石段は叩いて壊す?
「よう、テニム久しぶり」
そう言ってバイロと言う奴がやってきた
「おぅ、久しぶりだな
それにしてもあの戦いはやりすぎだぞ」
「いいんだよ
あれくらいやっておかないと」
「ズルまでして勝ちたかったのか?
まったく大人げない」
え?ズル?
「あっ、やっぱりバレてた?」
「当たり前だろ
リムと一緒に来てたんだろ」
「え?ちょっと
ズルって何?いかさま?」
「なんだ、もう意識を取り戻したのか?
とにかくテニム後で上の階に来い待ってるから」
「おぉ、わかった」
「じゃぁな」
そう言って赤髪は出て行った
「テニムなに今の?」
「どの事だ?
上の階の事かそれともバイロの事か?」
「りょ、両方だよ
ズルって何?上の階って何?」
「じゃぁまずは上の階から説明するか
巧真は扉の向こうから来た時、目の前に
一直線に伸びる石段が無かったか?」
「あぁ、そう言えばあったような」
「で、その階段を上ると
ここのような街があるんだよ」
「それが上の階?
こことどう違うの?」
「ん〜能力者のレベルが違うとか
あと、強面のおっさんは上の階には行けないな」
「どうして?」
「言ったろ、レベルが違うって
レベルが低いと上に上がれないんだ
上がろうとすると
階段の目の前に見えない壁ができるんだ」
「レベルが上がれば上に行けるってことか」
「いやレベルが上がるだなんてことはない
潜在能力ってやつだよ限界があるんだよ」
「バイロは上の住人なのか?」
「あぁ、俺も元そうだ」
「どうして、降りてきたの?」
「いや〜ここの方が俺にあってると言うか
なんとなくだ」
「じゃぁ、ズルって言うのは?」
「あぁ・・俺からは言いにくい
バイロから聞いてくれ」
「なんだよそれ」
「まぁ、ズルが無ければ
巧真の勝ちだったかな?」
「マジで?」
「まぁ、バイロも油断してたしな」
「なんだ、なら俺10連勝してたんじゃん
おしかったな」
「なに言ってんの
あれ勝ってても2連勝だろ」
「え?」
「確かに十人と戦ったけど
戦った回数は一回だから
一回としかカウントされないぞ」
「そんなぁ、俺頑張ったのに」
「まぁ、お陰さまで商民の立場がよくなったのは
事実だよ」
「俺はてっきりあと10人倒せば
神に会えると思ってたのに」
「俺がちゃんとルール教えておけばよかったな」
「あぁ、なんだか疲れがどっと来たような気がする」
「まぁとにかく、俺はちょっと上の階に
行くけど巧真も来てみるか?」
「俺も行けるの?」
「あぁ、おそらく巧真はレベル3だ
だから行けるさ」
「ちなみに、テニムはなんぼなの?」
「俺はレベル4
結構高い方だぞ」
「じゃぁバイロも
てか、あいつの火は一体何?」
「バイロもレベル4だ
火はあいつの特殊能力」
「でもテニムは蒸気を出すのに
水が必要だろ
バイロは火種もいらないの?」
「多分、どこかで誰かが
火を使ってたんじゃないかな
そこから持って来たんだよ」
「便利な能力だな」
「俺もそれは思うよ
ちなみにチコもレベル3だと思うぞ」
「マジで」
階段に座ってるチコの方を振り返ると
俺に向かってVサインをしていた
「取れた腕をくっ付けたりしてたしな
レベル3以上じゃないとできないよ
俺とかはできないけど」
「そうだったんだ」
「とにかく
上の階に俺行ってくるから」
そう言って宿から飛び出して行ってしまった
「あれ?連れてってくれるんじゃなかったの?」
上の階か行ってみるか
「なぁ、チコ上の階に行ってみない
一人じゃ心細いしさ」
すると、コクリと頷いた
「おっマジで?やった
なら行こうぜ」
そう言ってチコの手を掴み宿から飛び出した
飛び出したまでは良かった
「ここはどこ?」
気がつくとわけのわからない場所に出ていた
「方向音痴・・」
