無いよりはあった方がいい
気がつくとテニムの家で寝ていた
「気がついた」
横を見るとチコが、座っている
「チコ?」
「階段の前で倒れてるの
カイが見つけた」
「そうか・・」
俺は、起きない体を無理やり起こした
「まだ動いたら駄目」
「そんな事を、言ってられない
神の所に行かないと」
なんだか、やけに体が重い
言う事を聞かない
体を無理やり動かしたから
部屋は無事に出れたが
階段は、一番上から転げ落ちた
「大丈夫?
まだ安静にしてないとダメ」
上から急いでチコが降りてきた
テニムがいない
そうか・・警備に行ってるんだ
「頼む、チコ
俺を神の所に、連れて行ってくれ」
チコは、嫌々ながらも
俺に肩を貸し石段まで連れて行ってくれた
明らかに身長差があって歩きづらいが
まぁ、ないよりは楽だ
「急がないと・・時間が無い」
石段を上がろうとすると
俺は、見えない壁に邪魔された
「あれ?」
「どうしたの?」
俺は手を石段の方に近づけると
見えないゴムのような物に
触れて見えない壁が揺らいでいる
「チコ、俺は何日間寝ていた」
「2日間」
「そんな・・」
「どうしたの」
「力を失った」
「そんなのありえない」
考えてみれば、今日は物語が見えない
体がだるいのも力を失ったせいか?
なんてぶつくさ言ってると
「神様に言ってくる」
チコがそう言い残し、階段を上がろうとしていた
「いや、そんな事はしなくていい」
「どうして」
「神だって、その事は知ってるいる」
「でも・・」
「いいんだ
俺は、このまま物語に従えばいいんだ」
「何を言ってるの?」
「チコだって、薄々気づいてるんだろ?」
「・・・」
「まぁ無理もないか
俺の影響をモロに受けてるんだからな
本当ならチコは、全く喋らないはずなのに」
「だから、テニムも警備に回されたの?」
「そうだ
目の届く範囲に置きたかったんだろ」
「これからどうなるの?」
「まぁ、少しくらいならいいか
チコのように、隊長格も段々と
この事に、気づいて来るんだ
俺の影響を受けた事も
でも、そんな事がバレて見ろ
この世界は、大変なことになる
それで、神様は責任を、俺に全てをなすりつける
だから俺は、この街にいれなくなるんだ」
「どこへ行くの?」
「ん〜扉の向こうでしばらく
暮らすつもりだ」
「どうして・・」
「え・・?」
「どうして、そんな事に従うの?」
「それが、俺の存在理由だ
これで、真由の理想郷が完成する」
「そんなの間違えてる」
「そうかもな・・
でも、俺はいいと思ってこれに従うんだ
とにかく、今日はテニムは帰って来ないから
荷物をまとめて出ていかないとな」
体の調子も段々慣れてきた
「それじゃぁ、宿に戻るか」
「・・・」
「あぁ、肩貸してくれてありがとな
もぅ大丈夫だ
歩きづらいけど」
そう言いながら宿へ戻った
荷物と言っても何も無く
あるとしたら
俺の数少ない、着替えと
チコが、結局一回も着なかった
メイド服
それをテニムの部屋から勝手に拝借した
リュックに詰め込み
あと、斧と鍬を担いだ
「それじゃぁ、テニムによろしくな」
そう言って宿を出ようとした
「だれによろしくだって?」
横を見るとテニムが、入口に仁王立ちして
待ち構えていた
「あ、あれ?仕事は?」
「今日、初めて神様に会って
宿に急いで戻れって、言われてな
まさか、あの子が神だとは、信じられなかったが
ここでも、信じられない光景だな」
「あぁ・・いや」
「どういうことだ?」
「いや、荷物を城に置いておこうかと」
「お前、城に仕事はないだろ
知ってるんだぞ隊長クビになったの」
「あぁ・・いや」
「当ててやろうか?
この街から出て行くつもりだろ?」
「正解!!」
なんて、ふざけてみたが
テニムは、それに乗ってはくれなかった
「あぁ、お前に影響を受けてるからな」
「なんだ・・なら話は早いよ」
「駄目だ」
「なんで、もう決まってることだ」
「そんなもの俺は知らん
お前や神が、どんな未来が見えているは知らないが
俺達には見えてないんだからな
だから、ここから出て行くのも許さん」
「それはできない
物語がまた変わってしまう」
「物語に従うことがそんなに大事なのか?」
「当たり前だ
知らないだろうけど
実際、テニム達だって従ってるんだ」
「それがどうした
これからは、自分の思った通りに行動するぞ俺は」
「でも、俺が鍵なんだ
鍵の俺が従わないわけにはいかない
テニム一人が、どうこうしようが何も変わらない」
「そうでもないさ
これから、お前を食い止めることだってできる」
「俺はもう能力者じゃないんだ
ここにいる訳にはいかない」
そう言うとテニムの顔が、一瞬曇った
「・・それがどうした
巧真は巧真だ」
「・・・やっぱりな」
「何?」
「嘘ついてるんじゃねーよ
どうしてそうやって、嘘をつくんだよ !!
テニムだって、俺の事、人間だって思ってないんだろ
能力者じゃないって言った瞬間、目つきが変わったぞ
全員、そうなんだよ」
なに言ってるんだろ・・俺
ヤバい・・目頭が熱くなってきた
「そんな事はない
俺はただ・・」
「バイロの時だってそうだ
心の中で、思ってる事は俺に筒抜けだったんだよ
本当の事言えよ
どうして俺を責めないんだよ !!」
「・・・」
「今はもぅ、何も見えないけど
こう言う事だって、きっと想定されてた
説明書通りに、たまには動けよ !!
お前等は所詮、人形なんだ !!
壁と扉で線引きされた
神様の操り人形なんだ」
「お前、そんな事を思ってたのか・・」
やけに落ち着いた表情と低い声で
テニムが話しかけてきた
ヤバい・・少しでも気を緩ませると
涙声になりそう
「・・あぁ、そうだ
今までだって、きっと本心ではそう思ってたんだ」
「そうか、なら俺も本当の事を言おう
能力者じゃない、ってわかってから
お前を見てると吐き気がするし
虫酸がはしる」
その言葉を聞くと
テニムと俺の間にあった何かが切れたような気がした
「・・・それでいいんだ
それが正しい選択だ」
そう言って、俺は歩きだした
テニムの後ろではチコが涙を流してる
気づいてはいたが
ここで立ち止まる訳にはいかない
立ち止まったらこれ以上進めなくなる
「待って・・」
立ち去る巧真の後を追い
チコが走り出そうとしたのをテニムが止めた
「やめとけ」
「どうして?
止めないともぅ戻って来ない」
「今、止めたら確かに、止まるかもしれない」
「だったら・・」
「けど、いつか出ていく」
「・・・・」
「いつか、戻ってくるさ・・」




