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あの日地球にダンジョンが出現した(~ニート × ファンタジーは最強です~)  作者: 笠鳴小雨
【第3章】東京 編

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思春期の成長は侮れない



 「んー!」


 長時間同じ姿勢を維持していたせいで固まった体を軽く背伸びをしてほぐす。

 ふと、時計を確認するとその短針は4の数字を指していた。


 もうそんな時間か。

 そろそろ小鳥がチュンチュン鳴いて煩くなる頃合いだから寝ますか。


 俺はパソコンゲームをセーブしてからシャットダウンをし、パソコンを閉じた。


 そうして俺は椅子から立ち上がり、すぐ側にあるふかふかのベッドに潜り込んだ。

 このベッドには無駄に余ったお金を惜しむことなくつぎ込んだ。


 ニートにベッドは重要なアイテムだからね。

 そうして俺はベッドの温もりに身を任せて眠りに落ちた。


 おやすみ。



******************************



「お兄ちゃん! 朝だよ、起きて!」


………

………………

…………………………


「お兄ちゃん!」


 ん、まだ眠い。


 すると、急に頭に強烈な衝撃が走る。

 えっ?


 俺は頭を手で押さえながら目を開けるとそこには2人の知った顔があった。


 制服姿のひより、そして同じく制服姿でフライパンを片手に持つ賢人の姿だった。


 こいつまたフライパンで頭殴りやがったな。


 てか、今何時だよ。


 そうして時計を確認するとまだ朝の7時だった。

 いや、まだ3時間しか経ってないじゃん、起こすの早過ぎるわ。


 俺は無言でのそっと再度布団に潜り込んだ。


「いや、なぜ俺の顔を見てから安心してまた寝るんだよ、蛍」


 そう言いながら賢人は俺の布団を無理やりに剥いできた。

 無言で俺はアイテムボックスからもう一枚の毛布を取り出して包まる。


「いや、まだ眠いから。まだ3時間しか寝てない、じゃあ、おやすみ」


 そうして俺は再度深い眠りに………つけなかった。

 賢人がまた無理矢理に毛布を剥いできたのだ。


「だから寝るなって、今日から学校だぞ。わざわざ同じ学校に配属してもらったんだから一緒に行くぞ」


「何を言っているんだ。俺はニートだぞ? たかが高校が義務教育になったからって俺は学校には行かん。たとえそれが国からの命令だとしても俺は断固拒否する。じゃあ、さっさと勝手に行くんだな。俺は健やかな眠りにつくとするから」