「はい、その通りです」
この街は道が入り組んでいて
とても一人では歩けない
宿に戻ろうにも戻り方がわからない
「こっち」
そう言ってチコは俺の手を掴み歩きだした
「おぃ、チコその道はさっき来た道だろ」
「・・それはあっちの道」
「あ・・そう」
そんなこんなで石段の前に到着
後ろを向けばあの扉があり
前を向けば石段が一直線に続いてる
「これ登らないといけないの?」
「そう」
「何段あるんだよ、上が見えないぞ
いや、嘘見えますちょっと大げさでした」
「大丈夫、一瞬だから」
「え?そうなの」
「そう、行こう」
息を切らせながらようやく上についた
「やっと、上についた
チコこれのどこが一瞬なんだ
何百段あったんだろう
数えるの途中でやになったぞ」
「ね、一瞬だった」
「え?どういう意味?」
「何でもない」
あたりを見回すと
目の前にはまた石段が一直線に伸び
周りは下の階と比べて道幅は広く
人の数も少ない
ただ武装した人間は少ないが
変な人が多い
いや変ではないんだが
ジャグリングをしている人の
手の数が明らかに多いのがいたり
郵便物が空を飛んでいたり
中でも驚いたのが
歩いてもいないのに
おじさんが物凄いスピードで
スライドしながら俺達の目の前を
通り過ぎて行った事だ
チコの様子を見ると
相変わらず無表情なのかと思ったが
どうやらそのまま固まっているようだ
「おぃ、チコ大丈夫か?」
「大丈夫」
「すごい所だなここは」
目の前には石段が続いているが
石段の上には城のようなものが建っていた
「チコ、あれは何だ?」
「・・わからない」
「そうか
ところでテニムはどこに行ったのかな」
「きっとバイロのところ」
「いや、それはそうだけどさ
どこかなって思って」
「そう」
何となくだがここに来てから
俺の力が膨れ上がってるような気がしていた
「どうかした?」
「え?いや何でもない」
しばらくその場で立ちすくしていると
「おぅ、お前等が来てるってことは
テニムも来てるってことか?」
どこからかバイロの声が聞こえてきた
あたりを見回すと
建物の上にバイロがいた
「あんたに会いに行ったと思うんだけど
会ってないの?」
「なら、家に向かったのか?」
そう言ってあたりを見回し始めた
「家はどこにあるの?」
「あぁ家?えぇっとだな・・どこだろ」
「もしかして迷子か」
「違う、テニムを探して
あたりを走り回っていたら家に帰れなくなったから
高いところから家を探してるだけだ」
「方向音痴だな」
だなんて馬鹿にしていると
チコが
「似た者同士」
とボソッとつぶやいた
「坊主、礼儀を知らない奴だな」
「そっちこそスポーツマンシップを知らない奴め」
「はっ、お前になんかズルをしなくても
楽勝で勝ててたね」
「口先だけではなんぼでも言えるよな」
「試してみるか?」
「もちろん」
チコはそれを聞くと
俺の近くから離れて物陰に隠れた
バイロは拳と拳をぶつけあい
両手に火を着火させた
「武器は持たなくていいのか?」
「いらないよ、そんなの必要な時
出せばいいだけだし」
「それと、ひとつ言いたいことがあったんだ」
「何さ聞いてやるよ」
「目上の奴には敬語を使いやがれ」
そう叫んで建物の上から飛び降りてきた
「俺は50歳過ぎた奴にしか
敬語は使わねぇんだよ」
俺は下でバイロを待ち構えた
ところが
「コラ━ !!二人ともこんな所で
力を使って戦うな」
テニムが向こうから大声で叫んでやってきた
「テニム?」
「坊主、何よそ見してやがる」
「ちょっと待ってテニムが・・」
バイロは気づいていない間に合わない
そう思い
バイロのパンチをかわしその腕を掴み
落ちてくるスピードを利用し
地面にバイロを背中から叩きつけた
「がぁっ・・」
「これぞ柔術成り」




