表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/144

ヴァンパイアは美少女派?お姉さん派?それともイケメン派?ダンディ派?

 


 飲料水を口に含み、一息つく。

 その後、息が整ったことを確認してから周りに張っていた氷のシールドを解除する。


『雪花 解除』


 その瞬間に、次の魔法を発動する。


『金風』


 俺を中心に広範囲で強風が吹き荒れ始めた。

 その風に流されるように周囲のヴァンパイアファミリアたちは飛行困難に陥っていた。


 この魔法を操作するのにそれなりのMPを消費するため、すぐに城の城門を確認する。


 その距離、直線で約100mといったところだった。


『電速』


 その方向に向かって、一瞬で電気の速さで移動した。

 その勢いのまま城門を力ずくで開けようとしたがその門はビクともしなかった。


 俺は考える時間なく、次の策に移行する。


 片手を城門に置き、もう片方の手に第一ダンジョンで入手したゴブリンの片手剣を取り出して手に持った。


 そういえばこれから使う魔法は実戦で使うのは初めてだな。


『マグネティックフォース』


 片方の手にはS極の力を流し、もう片方の手にはN極の力を流す。

 さらに通常よりもMPを送ることでより強い磁力をそれぞれ付与させた。


 そして、城門から手を離し少しずつ城門から武器を離していく。


 すると、城門が磁力に引っ張られて徐々に開いていった。

 人一人分が通れる幅を確保してから全ての魔法を解除して、俺は城の中へと入っていった。


 門を通り過ぎるとそこには一面に赤い薔薇が植えてある花壇が綺麗に整備されている場所が広がっていた。


 そこで俺はあることに気がついた。


 ヴァンパイアファミリアが追ってこない。

 というよりも、城の中には入れないのか?


 俺の後ろには大量のヴァンパイアファミリアがもどかしそうにこちらをただじっと見つめているのだ。


 どうやら城の中に強行突破して正解だったようだ。

 そこで俺は一つ安堵の息を吐くも、すぐに気持ちを切り替える。


 さて、この中にはどんな魔獣がでるかな。

 話のできるヴァンパイアさんとか出てこないかな。


 サリエス師匠が以前に話してくれたことがある。


 魔獣の中には話のできる知能の高い魔獣もいると。

 そう言った魔獣は、異世界では魔獣ではなく上位魔獣や上位魔人と一般的に呼ぶらしい。

 魔獣と魔人の区別の仕方は単純に姿が獣に近いか人に近いかの違いらしい。


 そういった上位の魔獣の中には、人類に対して悪意がなく利益をもたらす者もいるらしい。

 なので、そういった魔獣に出くわした場合は初めに相手の意思を確認するのが常だそうだ。


 そんな話を聞いた時に、俺は心が高鳴ったのを覚えている。


 そして、日本ではヴァンパイアとは基本的に知能が高い化け物されているのだ。

 これは期待せずにはいられないだろう。


 ぜひヴァンパイアと話をしてみたい!


 そんな期待を胸に赤い薔薇で囲まれた庭を城に向かって歩いて行った。

 それにしてもこれだけ広い庭を整備するだけの力や知能はあると考えていいのかもな。

 ただ毎日この赤い薔薇を見ていたら気が狂ってきそうだよな。


 あっヴァンパイアってことはやっぱり血が好物なのかな?