 そうやってさらにアイテムボックスから毛布をもう一枚取り出して再度眠りについた。

 溜息が聞こえた気がしたが俺は何も聞いてはいないさ。


 何が高校が義務教育になったから君も行けだよ。

 ニートに義務教育など関係ない。


 それに俺は健全な睡眠と新作のアニメやラノベ、ゲームを制覇するのに忙しいんだ。

 学校に行く時間なんて無駄すぎる。


 というか、まず高校の義務化ってなんだよ。


 一時期、全国の中高生がダンジョン冒険者に憧れて勝手にダンジョンに潜り込んだ事例がいくつも発生したそうだ。

 その結果、多数の中高生の死者や行方不明者が出始めたようなのだ。

 それが世間では大きな社会問題の一つとして、度々ニュースや番組で報道されていたらしい。


 それに伴って政府はダンジョンに対する年齢制限やダンジョン冒険者になることのできる年齢の下限を早急に設けたそうだ。

 それに伴って高校を義務化することにより、中高生がすぐにダンジョンに関わることのできない環境を無理矢理に造ったらしい。

 それが高校義務化のおおまかな流れだと工藤さんから説明を受けた。


 そうであるならば俺にはもはや関係のない話だし、どうでもいいのだ。

 なぜなら、俺はもはやダンジョンに深く関わってしまっているのだから。


 それでも、いずれ1回くらいは行くべきだと考えている。

 チームを組むにあたって何人かの当てはあるのだが少し人数が足りないのだ。

 優秀そうな人材がいたらスカウトしてもいいかと考えている。


 だから学校に勉強をしに行くのではなく、スカウト目的のためだ。


 来週くらいまでには今まで消費できなかったアニメなどの分はある程度消費できそうなのでダンジョン事務所の設立やチームの人材集めは来週から始める。


 それまでは外界よ、バイバイ。



******************************



 東京で家をゲットしてから3週間近くが経過した。


 いやー、結果としては面白そうな新作のコンテンツなども消費していたらいつの間にか3週間以上も経っていたよ。

 充実、充実。


 まず家をゲットしてから最初の1日は光熱費や口座開設など諸々の必要な契約などを行った。

 俺はあまり世間を知らない単なる高校生なので家を買うってこんなにも色々と契約などの面倒なことがあるなんて知らなかった。


 というのを、最初工藤さんに相談したら工藤さんの秘書の上木さんが『やることリスト』を作って渡してくれた。

 それがなければ、全然なにも知らなかったし分からなかったから、本当に助かった。


 そんな上木さんには後日最近人気だというスイーツを渡しておいた。

 偏見かもしれないが、ああいうお堅い女性ほど甘くて旬なお菓子が好きという印象だからだ。



 その次の日は、恵の好きそうなお菓子を両手いっぱいに持って、恵の家へとひよりを迎えに行った。


 インターホンを鳴らし家の中にお邪魔した瞬間に、恵と恵ママ、恵パパ3人に勢いよく抱き着かれた。

 正直、俺からしたら田中家は第二の家族のような関係だったので少し嬉しかった。


 そして、恵と最後に会ったのは中学2年初め頃だったので、約4年ぶりの再会だった。

 女子の思春期の発育ってすごいですね、思わず変な声が出てしまいました。

 お恥ずかしい限りです…………。


 その後は、恵と恵ママ、ひより作の豪華な食事と共に色々な話をたくさんした。

 この家族に近しい雰囲気に後押しされてなのか、今までに溜まっていた話が互いに止まらなかった。


 ひよりを迎えに来てお礼を言いに来ただけなのに、恵ママに泊っていくように何度も説得されてなんだかんだ、2泊3日の期間滞在した。

 その期間は本当に久しぶりの幸せな時間だった。


 帰り際には、お礼としてひよりがお世話になった分ぐらいのお金を返したかったが恵パパに断固として拒否された。

 しかし、これは予想の範囲内だった。

 俺は、だったらと有名テーマパークの入場券と商品券を数枚渡した。

 これならば、恵が喜ぶだろうと思って渡したが、案の定大喜びしていた。


 その後、惜しまれながらも俺とひよりは恵パパの車で田中家を後にした。


 そして、家に着くとひよりだけでなく恵パパも一緒に家についてきた。

 家の中が見たいそうだ。


 エレベーターに乗り、俺が30階のボタンを押すと二人に「「最上階?!」」と驚かれた。

 俺も最初は驚いたよ。


 最上階に着き、家の中に入るとさらに二人は驚いていた。

 ひよりは予想していた通り、家の中を駆けまわっていた。


 「でも、やっぱり広すぎると掃除が面倒だよね」と恵パパが言ってきて、俺はこの時になって初めて気づいたのだ。

 この家掃除が面倒だ! と。


 まじでどうしようかなと考えていると、恵パパが恵ママか恵が掃除をたまにしに来ることを提案してくれた。

 俺は申し訳ないと思いながらも、「強制です」と言われた。

 でも、これで掃除は何とかなりそうだ。


 そうして、その日は終わった。

 ここまで家をゲットしてから4日目。



 その次の日からは、学校終わりにひよりと恵が仲良く家の家具などを買いに出かけていた。

 学校が休みの日には俺も荷物持ちとして強制的に家から駆り出されていた。


 しかし、工藤さんにむやみにスキルや魔法を使わないようにするべきだ、と言われていたので頑張って手で荷物を持って、こっそりとトイレなどでアイテムボックスに仕舞っていた。


 当分はこんな生活をしていたが、俺の中ではこの間に素晴らしい出来事が起きていた。

 それは何と言っても、東京にはアニメや漫画などのコンテンツが大量に置いてある『秋葉原』があるのだ。


 俺は空いている平日の昼頃を目掛けて何日か通い詰めて様々な物を買い漁っていた。

 そして、家に引きこもってそれを消費する。

 もちろん最強のパソコン装備などもここで揃えた。


 この時ばかりはお金がたくさんあるって素晴らしいと思った。


 けれども、俺がお金を使う使い道って限られ過ぎていてあまり貯金が減っていかないんだよね。

 まあ、無いよりはいいのだろうけど。


 と、言った感じでこんなにも充実した3週間を過ごしていた。


 その期間のほとんどでは、なぜか恵が家に入り浸ってご飯を作ってくれたりしていた。

 恵は花嫁修業の一環だと言っていた。


 もちろんだが、俺には興味がないと初日に公言されましたよ。

 別に告白してもいないのになぜか振られましたよ。


 まあ、そんなことはどうでもよくて、そろそろ新しいコンテンツの消費も目処が立ってきたし、朝のランニングとかダンジョン事務所の設立、チーム人員のスカウトをやっていかなければならないと考えている。


 やはりゲームやアニメばかりじゃなくて、たまには自分の体を動かしたダンジョン探索もしたくなってくる。

 自分自身が強くなっていく感覚はとても楽しいからね。


 ということで、まず初めに賢人にでも連絡をしますかね!


 俺は新しいスマホを取り出して賢人の連絡先を探す。


 って、あれ?

