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雨の日の前日から髪がよじれます

この村にやってきて初めて雨が降り始めた

「それじゃぁ、巧真君これから

 村の集会があるから行くね」

「はい、わかりました

 俺も出かけるのでそれじゃぁ」

トカゲの襲撃から何日かたった

そしてそれ以来、雨が降り続いている

俺はあれ以来、村の中心部には行っていない

行けば村の人たちから迫害される

そう思うと怖くて行けない

村長とも何か隔たりができたように感じる

ただ唯一、牛だけはいつも通りに接してくれる

雨が降り続くもんだから牛に小屋を作った


村長はここ毎日集会で朝になるとすぐに出かける

俺を今後どうするかを

話し合っているのかもしれない

集会で何を話してるのか聞きたいが

聞けずにいる


あれから、彼女も出てこないし

俺はどうすればいいのか悩んでいる

誰にも相談できないでいる

村はずれで一人で悩んでいると

誰かが後ろから近づいて来るのを感じた

「なんか用ですか?」

そう言って俺は後ろを振り返ると

雨除けを着たおじさんがいた

「よう」

「怪我はもういいんですか?」

「あぁ、意外と傷は浅かったみたいだ」

「そうですか」

「しかし、異端者って言うのは便利だな

 雨除けを着なくてもいいのか」

俺はあれ以来、少しなら力を使えるようになっていた

「えぇ、これくらいの事なら」

雨が降っているのに俺は全く濡れない

雨が俺を避けて降ってくれる

いや、正確には俺が俺の周りに見えない壁を作った

「そっか」

「俺なんかと話をしてていいんですか?」

「どうして?」

「だって・・」

俺が続きを言えないで困っているのを見て

「村人たちがお前をどう思おうと

 俺には関係ない所詮は個人の価値評価だ」

「はぁ・・」

「それに物好きな奴が個々の価値評価だけで

 相手を見下したりしていいと思っているのか

 それは物好きの名が泣くってもんよ」

「はぁ、そうですか」

そんな、曖昧な返事をしていると

突然、本題をぶつけてきた

「巧真君・・だったっけ?

 君さ、日本から来ただろ」

俺はその言葉に驚いた

「ど、どうして?」

「いや〜、この世界に無い

 名前だなって思ってたんだけど

 お金だのマグロだの言ってたしさ」

「どうして、日本だと思ったんですか?」

「まぁ、決め手は刀かな?

 ありゃ、どう見たって日本刀だ」

「いや、そうじゃなくて

 日本だなんて言葉どうして知ってるんですか?」

「俺も、日本から来たんだよ

 俺の名前は甘次郎、名前の由来は二十二男坊だから」

「にじゅっ・・」

「なんだぁ、その目は疑っているのか」

「いや、驚いているんですよ」

「いや〜日本から来たって言っても

 誰も信じてくれなくてさ君がいて本当に良かったよ」

「俺だけじゃ無かったんだ」

そう思うと何となくホッとした

「ところで、また鍬を刀に変えたり

 できないのか?」

「それが、できないんですよ」

「じゃぁ、あの時の自分の状態はどうだったの?」

「あの時は、とにかく村を守ろうと必死で

 おじさんが倒れた時に感情が

 高ぶったような気がしました」

「君の力は感情で左右されるのか

 じゃぁその時の事を思い浮かべて

 力を使ってみたらどうなんだ?」

「俺も試してみたんですけど

 それで、俺の頭の上に見えない壁を作るだけなんですよ」

「そっか・・」


「あの、俺も聞きたいことがあるんですけど」

「ん?なんだ」

「か、神様って信じますか?」

そんな質問をするとなんかやな顔をされた

「いや、そう言う訳じゃなくて

 もちろん俺だって信じていませんよ」

「ここの世界では未来を見通すことができる

 いや未来を創っている人がいる

 それをこの世界では神と呼んでいる」

「未来を創る?」

「あぁ、本当かどうかは知らないが

 未来を自分の好きなように

 変えれる人がいるらしい」

「俺は信じれません」

「俺だってそうだよ

 でも、実在したら今回の事件も神によって

 創られたものかもしれない」

「まさか、彼女が・・」

「彼女?」

「俺、そんな人に会ったんです

 ここにいてはいけない、

 早くこっちの世界に来い

 この村は滅ぶだとか俺に言って来たんです」

「この村が滅ぶ」

「でも、それは俺が食い止めましたよ」

「そうでもないかもしれない」

「え?」

「つまり、神はこの村を滅ぼすと決めたんだろ?

 ってことは今度はトカゲではないもので

 滅ぼすのかもしれない」

「まさか、運命じゃあるまいし」

「そうだよ、まさに運命だよ」

「でも、運命は変えれるんじゃ」

「まさか変えれると本気で思ってるのか?

