苦しい時こそ満面の笑顔
俺は今、異端の門の前にいる
目の前から見るとやけにでかい
変な絵柄もなくただ石でできている
押せば簡単に開くと言うが
本当に開くんだろうか
気合いを入れて力いっぱい押したのだが
本当に簡単に開いてしまい
バランスを崩すくらいだ
あたりを見回すとそこはもう草原ではなかった
目の前には一直線に伸びる石段があり
石段の左右には
商店街やレンガでできた家などが広がっていた
そして、背中に斧を持つ人や
腰に刀やナイフをぶら下げた武装した
人たちがやけに目立った
しばらく、ぶらぶらとしていると
細い道から広い場所に抜けた
そこの中心にはどでかい噴水があった
思わず見惚れてしまうほどきれいな噴水だ
そんな事を思っていると後ろから方を叩かれた
振り返ると見上げてしまうほどの身長で
強面の太ったおじさんが
「おぃ、商民のくせになに道を
塞いでるんだよ」
そう言って片手で俺を持ち上げ
噴水の方に投げ飛ばした
噴水に激突した俺は
結構痛いぞ、なんて言う余韻には浸れず
気がつくとおじさんはナイフを俺に向かって
投げてきていた
俺はなんとか力を使い避けることができた
ナイフは噴水に突き刺さり
そこから水が漏れ始めていた
「ほう、レベル1はなんとか使えるみたいだな」
レベル1?何のことだ
けど、何となくだがあいつの正体がわかってきた
「あ、あなたは、異端者なのですか?」
「異端者だぁ?てめぇ、扉の向こうから来たのか」
「は、はいそうです」
そう言うと、突然背中から斧を取り出し
俺に襲いかかってきた
俺は力を使い避けようとしたが
力を使ったのにも関わらず
おじさんのスピードも落ちなくて
避けれないそう思った時
とっさに何もないところから
俺は刀を出し鞘で斧を止めた
斧の衝撃は重く片膝を付くほどだった
「ほぅ、変った力を使ってるな」
何がどうなってるんだ
周りの人間もただ見ているだけだし
誰も助けようとはしてこない
「見たことの無い刀だ
扉の向こうではそんなものを使って
生活をしているのか?」
この人はいったい何者なんだ
どうして、俺を襲ってくるんだろう?
駄目だ、頭がうまく働かない
「苦しいか?
今楽にしてやる」
そう言って少し離れ
何もない所で斧を振り下ろした
すると何かが衝撃波のような物が
飛んでくるのが見えた
何かはわからないがとにかくあれに当たるとヤバい
俺は片膝を付いた状態で刀を腰のあたりに構え
衝撃波が来るのを見計らい
鞘から刀を抜いた
刀によって衝撃波は横にそれ噴水に直撃した
噴水は粉々に砕けた大量に水が噴き出ていた
頭がガンガンする
視界が揺れてくる
意識が遠のいて来る
あれをもう一度くらったら防ぎきれない
そう思った時、周りが突然蒸気に包まれた
周りも混乱している
そして、俺は蒸気で顔が見えないが
誰かに担がれて
その場から脱出した
「だ、誰だ」
「いいから、黙ってな
安全なところまで連れて行く」
俺はその後意識を失った
気がつくと俺は布団の上で寝ていた
屋根はやけに高い
横を向くと髪はショートで
背の小さい女性が
地べたに座りながら俺をジッと見つめていた
「うおっ !!」
俺は驚いて飛びのいたが
彼女は眉ひとつ動かさず
無反応だったが
突然立ち上がり
軽い駆け足で部屋を出て行った
すると、向こうで何やら会話が聞こえてきた
「ん?気が付いたか
よし、今行く
わかったから服を引っ張らないでくれ」
二つの足音がこっちに近づいて来る
一人はさっきの女性だったが
もう一人は髪は坊主に近く
身長も俺と同じくらいかな?
体格はがっしりしていて
おそらく三十代前半だろう
「気が付いたか?」
「ここは、どこだ?」
「宿泊施設だよ
俺の家は宿屋なんだ
安全な場所まで連れて行くって言ったろ?」
「俺を助けてくれたのか?」
「ついでに怪我の治療もな
よくもまぁ、噴水に頭ぶつけておいて
あそこまで戦ったな」
頭に手をやると包帯がついてる事に気が付いた
「最初っからフラフラしてたのに
あいつの攻撃を防いだのはすごかったな」
「あいつはいったい何者なんだ?」
「知らないのか?
