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あの日地球にダンジョンが出現した(~ニート × ファンタジーは最強です~)  作者: 笠鳴小雨
【第3章】東京 編

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男女混合チームは喧嘩のもと?



 ―別のダンジョン内にて……


 大阪に出現した洞窟型ダンジョン。

 そこは暖色に光る苔が暗闇を照らし、そこで戦闘をしている冒険者の視界も照らしていた。

 そこの洞窟型のダンジョンでは4人が戦闘を行っていた。

 チーム構成は男性が2人に女性が2人。


 一番前のフォーメーションに位置する2m近く身長のある大柄の男性が自分の身長サイズの大きな赤色をした盾を地面に固定し構えた。

 いや、盾というより壁という方が似合うのかもしれない。


『アンダーテイク!』


 その男性のスキルで、目の前にいるサイのような魔獣が一斉に進行方向をその盾を持つ男に変えた。

 しかし、5体いるうちの4体は釣れたものの1匹のヘイトを取ることができなく、盾を無視して後衛に向かって突進していった。


「綾人、すまん! 1匹そっちに向かったから頼む!」


 盾の男は後ろを振り向かずに、後ろで刀を構えている赤い侍装束を着た男、飯尾綾人(いいおあやと)に声を張った。


「おいおい、天下のタンクともあろう権田様の名が泣いてるぞ!!」


 綾人は盾の男、権田孝(ごんだたかし)を言葉でからかうも、その顔と態勢は常に真剣そのものだった。


「本当にすまん! 完全に俺のミスだ。」


 権田はそう言いながら、もう一つ小さな盾をどこからともなく取り出し魔獣4体攻撃をいなしていく。

 これが権田の戦闘スタイル、大きな盾を地面に設置し背中を向けて小さな盾で魔獣を翻弄する。


「了解! こいつは俺が仕留める! あっちの4体は鈴菜と彩夏に任せるよ」


「了解、綾人!」

「任せて」


 そう言って、その女性2人はこっちに向かってくる魔獣を避けるように権田の下へと駆けていった。


 綾人は重心を少し落として、鞘に入っている刀の柄に手をかけ一息吐いた。


『灰色斬り』


 その瞬間、鞘から灰色に輝く刀が目に捉えられない速さで魔獣に向けて放たれた。

 魔獣は眉間から真っ二つに斬られ、その突進は綾人に届くことがなかった。


「孝、伏せて!」


 権田のもとへ駆けていった金井彩夏(かねいあやか)が手に持つ金色の薙刀を振りかぶった。


「おう!」


 権田は言われた通り、その声を聴いた瞬間に自ら前に倒れる。


『飛び刀』


 彩夏が振りかぶった薙刀の刀身から金色の光が放たれた。

 そして、2体の魔獣を真横から真っ二つに斬り伏せた。

 残り2体には、距離の減衰で威力が足らず、傷を与えるだけになっていた。


 そこに、飼葉鈴菜(かいばすずな)が30cmほどの小さな杖を構えた。


『クロスウィンド』


 十字にクロスした風の刃が1体の魔獣に直撃した。

 それは心臓を貫き、魔獣はその場に力なく横たわった。


『マジパンチ!』


 先程まで地面に突っ伏していた権田が起き上がり、盾を持つ左手を魔獣に向かって振りぬいた。

 その魔獣はそのまま吹き飛ばされ壁に激突し光となった。


「ふー、お疲れ。それにしても相変わらず権田のそのスキル名ダサいな。なんだよ、マジパンチって」


「えっ? カッコいいだろう、このスキル名。こうなんて言うか……男らしい! って感じで」


「「「えっ?」」」


「……えっ?」


「「「…………」」」


 権田のその発言にチームメイトは返す言葉がなかった。

 そう、この男、権田は絶妙にセンスがなかったのだ。

 そうして、戦闘後の喜びが権田の発言で微妙な空気となっていた時、もう一人のチームメイトがその場に現れた。


「やあ、他の通路を確認してきたよ………って、何この空気?」


 その場にスキップして現れた女性は、盗賊風の服を身に纏い、長い髪を後ろで一つに纏めていた。


「ああ、杏沙(あんず)か。今、権田のセンスのなさに絶句してたところ」


 杏沙こと、斎藤杏沙の言葉に再起動した綾人が呆れたように返事をした。


「ははっ、みんな今頃気づいたの? 権田は幼稚園の頃からセンスがみんなとはズレてたよ。基本、男臭いような奴は大体カッコいいって言ってたし」


 杏沙はこのチームの中で権田とは幼馴染の関係である。

 そして、彼女はこのチームでは戦闘はほとんど行わずに、罠感知や道の選定、雑用などマルチにこなすことを役割としている。

 要するに、チームに1人は欲しい何でも屋的な立ち位置だ。


 そんなことを話していると話題の権田が力なくしゃがみこんだ。


「みんなして俺のセンスがないだとか……悲しくなる」


 権田はその巨体に見合わず、指で地面の土をイジイジしだした。

 そして、少しの雫が目から零れた。


「孝……戦闘中は人が変わったように頼もしいのに、本当にメンタル豆腐男よね」


 その権田を見下ろし呆れるように魔法使いの鈴菜が言った。


「本当! 私みたいにもっと普段からバッ!っとグッ!っとやらないと結婚できないわよ!」


「彩夏、お前はお前で擬音が多すぎてバカに見えるぞ」


 綾人は彩夏を残念な子を見るように言った。


「綾人はこのチームのリーダーで本当に大変そうだね」


「本当に……他のチームもこんな感じなのか?」


「うーん、私が見てきた限りではこのチームが一番強いけど、その分個性は強いよね。綾人が大変そうって感じに私の目には映ってるよ。まあ、他のメンバーが強いと私が安心できるから私的には嬉しいよ」


