですが」


「ここ? こんないい場所に作ってくれるなら願ったり叶ったりだわ。でも……家から少し遠いわね。恥ずかしながらうちはそんなに裕福な家庭じゃないから……ね」


 そう先輩は苦笑いしてきた。


「何言ってるんすか? 先輩はうちのチームに入るんですよ。お金のことなんて考えなくて大丈夫です。仮にも蛍は1年半近くもダンジョンに籠って攻略し続けてきたんですよ? だからダンジョン冒険者の収入源となるアイテムは大量に、それも高品質な物を持ってるんですよ、それも無駄なくらい」


 その後色々と話を詰めてから先輩は正式に俺達のチームに入ることとなった。



******************************



 それから数日後。


 今日は北海道奪還作戦の打ち合わせのために自衛隊基地へと行く予定……のはずだった。


「連絡が取れない!」


 俺は切実に嘆いた。

 蛍には打ち合わせ日をしっかりと連絡したのだが、昨日も今日も一切連絡が取れないのだ。

 もうすぐ迎えの車が来てしまう。


 最初は焦りと怒りが大部分を支配していた。

 しかし、徐々にそれは心配へと変わっていった。


 俺はダンジョンに入ったことがあるわけではないが、魔獣の恐ろしさは理解しているつもりだ。

 1年以上も魔獣が我が物顔で歩き回る場所でサバイバルをし続け、魔獣と毎日のように戦う過酷な生活を経験してきた。

 それを考えると、蛍に何か起こってしまったのではないかと思えてきたのだ。


 そのせいか落ち着かずに部屋をウロウロとしていると、予定通りに迎えの自衛隊員が到着し、このままでは俺一人で行かざるを得なくなってしまうだろう。

 一先ず俺は自衛隊員に蛍が帰ってきていない現状を説明し、工藤さんに連絡してもらえるようにお願いした。

 対応はすぐに取ってくれて、とりあえずは俺だけでも参加して欲しいということになった。


 それから俺は一人で奪還作戦の打ち合わせへと参加することになったのであった。

 いや、なってしまったのである。



 ********************************



 俺は自衛隊員の方に連れられてとある基地へと来ていた。

 案内の後に続き通路を歩いるととあるドアの前へと着いた。


 俺はこの時場違いだなと思っていた。

 蛍ほどの実力があるならばこういった対応は納得できるのだが、俺はただの管理者でしかないからね。


「秋川様、こちらの部屋へどうぞ」


 案内役の自衛隊の方がその扉を開けるとその室内には長机が長方形に並べられた会議室があった。

 そこに座っているのは対策機関と自衛隊の人たちと日本屈指のダンジョン冒険者たち。


 扉が開くと同時に鋭い視線が一気に俺に集まった。

 その鋭い視線に俺は少しビクッとなってしまった。

 いや、さすがにただの高校生な俺に大の大人たちからの熱烈な歓迎されてなさそうな視線は怖いって。


 これ……視線とは別に威圧とかされてそうだよな。

 俺には不退転のスキルがあるからそういった類のスキルとかは効かない。

 しかし、何か肌にチクチクと刺さるような感覚がある。

 でも、何で俺なんかが警戒されてるんだ?

 気まずいなぁ。


 俺はできるだけ威圧を気にしないように、案内された空席に座った。

 もちろん隣は空席は蛍の席である。


 すると、俺が座ると同時に局長の長瀬さんが立ち上がった。


「これで一応……は全員集まりましたね。それでは始めますか。とりあえず配布した資料をご覧ください」


 俺は机に置いてある資料を手に取り確認すると、そこには『北海道奪還作戦の概要』と書かれていた。

 ざっと見た感じ作戦の詳しい内容は書かれておらず、指揮系統や主な参加者について書かれているようだ。


 龍園事務所にペガサス事務所、相羽事務所と……その他多数の有名事務所。

 改めて見ると一般人でも知っているような有名事務所ばかりだな。

 ははっ、そりゃ無名な俺に威圧するのも納得だな。

 新人が出しゃばってくるなよってことか。

 恐らく有名事務所は有名事務所なりの繋がりがあるのだろう。


 そして、この指揮系統から除外されてぽつんと端っこに書かれているこの『その他の事務所』ってやつが俺たちのことだろうな。

 なにせまだ事務所の名前がないからな。


 すると、長瀬さんがゴホンッと一つあからさまな咳払いをして注目を集めた。


「じゃあ、そろそろ進めますかね。まず……作戦の決行日は1か月以内にはと考えています。理想は2週間後ですね。そして、皆さんはご存知かとは思いますが現在日本は食料が常に不足しています。そこで北海道の奪還作戦は非常に重要なウェイトを占めています。国外からの食料輸入は微量しか望めず、本州のみでは人口と比べて食料自給率が非常に低いです。そこはご理解いただけていると思います」


