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12話 敵

 『ダンジョンに侵入者。繰り返す。ダンジョンに侵入者…』


 突如として鳴り響く警報アラーム。 

 保健室でトランプに興じていた俺達の中で唯一、ラーニルがあわてふためく。

 

 「うわ!どうしましょう!侵入者ですって!」

 「ラーニル、こんな些細な事で一々驚いていては、立派な大人になれないですわよ」

 「ええ!?『些細な事』ですかこれ!?」


 そう、俺達は心の内で思っていた。

 前に侵入者が来た時は4日もかかった。

 今回もそのくらいかかるだろう。

 

 「まあ、女には余裕というものが必要なんだよ、ラーニル。それと陸、ダウト」

 

 ゲッ、またやられた。

 というか俺はダウトが苦手だ。

 嘘とか苦手だし、すぐ顔に出る。

 そもそも、ダウト!って声に出せないからな。


 「まあ、ちょっとぐらい強い侵入者でも、私達なら余裕だもんな」


 井上が挑発的な笑みを浮かべた。










 俺、一階層のザコキャラの柳川勘蔵やなかわかんぞう

 ある日、突然スライムになってしまった者だ。

 全く、スライムの体は色々面倒だ。

 動き遅いし、触れただけで色々溶けちゃうし。

 本当、人間のままだった片野とやらが羨ましい限りだ。

 

 「ステータス・オープン!」


 

 柳川 勘蔵 レベル3 エーカンダンジョン地下第一階層


 《スキル》


 突撃 溶解 擬態 分裂 言語理解



 文字通り、ザコ。

 ああ、本当片野と変わりたい。

 俺がため息を吐いた時だった。


 炸裂音とともに、ガラスが割れたような音。

 ダンジョンの入り口の結界が破られたのだ。

 もう、既に二度目である。


 「まじかよ、逃げよ」


 当然の判断だ。

 俺の戦闘能力では相手にならない。

 

 「ああ、前みたいに皆無事だといいんだが…」


 そして、手頃な岩を見つけると、俺は吸い付く。

 

 「『擬態』!」


 初級無属性魔法『擬態』。

 詠唱不要で、近くにあるものと同じ色になれる。

 代わりに、一時的に視力を失う。

 俺の体色は岩と同じ茶色になった。

 

 「これより、迷宮攻略を開始する!進め!」


 一人の男の野太い声。

 それに呼応し、何人、何十人もの足音が聞こえる。

 足音は徐々に近づいてくる。

 そして、止まる。俺の前で。

 殺気。

 ヤバイ、ヤバイ、本気でヤバイ。

 頼む、行ってくれ。先へ行ってくれ。

 見つかるな、見つかるな。

 

 「おっと。美味しそうなスライムくんだな」

 「ん?スライム?どれどれ…本当だ。こんな所に。クロウ先輩、まさかこれ食べるんですか?」

 「勿論だ」


 終わった。

 何者かに体を掴まれ、持ち上げられる。


 「くそ、『溶解』!」


 俺は手を溶かす事を試みるが、男の体は全く溶けない。

 これがレベルの差か。


 「腹減ってきたしな。ジーク。食うか?」 

 「僕は別にいりません。っていうかモンスターを好んで食すの、王国広しといえど先輩ぐらいだと思いますよ」


 くそ、何で俺がこんな目に。

 恐怖で見を縮める事しか叶わなかった。


 「いっただっきまーす!はむ」

 

 抵抗空しく、俺の体は宙に浮き、歯らしきものでかみ切られた。


 

 


 





 

2件目のレビューをいただきました。

砂山様、本当にありがとうございます。

今後とも、当作品をよろしくお願いします。

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