 杏沙は綾人たちと同じ事務所に所属しているが、固定チームはなく、様々なチームを転々としている。

 彼女曰く、「私は万能タイプだから、様々なチームで経験を積んで、いずれこれだ!っていうチームに入りたい」と言っていた。

 そこで今の時期は綾人たちのチームに入り行動を共にしていた。


「まあ、とりあえず前に進むか。それよりも、杏沙他の道に何かあったか?」


「なーんにも、なかったよー」


「うーん、中々新しい宝箱は見つからないか」


「あっでも、事務所から連絡あったよ。一旦、帰って来いだって。なんでも、北海道奪還作戦が早まるらしいよ」


「北海道は日本の冒険者じゃ、まだきついだろ? 実際、俺達でもきついし」


「でも、早めるってんだから何か策でもあるんじゃない?」


「まあ、そうか。とりあえず次の帰還魔法陣のある階層まで行くか」


 そうして、綾人のチームはさらに下の階層へと進み、2日後には地上へと帰還した。



******************************



 ―別のダンジョン内


 とある2人組の冒険者が階層一帯砂漠の新階層へと到着した。


「うおぉーー!! 新階層キター!!」


「アニキ、うるさい。黙れ」


 その2人組みは兄弟であった。

 そして、いきなり叫び出した兄に冷静な弟が言葉で圧をかけた。


「お前にはこの新鮮な気持ちが分からないのか?! 弟よ、たまには俺を見習って叫んでみろ! 気持ちいいぞ」


「嫌だよ。そのアニキの叫び聞くのこのダンジョンに来てから26回目、そろそろ殴らせて?」


「断る! それより早速、魔獣さんのお出ましだ! パターンGで行くぞ!」


 兄はそう言い残し弟を置き去りにして、ゾウ並みに巨大な4足歩行の魔獣に突っ走っていった。

 しかし、常に兄とダンジョン攻略してきた弟は遅れるはずもなく……、その兄の斜め後ろをすぐに並走していく。

 そんな兄に弟は口を開いた。


「パターンGって、なんだよ。そんな作戦聞いてない」


「何言ってる! GはGO!GO!のGだろう! ガンガン行くぜって意味だ! 察しろよ、長い付き合いなんだから! ほら、1っ匹目貰い! 『ドロップパンチ』」


 兄はその魔獣に真正面からパンチを繰り出した。

 そのパンチが当たった瞬間、魔獣は何かに押しつぶされるように地面へと急激にめり込んでいった。

 その魔獣を兄弟は膨らむように左右から躱しながら、前へと走っていく。

 そして、ついでと言わんばかりに弟がすぐ近くにいた魔獣に向かって短剣を投擲した。


『喰え』


 その短剣はその空間ごと消すように、その魔獣を消滅させた。

 そして、その短剣は何かに引っ張られたように弟の手元へと戻っていった。


「無理。アニキはバカで脳筋だから、俺みたいな普通の人間にはわかるわけがない」


「だから、お前は俺より討伐数が少ないんだよ! もっと、ガンガン行こうぜ!」


「うるさい、戦闘中くらいその口を仕舞え。それに俺が討伐数少ないのはアニキのせい。俺がアニキの動きを読んでアニキが死なないように立ち回っているんだから当たり前」