 変えようと思っていること

 自体が運命だとは思わないのか?」

「それに、運命は何本にも枝分かれしていて・・」

「それを神が一本にしたらどうなる

 それが未来を創ると言うことだよ」

「そんな」


「とまぁ、そんなことより

 俺は村に行かなくちゃな」

「どうして?」

「なんでも、川の水があふれる寸前なんだそうだ」

「川?川なんてありましたか?」

「あるだろ、広場の真っ二つに割っているだろ」

「そんなのありませんよ」

それを聞いた甘次郎さんの顔色が変わった

「なんだって?」

「え?無いですよね?」

「そうか、もともとはなかったのか」

「は?」

「いいか、今は川が広場にあるんだ

 そして俺達は昔からそこに川があると思っている」

「何を言ってるんですか?」

「いや、疑問に思ったことは前にもあったんだよ

 俺は毎日のように日記を書くようにしてるんだ

 そして日記にはある場所に

 でっかい畑があったと書いてあったが

 そんな場所にはそんな畑なんてないんだよ

 そして、もともと、ないと俺も思っていた」

「どういうことですか?」

「神は未来だけでなく過去も創れるってことだよ」

「まさか、信じられない」

「どうして、信じない?」

「出来すぎてる、どうしていままで

 そんな事に気付かなかったんですか?」

「そんなの簡単だ疑問に思わなかったからだ」

「どうして疑問に思わなかったんですか?」

「過去まで修正されてるんだぞ

 無理に決まってるだろ」


「俺はこれからどうすればいいですか?」

「わからん、それは自分で決めろ」

「あの、甘次郎さんは集会に出てるんですか?」

「あぁ、出てるよ」

「そこでは、言ってい何の話をしてるんですか」

「今は川について話し合っている

 この前まではお前について話し合っていたがな」

「やっぱり」

「そう落ち込むな、みんながお前を追い出せと

 言ってるわけではない」

「そうなんですか?」

「まぁ、村長だけなんだけどな」

「やっぱり」

「この村嫌いになったか?」

「そんな事はないです、ただ

 もう、この村に俺の居場所がないんじゃないかと思って」

「そうかもしれないな」

「でも、この村を滅ぼすわけにはいかない」

「それは無理だろ

 これは運命だからな」

「何か手はないんですか?」

「無いと思うけどな、それじゃ俺は村に行ってくる」

そう言って村の方に歩いて行ってしまった


俺はどうしたらいいんだ?

この村を出ていかなくてはいけないのか?

やっぱりこの村は滅びるのか


雨が強く降ってきた

広場では村人たちが一生懸命

砂袋を積み上げていた

「ケイトさん、これ以上は無理だ」

「大丈夫だ、まだ砂袋はある

 最後まで積むんだ」

そこへ、甘次郎が到着した

「ケイトさん」

「おぉ、来たかこの水位の高さを

 どうにかしたいんだ何か案はないか?」

「ん〜そうですね」

そう言って川を覗きこもうとすると

突然、地面が揺れ始めた

「何が起きたんだ?甘次郎さん」

「俺は何もしてない」

ただ、水位が急激に減っていき

流れが穏やかになってきた

「どうなってる?」

「わからない」

ただ上流のほうを見ると

大量の土砂が流れているのが見えた

「やばい、鉄砲水だ」

「鉄砲水?」

「土石流だよ !!

 みんな死にたくなかったら

 なるべく川から離れて

 これで村を滅ぼすつもりなのか」

そう言って全員が川から離れ始めた

そんな中、一人川に向かう奴を甘次郎が見かけた

「巧真君・・」


俺は土石流の周りを見えない

壁で覆い始めた

すべてを抑えることはできない

ただ村を守ればいいんだ

だから土石流のルートを変更させた

村から外れるようにした

地響きも納まり俺は一安心した

力を使うと疲れがたまる

周りからは村人たちの視線が痛かった

俺は一言も話さずこの場を離れようとした

すると、村長がやってきた

「俺、この村から出ていきます」

「どうして、ここにいればいいじゃないか

 村のみんなには私からちゃんと説明するから

 巧真君はこの村を二度も救ったんだぞ」

「だとしても

 これ以上この村に迷惑はかけれません

 あ、あと牛のことよろしくお願いします」

村長がまだ何か言いたそうだったが

俺はそれを無視し広場から立ち去った


俺は向かうところは決まっていた

異端の門だ

しばらく進むと甘次郎さんが後を追いかけてきた

「どういうつもりだ」

「何がですか?」

「どうして土石流を受け流した

 あれで村が壊滅しても被害はそんなに出なかった

 これで村が滅んでも

 復興にはそんなに手間はかからなかった

 この後この村に何が起こるか分からないのに

 それを君がまた守るとでも言うのか?」

「大丈夫です

 もう村に災いは起きないはずです」

「なぜ」

「彼女はあなたは危険とこの村にいてはいけない

 村は滅びると言ってたんですよ

 つまり、俺がこの村にいる限り災いが起こるんですよ

 俺がいなければ村は滅ばない」

「なるほど」

「運命だなんてこんなものですよ」

「そうでもないぞ

 結果的に君は向こうの世界に行くことには

 変わりないんだから」

「そうかもしれませんね

 まぁ、ここにはもう戻りませんよ

 それじゃ、行ってきます」

今まで雨を降り続けていた雲の間から

強い日差しが差し込み始めた

そんな中俺は異端の門へ向かって行った



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