 俺的には美少女であったらあげるのもやぶさかではないのだけどな。

 やはりヴァンパイアと言ったら美少女なのだろう。


 いやー、楽しみになってきましたね。


 拝啓、城の中にいるであろうヴァンパイアさん。

 俺の中ではどんどんとあなたのハードルが上がっていますよ。

 もうあなたの株価は急上昇です。

 どうか期待を裏切ることのないように。

 そして、美少女であればいくらでも俺の血を分けますよ。

 あっでも、死なない程度でお願いします。

 別にロリでもお姉さん系でもどんな属性でもウェルカムですよ、なにせヴァンパイアさんは美しいのですから。

 もちろん私はSでもMでも対応は可能となっておりますのでご安心を。

 さて、お城の目の前に到着しましたよ。

 それではお城の中でお会い致しましょう。

 雨川蛍より



 ******************************



 城の中に入るとそこは意外にも明かりで綺麗に照らされていた。

 遥か上にある天井には見たこともないような豪華なシャンデリアが飾られており、壁面には絵画や魔獣の剥製と思わしき装飾品が数多く並べられていた。


 ここは完全に異世界貴族のお城を彷彿とさせるような豪華な内装だった。


 そして目の前には赤い絨毯の引かれた大きな階段があり、それは2股に分かれて2階の左右へと繋がっている。

 この階段は内閣発足の時に皆んなで写真を撮るあの階段よりも数倍豪華で立派な造りをしているように思える。


 そんな内部の光景に俺は固唾を飲んだ。


 もはやここは夢に見た異世界と同義な場所である。

 俺の動悸はさらに上がっていくばかりだ。


 そうして俺が一人入り口で見惚れていると、右側の2階から一人の人が現れた。

 俺はその光景にもはや言葉が何も出てこなかった。


 深い緑色のフワリとした優雅なドレスを身に纏い、手には薔薇を幾重にも編んだように複雑に絡み合う杖を持っている。

 しかし、それらは装飾品に過ぎないと言わんばかりのその容姿。

 胸辺りまで伸びた黒い髪をサラリと靡かせ、それは彼女を飾るように一部が編み込まれていた。

 そんな彼女の顔は美と可愛いの狭間であり、俺の語彙力では当分表せない顔立ちであった。


 そう、そこに現れた彼女はまさしく俺の期待した魔人であったのだ。

 いや、期待以上の女性であったのだ。


 その女性はゆっくりと階段を降り、俺の正面に立った。


 意外と身長は低く、妹よりも少し低いくらいなので140後半といったところだろう。

 しかし、それとは裏腹に醸し出す強者のオーラ。


 俺は久し振りに冷や汗を首筋に汗を掻いた。

 そして、背中に走る悪寒。


 俺と彼女はそれでも見つめあうなか、先に口を開いたのは彼女であった。


「ふふふっ、よくぞここまで来たな。まずはそれを祝福しようではないか」


 そう言って、彼女は大袈裟に手を広げた。


 ……なんかイメージとちょっと違う。


「ええっと、祝福ですか?」


「そうだ。なにせお前が初めて来た待ちに待った客人なのだ。祝福させてほしい」


 そう言って華麗にお辞儀……ではなく、かなりぎこちなくお辞儀してきた。


 ……ヴァンパイアさん、またしても減点ですよ。

 あなたは最初の持ち点と容姿点が高いのでまだ大丈夫ですが、行動点でもう2点減点です。

 この点がマイナスになると俺はあなたに先制攻撃しかけますからね。


「何をしてくれるのですか?」


「君は冒険者だろう? であれば、先にお風呂に入るとよ……お前臭わないな。それに汚くもないな」


 そう言って、俺の体や髪をクンクンと嗅いでくるヴァンパイアさん。


 これは高得点ですね!

 プラス2点!


 俺はこの時あることを期待したのだ。

 それは彼女の髪からフワリとシャンプーのいい香りが!ってやつを。

 しかし、その期待は裏切られる結果になった。

 これは大幅減点です。

 マイナス3点。


「あのヴァンパイアさん、シャンプー使ってますか?」


「シャンプーとは、何だ?」


「あっそっちの世界にはないんですか。そりゃ、髪からフワリといい香り現象は起こらないですよね」


「もしかして! お前の髪からいい香りがするのはそのシャンプーとやらなのか?!」


「ちょっ、落ち着いてください。痛い! 痛い! そんなに強く髪を引っ張らないでくださいよ! そんな美少女らしからぬ行動は大幅減点対象ですよ。けど、美を追求するその意識はプラスですね」


 つい、俺の期待を裏切ってくる彼女に得点のことを言ってしまった。

 いや、これは容姿は満点なのに行動が期待外れ過ぎる彼女が悪いのだ。

 断じて俺は悪くない筈だ。


 すると、彼女の顔の雲行きが怪しくなってきた。

 そして彼女はその可愛らしい大きな茶色の瞳でただ俺をジッと見つめてくる。


 彼女は怒っているようだが、俺の中では怖いよりも可愛いが優ってしまっていた。

 やはり可愛いは正義ですね!


