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あの日地球にダンジョンが出現した(~ニート × ファンタジーは最強です~)  作者: 笠鳴小雨
【第3章】東京 編

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一つのことに集中すると周りが見えなくなる



 俺は素晴らしいオモチャを入手してしまった。

 そのおかげで残り13日のダンジョンライフのほとんどを無駄にしてしまった。

 俺としたことが、こんなところでゲーマーの血が騒いでしまったようだ。


 その理由はこれである。



 【result】

   名称 ≫案山子の恩返し

   説明 ≫これに一定量のMPを与えることで、攻撃の威力を測定し数値化してくれる。親切度は案山子の気まぐれである。



 といったアイテムであった。

 この世知辛いダンジョンで、初めてと言ってもいいほどに親切なアイテム。

 こんなゲームみたいな世界になったのに、能力の確認に関しては不親切なダンジョン。


 威力の測定は、かなり曖昧で魔獣を倒せるか倒せないかで判断するしかなかった。

 あとは、基本属性の魔法よりも上位属性の魔法の方が強いといった程度しか分からなかった。


 しかし、これがあれば俺の所持している攻撃手段が威力別に区分可能になったのだ。

 これは今後のダンジョンライフにもかなり影響してくるものだ。

 それさえできれば、過剰な魔法を使用することなくMP消費も最小に抑えることが今後可能になるかもしれない。


 ということで、入手したその島で早速使った。

 しかし、このアイテムは数値化と区分に相当時間が掛かった。


 通常であれば一通りの測定はすぐに終わるはずだったのだが、この鑑定結果の最後の文字「親切度は案山子の気まぐれである」、この文字が盛大に俺の貴重な時間を消費してきたのだ。


 このアイテムは優秀なのは優秀であるのだが、30回使って29回は数値で表してくれなかった。

 要するに、強さの数値を算出する頻度が異様に少なかったのだ。

 その為、ストレスを抱えながらも頑張った。


 ただし、ゲーマーにはこういった結果に直結する努力は苦でもないのだ。

 むしろ、こんな困難乗り越えれなくてゲーマーなんて名乗れない!


 なんてどうでもいいことを考えながら、この作業を頑張った。


 そのおかげで現在、全ての魔法威力を測定できた。

 しかし、俺自身の物理攻撃の威力は測定できなかった。

 武器を所持して案山子に攻撃してみても測定してくれなかった。


 この測定してくれる境界線とは何なのだろうか考えてみたが、強いて言うならば俺のスキルや魔法構成に影響しているのではないかと考えた。

 魔法を所持していれば魔法の威力を測定してくれるが、武器系統のスキルを所持していなければその威力を測定してくれないといった感じなのでないだろうか。

 俺のスキル構成は魔法にしか直接関係してくるものしか所持していないため、この案山子は魔法しか測定してくれなかったのだろう。


 そんな案山子は気まぐれなアイテムであったが、改めて考えるとこのアイテムは素晴らしいと気づいたのだ。


 その測定結果はこうなった。



 【水魔法】

   ウォーターソーサース・クリア (170)

   ウォータージェット・ウィップ (340)

   ウォーターフロア・スロウ (0)

   ウォーターバレット・ショットガン (680)

   ウォーターバインド・プリズン (0)

   波動水・インパクト (1020)

   ウォーターヒーリング・ダブル (0)

   水月・ダブル (1360)

   ウォーターライトソード・スロウ (1530)

   オーシャン・ストリーム (1700)

   超級魔法・オプティカルカモフラージュ (0)


 【氷雪魔法】

  スノウエリア・ストーム (0)

  アイスソード・ダース (680)

  アイスシールド・雪花 (0)

  アイスソーン・蕗の薹 (1020)

  アイスチェーン・クリスタル (0)

  瞬間凍結・氷雪世界 (0)

  ブラックバーン (0)

  あられ (850)

  アイスプラネット (935)

  アイスクリスタル (0)


 【電撃魔法】

   電撃掌打・ショット (510)

   ディスチャージ (340)

   マグネティックフォース (0)

   サンダーボルト (510)

   電速 (0)

   チャージ (0)

   黒雷撃 (765)

   黒雷落とし (850)

   エレクトリックヒール (0)

   雷化 (1020)


 【秋風魔法】

   初秋風 (0)

   金木犀 (0)

   金風 (0)

   秋風索漠 (0)



 この数値は造形操作で最大まで威力を上げた場合の数値だった。

 もちろん魔法力のスキルで威力は自動的に上がっていると思われる。

 

