火事場の馬鹿力って凄いよね・・
耳を切り裂くような音が
部屋の中を木霊する
ただ、カイはトイの首元にナイフを置き
トイに「動くな、力も使おうとするな」と言っていた
「な、なんで?今まで避けれた人いなかったのに」
「残念だったな
拳銃の事は俺も知っているんだ」
「え?」
「隊長が、だれかに襲われた時
俺の能力で、隊長の異変に気づき、その場に向かったんだ
着いた時には、すでに戦闘も終わっていて
隊長が倒れていたんだ
側によると隊長は、俺に拳銃の事
そして、お前の事も教えてくれた
正直、俺は信じなかった
でも、実際にこういう風になってるからな
いやでも、信じるしかない」
そんな事を言っても
カイは、何とも思っていないのか
「どうして?玉を避けれたんだ」
その一点張りだった
「それも隊長だ
確かに、玉が出てからは避けるのは無理だが
その一歩手前の、銃口の向きと
引き金を、引く指に集中しろって言われた
そうすれば、相手は一発で当たると油断してるから
避けたらすぐに、相手との間合いを詰めろってさ」
トイは、避けられたのが悔しいのか
カイが自分より拳銃について詳しかったのが
悔しいのか、まるで子供のように
目は怒りに燃え
鼻息は荒く、顔には悔しさを滲みだしていた
「それから、この世界を守ってくれとも言われた
だから、俺はこの世界を守るそれが隊長の意志だ」
「そうか、そいつは残念だ」
誰かが、後ろからそう言うと
カイをそいつは鞘から刀を抜き出し、後ろから腹部を横に切った
「なっ・・なんで」
そう言いながらカイはその場に倒れた
「自分の能力に頼りすぎだ
ちゃんと目で確認しないとな」
そう言いながら、刀についた血を拭い鞘に戻した
カイの特殊能力は、能力者の位置なら
手に取るように、わかるはず
なのに相手が、後ろにいた事に気付かなかった
カイは、力を振り絞り
自分を切ったのは、誰か見ようとした
そして、視界に入った人を見て驚いた
「た、隊長・・」
そう言い残すと、カイは力尽きた
カイが倒れることで
トイは、自分の苛立ちをぶつける所がなくなり
謎の言葉を発しながら
拳銃をカイに向け引き金を引こうとした
それを見た、巧真は拳銃の前に手を置き
「止せ、トイ
こいつはもぅ死んだ
死人に引き金を引こうとするな
それに、銃声が上がってからかなり時間がたった
そろそろ、人が来る
その前に、退散するぞ」
苛立ちを発散できず、退散すると言われて
トイは、我慢できず
拳銃を上に向け弾が尽きるまで発砲した
撃ち終わると銃を地面に叩きつけ
巧真の方に歩み寄り
服の一部にしがみついた
巧真は、トイと移動しようとした時、
扉が一瞬動いたことに気づき
「どうやら、元同居人は立ち聞きが好きらしいな」
鼻で笑いながら、そう言い残し
トイと一緒に姿を消した
姿が消えたことを確認し
カイの部屋にチコが入ってきた
カイは、傷は深いがまだ、かすかに脈があった
チコは能力を使い治療を始めた
しばらくするとカイは、意識を取り戻した
「気づいた?」
「チコさん・・」
「ダメ、まだ動かないで」
「お、俺はもう大丈夫です
そんな事より隊長を・・」
「大丈夫、あれはあなたの知ってる隊長じゃない」
「知ってます。そんな事
そうじゃなくて、隊長を連れ戻してきてください」
「・・・でも、巧真はもぅ能力を」
「何言ってるんですか
隊長は・・」
カイはチコの肩を強くつかみ
「力を失ってなんかいません」
そう強く言った
牛が子供に突進する中
巧真は、牛よりも先に前に子供の前に回り込み
突進してくる牛を待ち構え
牛を抑えた
「フンガッ !!」
牛の頭はかなり固く
真正面から受けてみるとかなり痛い
地面がぬかるんでいて、どんどんと牛に押されていく
それを、ただ呆然と見ている子供に対し
「な、何ボーっとしてるんだ
早く逃げろ」
その言葉で、我に返ったか
子供は立ち上がり走って行った
だが、牛の怒りは収まらない
「牛、落ち着け
俺だ、わかるか?」
前足を動かし前に進もうとする
だが、俺が邪魔していて動かない
どうやら、俺が見えていないらしい
そんな中、俺は牛を止めてる事に驚いている
いや、その前に、牛よりも先に回り込めた事もおかしい
どういう事だ?火事場の馬鹿力ってやつか?
なんて思ってると
牛は後ろ足で立ち始めた
牛の顔に全体重を乗せていた俺は、軽々と持ち上げられ
どうにかしようと降りると
下がぬかるんでいて、あおむけの状態で倒れてしまった
「痛いなぁもぅ」なんて余韻に浸っていると
俺の顔めがけて牛の前足が落ちてきていた
「うわっ・・」
「おぉ、気が付いたか?
大丈夫か」
気がつくと、俺は蒲団の上で寝ていた
横には、かなり俺の事を心配していたのか
安心した表情をしている村長がいる
「う、牛は大丈夫ですか?」
「まずは自分の心配をしたらどうだね?
初め見た時は、死んでるかと思ってよ」
そう言われてみると
胸には大きな痣があり
左目を覆い隠すように包帯を巻かれていた
「でも、左目は正直、眼球が無事なのか
無事だったとしても、回復するのかわからない状態だ」
「・・そうですか」
「子供たちの事は、許してやってくれ
あの子たちは、トカゲに両親を殺れたんだ」
「別に、気にしてませんよ」
どうせ、消える運命だしどうでもよかった
「そんな事より、ここにいていいんですか?
異端者が、いる家に居たりして」
「ん?そうだな、それじゃそろそろ出て行くとしようか」
そう言うと、立ち上がり出て行こうとした
その時、俺はこの前の夢を思い出した
「あの・・」
「ん?なんだい?」
「もしも・・もしもですよ
息子さんを殺した人が俺の知り合いにいたら
どうしますか?」
村長は、しばらく悩み無表情のまま
「その人を聞き出して、そいつを殺す」
そう冷たく言った
「・・・と言うのは冗談だ」
「え?」
「今更、殺したって仕方がない」
「それは、本当の気持ちですか?」
「さぁ、どうだろうね
ただ、戦争だったから仕方がないと言う訳ではない
実際、今でも本当の気持ちなんてわからない
巧真君だってそうだろ?」
「わからないです」
「いつか、わかるさ」
そう言うと村長は家から出て行った
しばらくし、俺は蒲団から起き上がり
外に出た左目が今は見えないので
距離感がつかみにくい
そんな状態で、裏庭に行った
畑には、小さいが新しい苗が植えられていた
そして、牛は
「おぃ、牛」
どんなに呼んでも近づいて来ない
「なんだよ、俺が怒ってるとでも思ってるのか?」
ふざけやがって
「怒ってないって、大丈夫だから」
お前のせいで、左目が見えなくなった
「本当だってば、いいから来いって」
殺してやる
「・・・こっち来いって」
お前なんか殺してやる
「違う !!俺はそんな事思ってない」
突然、巧真が叫んだから
牛は近づきはしたが、ビクついてまた下がってしまった
だが、異変に気づいたのか
牛は恐る恐る巧真に近づいて行った
「止めろ、近づくな」
そう言って、右手を大きく振り回した
ハッとして巧真は我に返ったが
急いで、家の中に入り包まって
その後、村長がやってきても扉をあけることはなかった