本当に扉の向こうから来たのか」
「あぁ」
「あいつは兵士だよ
しかも結構有名だな」
「兵士?ここでは戦争でもあるのか?」
「なぃなぃ」
「じゃぁなんで兵士なんて」
「戦争があれば戦うかもしれないけど
今の兵士達の仕事はリングで戦うことだよ」
「は?」
「とりあえずついて来な見してやるよ
あぁ、それから異端者だなんて言葉
使うんじゃないぞ
そんなの使うのは扉の向こうから来たやつだけだ」
「ならなんて言えばいいんだ?」
「そうだな能力者かな?」
「なんで疑問形なんだ?」
「ここにいる人が全員そうだからな
これと言って名称が無いんだよ」
「それじゃぁあなたも?」
「そうだよ、ちなみに俺の名前はテニム
この子はお前と同じ宿泊者でチコ」
「俺の名前は巧真」
「変わった名前だな」
「ここではそうだな
みんな、能力者なのか」
「そうだよ、異端者だなんて呼ばれたら
ちょっとムッとくるぜ」
「そうか、ごめん」
「いいさ
それより早く行こうぜ闘技場」
「あ、あぁ」
「チコお前も来るか?」
すると、チコは首を横に振るだけで
それ以外の動作は何もしなかった
「そうか、じゃぁ留守番よろしくな
ほら巧真行くぞ」
そう言って俺とテニムは出発した
「なぁ、テニム?」
「なんだ?」
「テニムの力ってなんなんだ?」
「はぁ?なんで?」
「いや、聞いてみたかったから」
「力って言っても色々とあるぜ
まぁ、巧真を助け出す時にも使ったな」
「あの蒸気か?」
「そう、でもあれは水が無いと
出せないんだよ」
「そうなんだ」
「けど、巧真の能力の不思議だよな
あの刀はどこから出したんだ?」
「いや、俺もあの時は必死だったから」
「もしかして、自分の力が何かわからないのか」
「そう言ったらそうだな
使える時と使えない時があるんだよ
使える時は体が教えてくれる」
「変わってるな」
「そうなの?」
「周りの奴等はヒョイヒョイ使ってるけどな
まぁ限界はあるけど」
「そういや
あの斧を持ったおっさん
力を使ってもゆっくりに見えなかったな」
「はぁ?そんなの当たり前だろ
向こうも使ってるからだよ」
「あぁ、そうか」
「本当に何も知らないんだな」
「まぁね、来たばっかしだから」
「そうだな
あぁ、そんな話しているうちに
着いたぞここが闘技場だ」
目の前を見ても何もなかったが
ただ下を見ると
地面にコロッセウムが埋まっているかのように
いや、地面を掘ったのか?
とにかくコロッセウムを
上から見ているような感じのものが
下に広がっていた
「すごい」
「だろ?」
「でも、ここでもしかして
戦いでもやるのか?」
「そうだよ」
「そんな、死人が出るんじゃないのか?」
「いや、めったにないな
その前に相手が降参するか
審判が止めに入る」
「そうなんだ」
「あぁ、だから兵士たちは命張ってる
俺達が一番偉いと思って
俺達商人を見下すようになったのさ」
「そうだったのか」
「さてと、帰るか」
「もう帰るのか?見ていかないの?」
「見ていきたいのか?」
俺は何と言うか血なまぐさいのは苦手だ
「あぁ・・いやいいわ」
「じゃぁ、帰ろう」
帰り道は闘技場の中の話や
ここの街について色々と聞かされた
「ところでチコの事なんだけど」
「どうかした?」
「テニムの妹じゃないのか?」
「いや、道端で倒れてるのを見かけて
拾って来たんだよ」
「なんだそれ?」
「いや〜なんか小動物みたいでかわいそうでさ」
「捨て猫かよ!!
チコの能力っていったいなんなんだ?」
「それが俺も知らないんだよ
力を使っているところ見たことないしな
あと声を発してる所も・・」
「俺、チコに嫌われてるんじゃないかな?」
「そうか?俺には好かれてるように
見えるけどな」
「どこが?」
「チコってめったに部屋から出てこないんだぜ
それなのに巧真が気が付いた時に
珍しく部屋から出て来て
俺を呼びに来ただろ」
「へぇ〜・・え?」
「どうした?」
「チコって違う部屋があるんだよな?」
「ある訳ないだろ
そんなに俺の家がでかく見えたか?
同じ部屋だぜ」
「うそ」
そう言えばあの部屋もう一個
布団があったような気が・・
テニムの顔を見るとやけにニタニタしているような
「大丈夫だ
若い男女が二階で何をやっていようが
俺は気にしません」
「冗談だろ
いくらなんでもチコはまだ若いだろ」
「いや、巧真
お前も若いだろ
どう見たって二十はいってないだろ」
確かに十八歳です
「たしか、チコ
名簿には十九とか書いてあったかな?」
「えっ俺より年上?
それ嘘だよ絶対嘘だ経歴詐称だよ」
「いや〜わからないぞ
まぁとにかく家に着いたら
力について教えてやるよ」
なんだかやけに落ち込むな・・