 しかし、この値はある程度指標にはなると考えられるが、実際の数値とは少し違うと思う。

 恐らくだが、それぞれ魔法には個性があるが、この数値はある程度法則があるように思える。


 でも、まあ一種の指標にはなり得るだろう。


 と、こんな感じで時間を費やし、このダンジョンにいられるのも残り1日だけだ。

 その1日で出来る限り進んでから家に戻ることにした。


 ということで、次の島へと早速転移しますか。

 そうして、俺は青い魔法陣へと久しぶりに足を踏み入れた。



******************************



 転移すると、目の前には30体以上の魔獣が現れた。

 鑑定をすると、



 【status】

   種族 ≫フライングマンティス

   レベル≫174

   スキル≫フライLv.max

       エアカッターLv.max

       鋭利化Lv.14

       群体行動Lv.12

       緊急離脱Lv.10

       罠作成Lv.9

   魔法 ≫風魔法Lv.8



 かなり厄介そうな魔獣だな。

 ここはあの魔法の練習でもしてみるかな。


『クリスタル』


 氷の鎖をごく細くし、さらに氷の純度を高くすることで透明度を上げより敵に視認させにくく造形する。

 それを俺の右手から無作為に複数の鎖をフライングマンティスに向かって放出した。


 その鎖は魔獣の体の周囲に纏わりつくような軌道を取り、魔獣の遥か背後の地面に刺さった。

 その魔獣たちは飛ぼうとした瞬間に鎖を放たれたため、飛ぶことができずその場から動くこともできなく、行動そのものをその鎖に阻害された。


 この魔法は敵の動きを制限するのには十分な性能を持つのだ。

 もちろん鎖を極細く造形したため、殺傷性は皆無だ。


 この魔獣は空飛ぶカマキリであり、なおかつ厄介そうなスキル構成をしていた。

 こういうタイプの魔獣は一手目の奇襲で動きを阻害するに限る。

 加えて、言うなら虫型の魔獣には近づきたくない。


 いや、どちらかというと気持ち的には近づきたくないが8割、厄介そうが2割くらいあるかもしれない。

 やはりどれだけゲームのような世界になったとしても虫型の魔獣だけは他の魔獣よりも近づきがたさ割増しになるよな。


 というか、カマキリ型の魔獣はキ・モ・イ!!

 ちょっと他の魔獣とは一線を画すよね。

 まあ、北海道に住んでいたからカマキリを実際に見るのは初めてなんだけど。


 さあ、倒しちゃいますか。


『クリスタル』


 先程とは異なり、氷の鎖を槍程の太さに造形し先端をランスのような円錐に造形する。

 そして、それを1本放った。


 それは阻害網から抜け出そうともがいているフライマンティスたちを右側から1匹ずつ確実に意思を持つように自在に動きながら貫いていった。


 遠くではフライマンティスがギイィィとか叫んでいるが、俺はそれを聞かないように耳を塞いでいた。

 だって、気持ち悪いんだもん。


 そうして、最後のフライングマンティスを貫きその島には静寂が訪れた。


「ああ、まじキモかった。ここにいるのも悪寒がするからさっさと次の島へ行こ」


 そうボソッと独り言をつぶやき、ドロップ品を確認してから青い魔法陣へと足を踏み入れた。

 ちなみに、ドロップ品はフラマンティスの鎌だった。

 見ているだけであの外見を思い出しそうだったので、置いてきた。



******************************



 最終日の22:00。

 

 これが最後の島と決め、足を踏み入れたその島に俺は言葉を失った。


「これ何体いるんだよ……」


 俺の目の前は黒い蠢く物体で360°埋め尽くされていた。

 この島は疑似的な月明かりで照らされる夜で、目の前にはかろうじて城があるのが確認できる。


 俺は目を細めて、その魔獣の姿を確認し鑑定をした。



 【status】

   種族 ≫ヴァンパイアファミリア

   レベル≫215

   スキル≫フライLv.max

       吸血Lv.max

       血分けLv.max

       単体行動Lv.10

       暗視Lv.max

       赤外線視Lv.15

   魔法 ≫闇魔法Lv.10

       毒魔法Lv.5



 コウモリか……。

 それにしてもヴァンパイアって魔獣なのかなぁ。

 俺的にはヴァンパイアって魔獣じゃなくて魔人とかどちらかというと人よりの姿してた方が嬉しかったんだけどなぁ。

 どうなんだろう、この奥にある城にいるのかな。


 まあ、それはこの数のコウモリを全て倒してから確認すればいいか。

 それにしてもこの数の魔獣を安全に倒すのにはどうすれば………。


 無理だな。

 これは広範囲魔法を掛けても一部しか倒せないだろう。

 広範囲魔法を維持するのってMP消費が激しいからこの数を倒せるかわからないしな。


 うん、決めた。

 ここは思い切って、久しぶりに魔法じゃなくて近接戦闘でもしようかな。

 最近、遠距離魔法ばっかり使ってたから俺の理想とする遠距離も近距離もこなせる戦闘像から離れてたんだよな。


 その理由は単純だ。

 最近、東京というぬるま湯に浸かっていたから思考も遠距離というぬるま湯に変わってしまったに違いない。

 これではダメなんだ。


 あと、もう一つ言い訳をするならば最近やっていたゲームに思考が引きずられていたに違いない。

 最近、MMORPGで魔法職を極めていたから絶対にそれだ。


 この戦闘を機に俺は近接戦闘を頑張る!

