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引きこもり生活に終止符を・・

「世界は、滅ぶし

 水がなくなれば、俺は死ぬ」

何もしゃべらないチコに

さらに、巧真は話を続けた

「しかも、それを阻止しようとしているのも

 実は、俺の分身

 意味わかる?」

「・・・どういう意味?」

「本来なら、神様と俺の争いのはずなのに

 俺と俺が争っているんだ

 つまり、神様にもう世界をまとめる

 力は残っていない

 神様の持っている龍はお飾りになってしまったんだよ」

「龍?」

「・・あぁ、いやなんでもない」

「どうにかできないの?」

「俺がもう一人いる意味わかる?

 あいつも、分裂ができるって言う意味だよ」

「でも、分裂ができるのは

 オリジナルだけだってさっき」

「じゃぁ、オリジナルはどうやって生まれた?」

「それは・・」

「それと同じだ

 突然、分身ができる奴が生まれてもおかしくはない」


巧真は、頭をグッタリと下げた

「なぁチコ・・どっちがいいと思う?」

「どっち?」

「別に、神様が死んでも俺が死んでも

 この世界が滅ぶわけじゃない

 ただ、神様が死ぬと社会が崩壊するんだ

 そして、新しい、社会が出来上がる

 俺の分身が死ねばこれまでの社会が続く」

「私はもちろん」

言い続けようとするチコに

巧真は割り込むように言った

「規律か自由か」

「え?」

「神様が生き残れば、殺人も起きないし

 なにしろ平和だ

 ただ、それは俺たちにとっては、

 退屈なことなのかもしれない

 俺の分身が生き残れば、

 戦争、殺人、暴行、強盗、全てが起きる

 平和なんて言葉は、ないかもしれない

 でも、すべての欲求が満たされる

 退屈なんて事もなくなる

 自由を手に入れることができる

 チコはどっちがいい?」

両手で頭を抱え、悩む巧真の姿を見て

チコは何も言わず帰ろうとしていた

「え・・なんも助言もなし?」

「私は、自分の立場からしか言えないから

 私の立場上では、こっちに味方してほしい」

「でも、俺にはもぅ力はない」

「そう思ってるだけ

 それと、自由って本当にそんな事?

 巧真がここで踏みとどまっている理由はそれでしょ?

