行きは良い良い帰りは疲れる!!
「おぉ、巧真君どうだった?」
「ケイトさん、あれのどこが村はずれなんですか
俺達、結構歩きましたよ」
牛と俺はかなり息を切らしていた
「うん?そうかいどこまで行ったんだい?」
「えぇっと、異端の門まで」
そう言うと、ケイトさんの顔が一瞬曇った
「あぁっ、ごめんなさい」
なんで、俺謝ってるんだ?
「うん、いいよ、いいよ
それあの人からの捧げものだね
預かっておくよ」
「え?なんで知ってるんですか?」
「うん?だってさっき来たから」
「もう来てるんですか?」
「うん、多分そこらへんにいるんじゃないのかな?
それじゃ、この捧げものを鍋に入れてくるから
そこら辺で遊んでなさい」
そう言ってケイトさんはどこかへ行ってしまった
俺はとりあえず牛を
ケイトさんの家に置いて来ることにした
家に到着し、しばらく考え事をしていた
今、俺が隠し持っている薪の事
異端者について
人じゃありえないことをする
一体どんな事をするんだ?
俺も異端者なのか?
ケイトさんまであんな顔をするほど
異端者はこの村では迫害されるのか?
考え事をしている俺が心配になったのか
牛がすり寄ってきた
「牛・・異端者ってなんだろうな」
「知りたい?」
気がつくと目の前にあの女性が立っていた
だが今回は彼女のキレイな声も聞こえる
ただ俺は茫然としていた
「知りたいですか?」
よく状況が理解できない
どうして、俺はいままで彼女に気づかなかったのか
「あの、聞いてますか?」
「はい?」
「まぁ、いいです要件だけ言います」
「要件?」
「正直に言います。
あなたは、この村で言う異端者です
そろそろ、力が目覚める頃です」
「え?」
「ですから・・」
彼女がそう言いかけた時
ケイトさんが俺を呼ぶ声が聞こえた
「それじゃ、私はこれで
それから私がここにいたと言うことはご内密に」
そう言って彼女は消えたしまった
何だったんだ今の?
牛は不思議そうにこっちを見ていた
「牛、今の見たか?」
そんな事を聞くと
俺の頭の中に彼女の声が聞こえてきた
「ちょっと、何はじめから
約束破ってるんですか?」
「え?どこかで見てるんですか」
そう言ってあたりを見回しても誰もいない
「ご内密って言ったじゃないですか」
「そんなの知りませんよ」
「でも、残念でした
私の姿はあなたにしか見えませんから」
「そんなの信じませんよ」
「そうですか、ならこっちに来てください」
そう言うと、突然俺は何か見えないものに手をつかまれ
引っ張られどこかに連れてかれた
そんな中、ケイトさんはようやく家の
裏庭に到着し巧真がいないことに気づく
「あれ?おぃ、牛
巧真君ここにいなかったか?」
牛も首をかしげるだけだった
俺は人気も何もない所
まで連れてこられた
「あの、どこまで連れて行く気ですか?」
俺は見えない何かに話し掛けた
「まぁ、ここまで来れば大丈夫でしょ」
そう言って、手を離した
すると、また目の前に彼女が現れた
うまく状況が理解できない
俺の頭がおかしくなったのか
「大丈夫、あなたの頭は正常です」
「え?」
「今、私とあなたは通信中なのだから
心の中で思っていることも伝わるの」
??
「今、通信を切りましたから大丈夫ですよ」
バカ、アホ、マヌケ
「あぁ、そんな・・ひどい」
通じてるじゃん・・
「いえ、あのそうじゃなくて」
「誰ですか、あなたは?」
その質問に対し彼女は悩んでいた
そして、ようやく出てきた答えはあまりにも
理解できなかった
「えぇっと、私は神様です」
・・・
「あ、でも別に変な宗教とかじゃないですからね」
「ならどういう意味ですか?」
「えぇっと、そんままの意味なんだけど」
そう言って、彼女はまた考え込んでしまった
これじゃらちが明かない
「異端者って一体なんなんですか?」
「えぇっとね・・」
話が進まない
すると彼女は突然、少し離れ
まるで、ピッチャーが投げるちょっと手前みたいな
形になり
「とにかく、これでも喰らいなさい」
そう言って手に何も持っていないのに
手を振り下ろした
いや、確かに何も持っていなかったはず
それなのになぜか刃物が飛んでくる
マジで?
そう思ったとき、一瞬だが刃物が止まってるように感じる
どうなってるんだ?
刃物を避けるか取るかを考える時間まである
いや、取るのは危ないだろう
そう思い、俺は避けた
「ちょっと、なんで避けるのよ」
危ないじゃないか !!
そう言おうと、口を開く前に彼女が言ってきた
「いや、危ないから・・」
「普通なら取るでしょ?」
「いや避けるだろ」
「そう、おかしいわね」
そう言って彼女は首をかしげた
それにしても、今の感覚は?
