オープニング前
ようやく撮影がスタートしようとしていた。
世界でもまだまだ数少ないダンジョン内をテレビ局が撮影し、声優アイドルに中のレポートをさせるというものだ。
おそらくそれだけの文言を聞けば批判の嵐となり、スタッフやテレビ局への苦情が鳴りやむことはないだろう。
しかし、それを可能にした存在がいた。
「改めまして、今日はよろしくお願いします」
胡散臭いおじさんが話掛けてきた。
ワイシャツにチノパン、肩にカーディガンを掛けると言う時代遅れまっしぐらなコーディネートをしているテレビ局をお偉いさんらしい。肩書は忘れた。
エーディーやら、ディレクターやら……肩書多すぎて意味が分からない。もっと分かりやすくしてほしいものだ。
せめて「こういうことやってる人でーす」ぐらいに噛み砕いて素人には説明してほしい。
「頑張ります。秋様のために全力で」
「では、ダンジョンの入り口前でオープニング撮影から開始ですので準備お願いします」
「はーい、了解です」
とは言いつつも、オープニングって何を言えばいいのだろうか。
なんとなくの流れはスタッフに説明されているし、事前の資料にも書いてあった。
言えばいい台詞らしいシナリオも用意されており、そのまま喋れば何事もなく終わるのだろう。秋様に迷惑を掛けるわけにもいかないし、その指示に従おう。