 どうしたいかは、自分で決めて」

そう言い残し、チコは家から出て行った

破壊した扉も直さずに・・




壁の向こうでは、

トイは、なりふり構わず銃を発砲し続けていた

弾が切れては新しいのを作り出し

また切れては新しいのを作り出す

それを繰り返していた

巧真は、地べたに座り込み

自分の頭上を旋回する、龍を見つめていた

「そろそろ、行くか」

そう言いながら、巧真は、立ち上がり

トイに合図した

「トイ、行くぞ」

トイは駆け足で、近寄ってきた

巧真のそばに近寄ると服の端をつかんだ

その瞬間、巧真とトイは消えた


巧真たちは、下の階の石段の前に現れた

石段には、何やら懐かしい

強面こわもての太ったおっさんが指揮をとる

部隊が、巧真たちを取り囲んだ

「よぉ、おっさん

 久しぶりだな、今回は木刀じゃないぜ」

巧真は、刀を取り出し

鞘から抜き、鞘をその場に放り投げ

石段に向かって走り出した

「かかれ━!!」

おっさんの図太い掛け声と同時に

巧真たちに部隊が襲いかかって行った




村長は、家の扉が壊れているのに驚き

「巧真君、大丈夫か?」と言いながら家に入ってきた

一方、巧真は家の掃除をしていた

「こ、この扉は、子供たちがやったのか?」

「いやいや、違いますよ」

「しかしだな・・」

そう言いながら、下に目線をやると

壊れた扉の横に、巧真の物らしき荷物がまとめてあった

「巧真君・・まさか」

「え?」

「また、出て行くつもりかい?」

「えぇ、そのつもりです」

「待ってくれ、子供達には、

 もぅこんな事やらせないから、行かないでくれ」

「大丈夫ですよ・・ケイトさん」

今の言葉に、理解ができないのか村長は固まり

巧真は照れ隠しのように鼻をかいた


巧真の動作を見て

理解したのか村長は

「もう一度、ケイトさんと呼んでくれ」

と頼んできたので、巧真は

「もしくは『父さん』の方がいいですか?」

と憎たらしく笑って見せた

村長は、「バレてたか」と頭をかきながら笑ってくれた

「牛にはちゃんと言ってありますから

 牛の事よろしくお願いします」

「うん、任せておきなさい」

そう言って胸を張って見せた

巧真は、荷物を背負い

「ちょっくら、行ってきます」

そう言い残し、家を出て行った




「報告します。侵入者は下の階から現れ

 現在、上の階の部隊と交戦中」

リムの部下が力を使い神の部屋で待つ

テニム達にそう告げる、

それと同時に、石段の方で大きな音が響く

「・・部隊を撤退させろ」

テニムが小さくつぶやいた

「しかし、それでは・・」

「俺とリムでどうにかする、

 撤退だ」

部下は声しか聞こえないが、

悔しさは伝わってくるような気がした

「・・・わかりました」

そこで、通信は終わった



「やるしかない・・」

テニムが自分にそう言い聞かせる姿を見た

リムも、かなり緊張していた

「大丈夫、テニムができなくても

 私が、どうにかする」

「そう言う訳には・・」

「自分の能力を巧真君に使えるの?」

真剣な顔でそう聞いてくるリムに

テニムは少し戸惑った

「それは・・使うしかないだろ

 あいつを止める方法はそれしかない」

「巧真君が、目の前に来ても

 それが言えるといいけど」

「あぁ・・そうだな」

石段の方では、戦闘の音はなくなり

その代りに、階段を駆け上がる音が二つ

段々と近づいてきた


「来たぞ」

テニムがそう言うと

階段の目の前に巧真とトイが現れた

トイの方は、息使いが荒くかなり疲労していた

だが、巧真は返り血を浴び赤く染まっては、いるが

息は、全く乱れていなかった

「巧真 !!俺は、お前を全力で止める !!」

テニムは、そう叫び

巧真に向かって、右手を向ける

力を使おうとした時、テニムは昔の記憶が蘇える

手を向けてる方には、おびえた目をした子供がいる

だが、実際はおびえた目ではなく

すべてを見下すような目をした巧真が立っている

「テニムっ !!」

リムの叫びで、テニムは我に返った

「くそっっ!!」

テニムは、腰に差してあったナイフを取り出し

巧真に、向って走り出した


走り寄ってくる、テニムにトイは、銃口を向ける

引き金を引こうとした瞬間

誰かに、胸ぐらを掴まれたかと思うと

一瞬にして、別の場所に移動し、壁に激突した

また、別の場所に移動し床に叩きつけられた、かと思うと

上から、周りにあった城の装飾品がトイに向かって落ちてきた


「リムの野郎・・」

「おぃ、何よそ見してやがる」

テニムは、そう言いながらナイフを巧真に向かって投げた

巧真は刀で、そのナイフを地面に叩きつけた

その隙にテニムは、巧真に近づき

ほぼ密着した状態で、刀を使わせないようにした

「さすがテニム、考えたな」

巧真は、刀から手を放しテニムの顔めがけて

思いっきり、右の拳を振った

だが、拳は空を切り

テニムは、巧真の両足を払い

巧真は、あおむけ状態で倒れた

すかさず、落ちていたナイフを取り

巧真の胸に目がけて振り下ろした

「終わりだ、巧真 !!」

巧真は、一瞬笑ったかと思うと

姿を消した、ナイフは地面に突き刺さり

「終わるのは、テニムだよ」

と、テニムの後ろで声がした

テニムが後ろを振り返ると巧真が刀を振り下ろしている所だった

終わった・・そう思いテニムは目を閉じる


だが、気がつくとリムの横にテニムは立っていた