 しかし、そんな愚痴を聞く耳持たない兄はただただ魔獣に突っ込んでいく。

 そんな自分にだけ便利な耳を持っている兄を弟は静かに嘆いた。


(はあ、他の奴とチーム組みたい…………。けど、俺達より強い奴って日本には少ないんだよな、はぁ……)


「おい、我が弟の(さい)よ! あそこに群れのボスがいたぞ! あれは俺がやるから手出しするなよ!」


 兄の指さす方向には、アフリカゾウを何倍にも凶暴な見た目にしたような魔獣が凛として佇んでいた。

 しかし、弟の相羽(あいば)才はまたしても溜息を吐いた。

 それは兄が1人で戦いたがるのはいつものことだが、あのレベルの魔獣は兄の相羽(りょう)1人では倒せないのだ。


 1人で突っ込んで言ったら確実に兄は油断して1撃貰うだろう。

 だから毎回、弟の才が尻拭いさせられる。

 その為、兄の言葉に才は反応することなく、兄の瞭と一緒に戦った。


『ライジングパンチ!』


 兄が走った勢いのまま、向かってくる魔獣に真っ向から拳を突き出した。

 しかし、先ほどまでの魔獣とは違い、このボス魔獣は吹き飛ばされることなくお互いに勢いを殺すだけとなった。


「ほら、動けてないじゃんアニキ。そっからどうやって1人でこいつ倒すの?」


 才は兄の横で冷静に聞いた。

 兄の瞭は先ほど衝突で均衡が決まってしまったらしく、その状態から動けなくなっていた。


「すまん…………助けてくれ」


「嫌だよ、1人でやるって言ってたんだから1人でやりなよ。1日でも1週間でも待ってあげるから」


「恥を忍んで助けを求めている兄に対して……お前には助け合いという言葉がないのかぁ!」


「いや、むしろこっちが聞きたいけど、アニキのワンマンプレーに助け合いという言葉はないよね? ね?」


 弟はすごんで兄の眼前で聞き返した。


「それは……その……兄は強いからいいのだ! だから、その……本当に頼む! 結構この状態辛いんだ!」


「じゃあ、地上に帰ったらトトアンのエクレア200個奢って。そしたら、助けてあげてもいいよ」


「200個……わかった! その契約乗ったぁー!!」


「あと、このダンジョンでは叫ぶの禁止ね。意外とそれ心臓に悪いから」


「む……わかった(小声)」


「極端すぎ、もう少し大きくして。普通の声でいいんだから」


「おう……お前いつもより要求多くね? それにいつもよりSっけ増してね?」


「今日はなんかいつもよりアニキにイラついてるから」


「お、おう……すまん」


 そうして、助けられた兄の瞭は当分静かに弟の言うことを聞くのであった。

 しかし、どれだけ更生しても脳筋は脳筋。

 当分の期間を終えた兄はまた通常運転に戻るのであった。


 そして、このチームも同じく北海道奪還作戦に参加するべく地上に帰還したのであった。


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