 さぁ、やりますか。

 もちろん使用する近接武器は氷雪魔法のアイスソード2本に、水魔法のウィーターライトソード・スロウの2種類を使用する。


『アイスソード』


『ウォーターライトソード・スロウ』


 武器を準備し、足を一歩魔法陣から踏み出した瞬間に一斉に全方向からコウモリの魔獣が突撃してきた。

 魔獣は「キュイ!」と鳴きながら突撃してくる。


 俺はこの時思ってしまった。

 鳴き声ちょっと可愛いなと。


 おっと、いけないつい最近に油断しないと決めたばかりなのに。

 俺は頭のスイッチを切り替え、意識を集中した。


 手始めに、俺は全身から隙間なく水の刃を無数にハリネズミのように突き出した。

 それに意表を突かれたコウモリの第一波は無残にも体中穴だらけになり光となっていった。


 それを確認した俺は水の刃を引っ込めて、仕留めそこなったコウモリを氷の刃で踊るように切り裂いていく。


 もちろん今までの俺ではできない芸当であったが、超動体視力のスキルと超バランス感覚のスキルでこの演武のような剣さばきは成り立っている。

 そして、その攻撃すら回避し俺に近づいてきた個体には体どこからでも発動することのできる水の刃で貫く。


 そうして、隙ができないように常に360°警戒しながら少しずつ城へと歩み、魔獣を切り裂いていく。


 しかし、久しぶりの近接戦に加えてこの数量の敵からの絶え間ない攻撃に俺は背後からの攻撃を受けてしまう時もあった。

 さらには、遠距離から闇魔法を放ってくる個体も徐々に増えてくるようになった。


 さすがに、このレベルの魔獣になってくると学習能力が高くなっているようだ。


 そのような魔法を放ってくる魔獣には仕方がなく、遠距離魔法で水魔法の水月を放ち、三日月型の水の刃がその魔獣を襲った。


 そして、それでも倒せない魔獣は回避するしかなく、久しぶりに幻影回避のスキルが大活躍している。


 背後から受けた攻撃は電撃魔法のエレクトリックヒールで徐々に回復していき、さらに俺は進んで行く。


 そんな戦いを繰り広げたからか、久しぶりに俺は戦いに高揚感を感じていた。


 こんな高揚感はいつぶりだろうか。

 つい笑みを溢しながら、目の前にいる個体を切り裂く。


 すると、その個体は少しだけ他の個体よりも切り裂くのに抵抗感が強かった。

 よく見ると、その個体は羽の色が黒ではなく紫色をしていた。


 その瞬間、俺は久しぶりにレベルが上がった感じの体の浮遊感を感じた。

 どうやら俺の基礎レベルみたいなステータスが上がったようだ。

 もちろん俺が基礎ステータスと呼んでいるだけで、実際に存在するのかも正しい名称かも知らないのだが。


 そうしてもう少しすると、またしても紫の個体を倒すと同時に体の浮遊感が感じられた。


 俺は戦いに集中しながらも、頭の片隅で考えた。

 明らかにこの浮遊感の間隔が今のは短かった。

 これは、この紫のコウモリは経験値が美味いのか?


 その後も紫色の個体を倒すたびに体の浮遊感があった。

 これは完全にこの個体の経験値が高いと分かった。


 ということは、これはもう時間なんて気にせずに周回作業確定です!!


 そうして、俺は固定された月が照らす城の城門前で疲れ果てるまでコウモリと戦闘を行った。



******************************



「はぁ、はぁ、はぁ」


 俺はダンジョンに潜ってから初めて息切れを起こしていた。

 そして、自分の周囲に複数の氷の壁を張り膝に手を置いた。


「ちょっと、これは多すぎでしょう」


 俺は経験値が旨いと分かってから意気揚々と魔獣を倒してきたのだが、一向にこの魔獣が減っている気がしない。

 正直、もうどれくらい戦闘していたのかもわからない。

 スマホで時間を確認する気力ももうない。


 こうして休んでいる間も俺の氷の壁は徐々に削られていっている。

 悠長に休んでいる暇はないだろう。


 しかし、この無限に湧いてくる魔獣をどうすればいいのか。


 俺は息を整えながら思案する。


 広範囲魔法は論外だ。

 MPの燃費が悪すぎる。

 今まで通りの近接戦闘はMP燃費はかなりいいが俺の体力が最後まで持たないと思う。


 というか、この戦闘に終わりはあるのか?

 ざっと見た感じでは数が減っているのか減っていないのかも分からない。


 いや、待てよ。

 魔獣の名前ヴァンパイアファミリアだよな。

 家族というよりも眷属や仲間ってところかな。


 ということは、こいつらの親玉が城の中にいるのかもしれない。

 そう考えたい。


 さすがに俺が強くなったからって無限に続く戦いには勝てない。

 世界1位になったからって同様だ。


 これは賭けに出るしかないのかもしれないな。


 そうするしかないか。

 弱気な作戦かもしれないが、これしか俺の導き出せる道がない。


「おし、城に乗り込みますか!」


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[気になる点] ゲーマーを気取るなら、ドロップ品は必ず回収しておけ。 回収していない時点でゲーマー失格かと。
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