 そういえば賢人の新しい連絡先を俺は知らない。


 そういえば何で賢人は俺の家をまだ教えていないのに家に来れたのだろうか。

 不思議だ。

 って、まあ、工藤さん辺りにでも聞いたのだろう。


 どうしよう、最近家にも来ないから待つにしてもいつ来ることか。


 はあ、面倒くさいけど早くことを進めたいから学校行くしかないか。



******************************



 次の日、俺は久しぶりに朝早く起きてからランニングをしていた。


 そういえば朝のランニングするのって、ダンジョンに落ちたあの日以来だな。

 体力は落ちていない、むしろダンジョンのせいなのか以前よりも体力はついているような気がする。

 そんな感じで軽快に朝のランニングを終えて、家へと帰還した。


 その恰好のまま風呂場へと行き、朝のシャワーを浴びる。

 そして、ランニング前にあらかじめ焚いておいた湯船に疲れた体を沈めた。


 ふー、朝のランニング後のこれが最高なんだよな、はぁ。


 そうして、気を抜いているといきなりお風呂のドアが開いた。


「きゃあーーーー!!」


「って、なんでよ!! 叫びたいのは私の方よ!」


「何言ってるんだ。そして、なぜに恵は普通に人の家の風呂に入ってきてるんだよ」


「それはいいの! それよりも何で蛍はお風呂の電気も点けずに入ってるのよ」


「それが俺の流儀なんだよ。それよりもさっさとドア閉めろよ、寒い。そして、お前はそろそろ服着ろよ、見えてるぞ」


「えっ…………」


 恵は今気づいたようで、顔がだんだんと赤くなっていった。

 そして、勢いよく風呂のドアを閉めた。


「おい、優しく閉めろよな。壊れたらどうするんだ、今は冬だぞ」


 そうドア越しに言うもなかなか返事が返ってこない。


「おーい、聞いてるのか? なんだよ幼馴染に裸見られたくらいで恥ずかしがるなよ。昔はよく一緒に風呂入ってたじゃないか」


 すると、少しだけドアを開き恵が顔を覗かせた。


「きゃあーーーー!!」


「だから、なんで男の蛍が叫ぶのよ!! それで…………どこまで見えた?」


「何も………と、言ってほしいのだろうが俺はそんな空気は読まないぞ。全部見た、すまないとは思っている。そして、早くドアを閉めてくれ、さっきから寒いと言っているじゃないか」


「ふん」


 そう不貞腐れて恵は風呂場の脱衣所を出ていった。

 いや、ドアは閉めてくれないのかよ。


 俺はその後自分でドアを閉めてから再び湯船に気持ちよく浸かっていた。


 そうして、風呂を上がり制服に着替えてからリビングへと向かい、恵が厳選したという食卓テーブルの椅子に着席した。


 しかし、おかしい。

 ひよりや恵の席のお皿には焼き鮭と卵焼き、ご飯に、お味噌汁が置いてある。

 それに対して、俺のお皿には生の卵がゴロンと一つだけ置いてあるのだ。


「おい、恵。これはどういうことかな? 俺は家の中での居場所がないカーストが最下位の父親になった気分だぞ。だが、俺はまだ17のピチピチな高校生だ。こんな仕打ちはないだろう」


「ふん」


 しかし、一切取り合ってはくれない。


 それを見かねたひよりが俺に焼き鮭を半分くれた。


「さすが俺の自慢の妹のひよりだ」


「何なの? 朝から痴話喧嘩?」


「残念だったな妹よ。俺は数週間前に告白をしてもいないのに振られた男の身よ。痴話喧嘩というよりは単純に恵が大人げないだけだ。俺一切何もしていない、そして自分でご飯をよそう、この家の稼ぎ頭。なんと虚しいことだろう。」


 俺はそんな愚痴をグチグチと言いながら自分でご飯を盛るという行動を起こしていた。


 それでも、恵は一切口を聞いてくれず、ひよりは苦笑い、俺は少ない朝ご飯を食べるという気まずい朝ご飯が終わった。


 そうして俺は自分でお皿を洗い、歯磨きをしてから自分の部屋にバッグを取りに行った。

 そこで気づいた。


 お弁当頼むの忘れてた!


 俺は再びリビングへと行くも誰もいなかったのでひよりの部屋へと向かい、ノックしてから開けた。


「きゃあーーーー!!」


「だから、なんで蛍が叫ぶのよ!! 本当にもう………」


「いや、逆に何で恵がひよりの部屋で着替えてるんだよ。お前の部屋は別に自分で作ってただろう」


「違うわよ! ここが私の部屋よ!」


 あれ?


「あっ間違ったわ、ごめん。それでは失礼いたします」


 そう言うと、物を投げつける素振りを見せてきたので俺は逃げるように家を出た。

 弁当はコンビニでいいか、はぁ。


 というか、なんであいつは普通に家に馴染んでるんだよ。

 恵ママもしっかりとしてくれよ。


 そうして、俺は2つの意味で沈んだ気分になりながら高校へと向かった。



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― 新着の感想 ―
このままラブコメ寄りになっちゃうのかなあ そうじゃないところが面白かったのだけどな
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