「あっ、そうそう何か感じた?」
彼女はやけに目をキラつかせ俺に聞いてきた
「飛んでくる刃物が一瞬だけど
止まってるように感じた」
「そうそうそれから?」
「いや、それ以外には特に」
そう言うと、彼女はなんだか残念そうに肩を降ろした
「でも、これが異端者と何が関係あるんですか?」
刃物が飛んでくるんだったら
普通の人間でも避けるはずだし
「そう、ならこれは?」
そう言って彼女は右手を振り始めた
すると、俺は後ろを振り返ってもいないのに
後ろから刃物が飛んでくるのがわかった
俺は避けるために必死にジャンプした
そしたら、俺は見事な宙返りをし着地した
「どう?異端者の意味わかった?」
何となくだが理解した
無意識のうちに俺は力をコントロールしている
手や足を動かすのとほぼ同じことだ
「これだけじゃないんだけど
今はこれだけでいいでしょ?」
「これ以外にもあるのか?」
「そうよ、こんなのみんなできるんだから」
「異端者はあんたみたいに突然消えたり
現れたりできるのか?」
「これは私だけの能力
個人によって違う能力も出てくることもあるの」
「俺もそんな能力があるのか?」
「いつかね、でも
個人の特殊能力が出てくる人は少ないの」
「そうなの」
「とにかく、あなたはこの村にいてはいけないの
早くこっち側に来なさい」
「なんで?この能力なら別に隠し通せるじゃないか?」
「そうじゃないの
とにかくあなたは危険なの」
「危険?どうして」
「この村にあなたはいてはいけないの
あのトカゲがいい例ょ」
「トカゲと俺に何の関係がある」
「分からないの?トカゲはあなたが作り出したと
言ってもいいくらいよ」
理解ができない
俺が作った?何を言ってるんだ?
「それにあの村はそろそろ
トカゲ達に襲撃されるはずよ」
「なんで!?」
「なんでも、そういう風になってるから」
「それなら、助けに行かないと」
「そんなの駄目よ、
あの村は滅ぶんだから」
「だったら、なおさらだよ」
そう言って俺は村に向かって駆け出した
「ちょっと、行ったら駄目だって
あなたは、その村にいてはいけないの」
村につくとひどい有様だ
広場の方では火の手があがり
まだ悲鳴が聞こえる
俺は広場に向かった
向かう途中
その場に倒れている人や
逃げたす人達とすれ違った
広場につくと
そこにはたくさんのトカゲがいた
そして、トカゲと必死に戦う人々もいた
その中にケイトさんやあのおじさんもいた
俺もその場に落ちている鍬を拾い
力を使おうとした
しかし、力がまったく使えない
さっきまで使えていたのに
「どうなってるんだ」
そんな事を思っていると
向こうでおじさんがトカゲに肩を噛まれていた
俺はそれを助けようとその場に向かい
トカゲの首を目掛けて鍬を思いっきり振り下ろした
トカゲの首の骨が折れる感触が鍬を伝って感じた
「大丈夫ですか?おじさん」
おじさんは悲鳴をあげ肩を押さえながら
のたうち回っていた
その時、俺は体の底から
何かが込み上げてくるものを感じた
俺は手に持っていた鍬を刀に変え
トカゲの群れに向かっていった
少し集中すればトカゲの動きが遅く見える
トカゲの攻撃をかわし
それに合わせてトカゲに攻撃をする
一撃でトカゲを倒すことでさえ楽に感じた
ただまわりから見ると
俺は尋常じゃないスピードでトカゲを
倒しているように見えていた
最後の一匹を倒す頃には俺の体は
トカゲの血で赤く染め上がっていた
しばらくすると、けが人などを
治療し始めた
ただ、俺と目を合わせようとする人は誰もいなかった
そこに、逃げ出していた人達も
何かを袋に入れて戻ってきた
袋の中身はトカゲの子供だった
その袋の中から一匹取り出し
その村人は突然、踏みつけ始めた
「おぃ、何やってるんだよ」
俺は必死に静止させようとした
「じゃまをするなこいつらのせいで
俺の妻と息子は死んだんだぞ」
「だからと言ってこいつ等に責任はないだろ」
「やかましい、こいつらのせいで村もめちゃくちゃになったんだぞ」
「なんだと、村を見捨てて逃げ出したのは
お前たちの方だろうが
トカゲと戦おうともしないで逃げ出して
弱い者に対して力を振るうだなんて最低な奴がやることだ」
「異端者のお前なんかにそんなこと言われたくないね」
その言葉に対し俺はキレた
「ふざけやがって、お前の妻や息子が
殺されそうになった時お前は何をしてた
どうせ、逃げ腰なお前の事だ
その場から逃げ出したんだろ」
すると、ケイトさんがやってきた
「巧真君、言いすぎだ」
「でも・・」
「みんながみんな強いわけではない
逃げ出す奴もいる
それに彼は村の掟に従っているだけだ」
「掟?」
「根絶だよ、この村に災いをもたらすものは根から絶つ
この村が長く平和だった理由さ
肉食動物がいなかった理由でもある」
「だからと言ってこいつ等まで殺すんですか」
「大人になってこの村を襲わない保障はどこにもない」
俺は言葉が返せなかった
「とにかく、私の家に戻ってなさい
体が汚れている」
「わかりました」
そう言って俺は周りからの冷たい目線を感じながら
広場から立ち去った