「大丈夫?」

「・・いや、もぅ駄目だ

 今までにないくらい、お前が女らしく見える」

「あら、ありがと」

「男だって知らなかったら、今頃お前に求婚してるかもしれない」

「誰かさんみたく

 一週間、熱でうなされるわよ」

「そうだな」

「二人で、巧真君を止めるわよ」

「あぁ、援護頼む」

「まかせといて」


その時、装飾品に埋められていたトイが

装飾品を吹き飛ばし、復活した

「だぁっ、くそがっ」

トイは、テニム達に指をさし何かを叫んでいる

「ごめんね、援護またしばらくできないかな?」

「大丈夫だ、それまでは、

 俺だけでもってみせる」

「すぐに、終わらせるから」

テニムは再度、ナイフを構え、

リムもトイの方へ、右手を向けた


「大丈夫ですよ、リムさん」

そう言いながら、階段の方から

槍を持った、カイが現れた

「すみません、報告してから気を失ってたみたいです」

リムは、力を使って

カイをすぐ横に連れてきた

「怪我は?大丈夫なの」

「問題ないです

 チコさんが、大体治してくれました

 ですから、トイは俺がやります

 リムさんは、テニムさんの援護に集中してください」

「じゃぁ、任せるわ

 その代り、あなたの援護もしっかりしてあげる」

「え?でも、一つに集中した方が」

「大丈夫よ、昔からこういう状況で

 二人のおりをしていたんだから二つあった方がちょうどいいの」

胸を張りながらそう言う、リムに対し

「おぃ、あいつならともかく

 俺はリムにお守りをされた覚えはないぞ」

と、テニムが猛反発した

「なによ、知らない人の髪を間違えて燃やしちゃって

 逃げる時に、あなた達、私がいなかったら

 どうなっていた事やら」

「いつの話、してるんだよ

 あぁ、やっぱり、お前、女らしくないわ

 男だ、男」


言い争いする二人をカイがなだめようとする中

「トイ、生きていたか」

そう言いながら、巧真はトイに近づいて行った

「すみません、隊長

 俺、足手まといですね」

「そんな事はない

 お前は、よくここまで付いてきてくれた」

「でも、俺・・」

「確かに、お前は、城の警護だったから、ここに入れてはいるが

 所詮、レベル3はレベル4には、勝てないってことだ」

「大丈夫です、今度こそ」

「いや、もう十分だ

 そろそろ、先に進もう」


「先に、進んでいいと誰が言った」

気がつくと、テニムが巧真の目の前に現われていた

「やべっ・・」

テニムの蹴りを腹にもろに喰らい

巧真は、壁まで吹き飛ばされ、崩れた壁が巧真に降ってきた

「隊長 !!」

トイが巧真の所に駆け寄る途中

トイの目の前に、カイが現れた

「今度は、何も躊躇ちゅうちょしない

 全力でお前を止めてやる」

そう言うと、カイは槍をトイの顔めがけて

振り下ろしてきた

反応しきれなかった、トイの左頬を槍がかすめた

「上等だ、今度こそお前を殺してやる」


巧真は、上にある瓦礫をどけ

立ち上がると、テニムが待ち構えていた

横では、トイとカイが戦っている

「巧真・・」

「リムの能力って便利だよな」

「もう、止めにしよう」

「断るって、言ったら」

「ここで、倒す」

「無理だな、俺はもう行くよ」

「もし、お前が神の部屋に入れたとしても

 トイは、どうなる?置いてくつもりか」

「まあ、そこで黙って見てな」


トイは、リムの能力によって

宙に飛ばされていた

「終わりだ、トイ !!」

カイは、トイめがけて衝撃波を飛ばした

「隊長━━!!」

トイが、そう叫ぶ中

巧真は、トイの横に現われた

「捕まってろ」

巧真はトイの腕をつかみ

衝撃波が来る前に二人とも姿を消した


テニム達が、どこへいったか

姿を探す中

二人が、姿をあらわした場所は

神の部屋の中だった

「よぉ、取り戻しに来たぜ

 あいつの生きる希望を」


神の部屋には、神とチコが待っていた

「チコちゃん、下がってて」

「どうして?

 私もレベル4です。だから一緒に」

「いいから !!」

神は、椅子から立ち上がり

巧真の方に歩み寄って行った

「いい判断だ

 これ以上、犠牲者を出したくないからか?」

「違うわ、あなたの暴走を

 素早く止めるためよ」

「そうだな、お前を殺してそれで終わりだ」

巧真は、刀を高々と上げた

「可哀想な人」

「なんだと?」

「あなたは、これが巧真君の為になると

 本当に思っているの?」

「当たり前だ、これであいつは

 この世界でトップになれる」

「この行動が、巧真君を苦しめる結果に

 なるとも知らないで」

「そんな事はない !!

 俺は、これまでもあいつのために行動してきた」

「あなたは、巧真君をむしば

 癌細胞よ。それが正しいと信じて行動しても

 結果的に、本人を苦しめる」

神は、哀れんだ表情で巧真を見つめる

「黙れ !!

 俺を見下すな」

巧真は、神に向かって刀を振り下ろした



切られるそう思い

目をつぶったチコは、

恐る恐ると、目を開いた

そこには、腰を抜かした神の前に

振り下ろされた刀を鞘で受け止める、巧真が映った

「く、来るのが、遅い

 また迷子?」

「違う、こういう物語の場合

 主人公ヒーローは遅れてくるんだ」


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