 食料に関しては人口密度の高い東京ではそれなりに流通しているが地方によっては食料に制限を掛けているとか。

 だから俺たちはそこまで食料に困っているわけではなく、食料困難の実感は湧いていない。

 しかし、日本全体でみるとかなりやばいと以前に工藤さんから聞いたことがある。


「それと、作戦に当たり一番の壁であったワイバーンについてなのですが、それに関しては目処が立っており予定より少し早いですがこの時期に作戦決行を決めました」


 すると、何かが気になったのかオールバックの厳ついおじさんが口を開いた。


「長瀬はん、正直なところわいでもあの数のワイバーンはきついんですよ。その目処ってのは何です?」


 あのおっさん俺にめちゃくちゃ高圧的な視線向けてた人だな。

 関西人なのか、おー恐い恐い。

 関わりたくない人種かもな。


「虎さん、質問は最後にして欲しいのですが……まあ、それに関しては応えましょう。皆さんもご存知かとは思いますが、ワイバーンに関しては全面的に私たちと協力関係にあるNumber1にお任せする予定です。その他、ワイバーンに対応できる方は個別でさらに参加してもらおうかと考えています。正直、おんぶにだっこ状態ですが、Number1には討伐実績があるので安心して任せられると思います」


 また皆の視線が俺に集中した。


 あれ……もしかして俺がNumber1だと思われてる?

 てか、なんで事務所分かったんだろう。

 とりあえず否定しとかないと。


「あの……えっと……」

「あんたがNumber1か。あんただけ知らない顔やからなぁ。若いなぁ、歳はいくつや? 高校生くらいか? にしてもあんまり強そうには見えへんけどなぁ。まあ、こんな世界になってからは見た目だけじゃ判断できへんからな。それでワイバーンはどうやった? 強いと思ったか? 雑魚に感じたか?」


 俺がそう言いかけると厳つい虎さんと呼ばれていたおじさんが言葉を被せてきた。

 歳は30いってるのではないだろうか。

 ヒョウ柄のワイシャツを着ている派手で厳ついおじさんって感じだ。


「虎さんお話ししたいのは分かりますが私の説明が終わってからでお願いしますよ。それに高校生にそんな高圧的な態度は相手を怖がらせるだけですよ、もう少し柔らかく接した方がいいですよ。皆さんも一斉に視線を向けると彼が可愛そうですよ。別に皆さん敵ってわけじゃないんです、むしろ味方なんですから」


 虎さんの質問に答えようと思ったら、次は長瀬さんに遮られてしまった。


 やばい……このままじゃ、俺がNumber1と間違えられてしまう。

 でも、長瀬さんの度なる制止でめちゃくちゃ発言しづらい!

 どうしよう……。


 俺がそう発言するかどうか躊躇していると、


「それでは作戦の概要を説明しますがこの話は関係者以外に他言無用でお願い致します。この北海道奪還作戦の開始はワイバーンが自分たちの巣、所謂日高山脈にある彼らのダンジョンに帰還する時期を狙い打ちます。帰還時期は2週間後の4月2日と5週間後の4月23日になると推測されています。そこでは全ての個体でなくとも8割から9割近くのワイバーンを倒してもらえることが前提で次の作戦へと移行します。それが無理であれば一度撤退し再び次の帰還時期を狙い再び敵陣へと攻め入ります。これを作戦名『アルファ』と呼称します」


 作戦名アルファ……中二心がくすぐられる命名だな、蛍が好きそうだ。

 とりあえずこの作戦はワイバーンの数を減らすのが目的になるのか。

 まあ、ワイバーンに対抗できる人間は少ないからな。

 もちろん俺なんて豆を潰すような感覚で殺されてしまう程に。


「作戦『アルファ』が終了次第、次の作戦『ベータ』へと移行します。作戦『ベータ』では作戦の基盤となる基地を複数設置することになります。最低目標は東西南北に1か所ずつ合計4か所が設置完了となることになります。これが完了次第次の作戦『ガンマ』を開始することになりますが、作戦『ベータ』は作戦『ベータプラス』と作戦名を変更してそのまま作戦を継続します。作戦『ベータプラス』では4か所の基地を本部として土地の奪還率に応じて支部を複数建築していき、安全領域を広めていくことを目的としています。ここまでが作戦『ベータ』および作戦『ベータプラス』の大まかな内容となっております。ダンジョン冒険者の皆さんはここに同行してもらうことになりますが、基地の建築は自衛隊が担当しますので皆さんは周囲の魔獣の駆除と警戒をお願いすることになります」


 ふむふむ、要するに作戦ベータは北海道に複数の基地を建築することが目的なのか。

 そして俺たちはその護衛または討伐隊みたいなものか。


「次に作戦『ガンマ』です。この作戦の第一目標は各ダンジョンを壁で囲い魔獣を外に出さないようにすることです。各ダンジョンは既に我が隊員のスキルで全て場所が判明しております。数は合計で8個、ワイバーンのダンジョンを除けば7個になります。そしてその一つの倶知安町にあったダンジョンは既に攻略済みの為、この作戦で押さえるべきダンジョンは6個となります。詳しい場所は後ほど」


 魔獣がダンジョン外にこれ以上出さないように原因の元を絶つのがこの作戦の目的か。

 攻略済みのダンジョンは恐らく蛍が攻略したものだろう。


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[良い点] 更新お疲れ様です。 [一言] はじめまして。 こちらの作品は書籍化されていますので気になった箇所を誤字報告にて指摘させていただきます。 無視していただいても構いません。 ただ最近は出版社の…
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