「お前如きが私を採点していた……と?」


「ちなみに今は10点満点の7点です。これが0になると俺は問答無用でヴァンパイアさんに攻撃を仕掛けますが、そちらから攻撃を仕掛けるのなら俺も対抗しますのでその杖を俺に向けないでください」


 俺がそう真面目に答えるも彼女は一向にその杖を下ろしてくれなかった。

 というか、この魔人強いのか強くないのかわからないのだ。

 なにせ異世界鑑定が全く効かない。

 だから、実力はわからないのだが何故か俺の危険感知センサーが全く反応しない。

 まあ、そんなスキルは持っていないので勘でしかないのだが、案外こういう時の俺の危険感知センサーは馬鹿にできないのだ。

 だから、俺は魔人を前にしてもこんなにも堂々としているのだ。


 要するに言いたいことは、こいつ実は弱いんじゃね? ってことだ。

 多分、いや、もう断言できる。

 こいつ強がっているが絶対に俺より弱い。


 その証拠にさっきまで強がって俺に杖を向けてた割に今では「えっ何か反応してよ?」みたいな感じで俺の顔色を伺っている始末だ。

 恐らくこいつ気づいてるんじゃないだろうか「あっやべ、こいつ私よりも遥かに強くない?」とでも。


「なあ、お前絶対に気づいたよね?」


 俺がそう聞くと彼女は「何が?」みたいなとぼけた顔をしてきた。


 どんだけマウントを取りたいんだよ、ヴァンパイアさん。


「じゃあさ、1回だけその攻撃を受けてあげるから打ってみなよ。その杖、魔法攻撃でしょ?」


「いいのか? 本当の本当に受けてくれるのだな? 途中でやーめたとか言って攻撃してこない?」


「しないよ。美少女に誓って。でも、1回だけな。多分、本気出せばヴァンパイアさんは一捻りで倒せると思うしね。まあけど、こっちも一応魔法で防御はするけれども」


「うむ、良い心がけだ!」


 そう言って彼女はめちゃくちゃ反った。

 もうそれはそれは偉そうに反ってました。


 そして、それで腰を痛めたのか背中を痛そうに摩りながら俺に向かって薔薇の杖を構えた。

 俺はそれを見て事前に防御を展開する。


『雪花』

『アイスクリスタル』


 始めに俺を囲うように氷のシールドを複数展開し、それをアイスクリスタルでさらに硬くする。

 そして、それを念のために5重に展開した。

 今回は展開までに時間があったため氷の純度を高めて透明度もおまけした。


『エレクトリックヒール』


 さらに保険として常時回復魔法も掛けておく。

 自分でやっといてあれなのだが、この防御方法ならあのドラゴンのブレス攻撃を無傷で耐えられるだろう。

 そんな防御をこのヴァンパイアさんが貫けるとは到底思わない。

 少しやり過ぎたかもな。


 けれども、これは時間が十分にあったためにここまでの防御を展開できたのだ。

 実戦となるともっと簡単に展開できて強度のある防御方法が必要なのだが。


 そんなに悠長に防御を張り、考え事をしているとヴァンパイアさんの長ったらしい魔法詠唱が終わったようだ。

 一応何と言っているのか聞いてはみたのだが、さっぱり理解が出来なかった。

 というか、詠唱が必要な魔法って初めてだな。

 一体どんな凄い魔法なのだろうか、楽しみだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ピッコマ様にて SMARTOON連載開始‼
※ ↓ 画像をタッチ又はクリックすると公式ページに移動します ※
i492363
webから大幅加筆された『あのダン』が2巻まで発売中!!
別ルートを辿る新たな”繋がり” や ”戦い”がすでに始まっている!
そして2巻では『あのラスボス』が早くも登場!?

はるちか先生による、コミック4巻が発売中‼
※ ↓ 画像をタッチ又はクリックすると公式ページに移動します ※
i492363
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