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理性と本能

「あぁ〜暇ね・・」

そう言って

椅子に座りながら、ダラダラとしてると

神の前に突然、巧真が現れた

「キャッ、ちょっと来るなら

 ドアをノックぐらいしなさい」

「無茶を言うな

 ワープの意味がないだろ

 ほら、帰還報告書」

そう言って、神に紙を渡した

「お疲れ様」

「まったく、面倒くさくなったな

 行動するのにいちいち

 紙を作らないといけないなんて」

「仕方ないじゃない

 あなたの単独行動でどれだけ

 迷惑をかけたと思ってるの」

「あぁ、すまなかった・・」


「それで、終わったの?」

「終わったからここにいるんだ

 甘次郎さんも、これで終わりだ」

「そう・・」

「それじゃ、俺は帰るよ」

「待って」

「なんだ?これは、予定にないぞ」

「どうしても彼女が聞きただってるの

 あなたは、本当にこれでいいのかって?」

「何を言ってるんだ?

 お前が考えた

 理想の世界を完成させようとしてるんだ

 それのどこが悪い」

そう言って部屋から出て行った



扉を開け廊下に出ると、そこには

チコが立っていた

「よぉ、チコ」

「・・怪我してる」

「んぁ?」

そう聞いて調べてみると

右腕の裏側から血が出ていた

「あれ?いつの間に?

 甘次郎さんか?」

「動かないで」

そう言って腕の治療を始めた

「ありがとう」

「無茶しすぎ

 死んじゃうわよ」

「残念ながらまだ死にません」

「真由だけじゃなくて神様も心配してた」

「そうか・・

 真由の暇つぶし相手

 チコしかいなくなっちまったからな

 真由の事よろしく頼むわ

 じゃっ俺帰って寝るわ」

「まだ夕方」

「いいの、いいの」

「夕飯も食べてない」

「その時になったら起きるさ

 いや〜、本当にお前だけだよ

 決まった言葉を喋らないのは

 あぁ・・待てよ

 トイとカイも変な行動をとってたな・・」

「・・・・」

「それじゃぁな」

そう言って巧真は消えた



そして現れた場所は宿の前

「ただいま」

「おぉ、帰ってきたか

 今日は会議があるんじゃないのか?」

「ん〜すっぽかした」

「おぃおぃ、いいのかよそれで」

「いいの、どうせ結果は決まってることだし」

「??」

「俺しばらく寝る

 二階だれもいないだろ」

そう言って二階に上がっていった



部屋の扉を開けると

そこには俺がいた

「よう、お帰り」

「黙れ、眠いんだ俺は寝る」

そう言って、俺は布団の中に入った

バイロの事があってから

俺にしか見えないが

もう一人の俺が見えるようになっていた


「おぃ、なんだよその態度

 冷たすぎるぞ

 相変わらず死んだ目をしてるなお前は

 いい加減、俺を表に出せ

 お前の死んだ目なんて一発で無くなるぞ」

「だまれ」

「そんなんで楽しいのか?

 お前は、甘次郎の言った通りのやつだろ

 進化を求めてる

 それなのに理性のお前が邪魔をする」

「だからって本能のお前を表になんて出せるか」

「なぜだ?

 そんな縛られた未来なんかに

 従っていていいのか

 俺は嫌だぜ」

「俺はそうは思わない」

「嘘だね、お前は嘘つきだ

 本能が本心に決まってるだろ

 お前は自由を求めてる

 自由のためだったら神だって殺してもいい」

「違う」

「神を殺して俺が神になる、そして新たな社会を創る

 お前はそんな野心家だ」

「それは、お前だろ」


「だから、お前が俺なんだよ

 俺がお前のように」

「だからなんだ、俺には関係ない」

「関係ないだと?

 理性がなに言ってやがる

 俺を表に出せ楽しくなるぞ」

「黙ってろ」

「まったく、自由を求めて何が悪い」

「お前の言う自由は間違えているんだ」

「なら聞くが

 この世界では自由はあるか?」

「少なくとも俺と神以外は自由だ」

「あれのどこが自由だ?

 創られた未来を

 ただのうのうと、生きてるだけじゃないか」

「だが、それをみんなは知らない」

「知らなければ幸せってか?」

「そうだ、あともう少しで

 彼女の理想郷は完成する

 そこでは争いもない

 だから武器なんてものも存在しない

 彼女の制御によって人殺しだって無くなる」

「それでも、制御されてるんだぜ」

「だから、言っただろ

 知らなければ、幸せ

 知らなければ、制御されてるとも

 疑問に持たない」

それを聞いた、もう一人の俺が

俺が深いため息をついた


「それが完成する時には

 お前は、この世から

 いなくなってるんだぞ」

「そうだ、物語を描けるのは一人でいいんだ

 三人もいらない」

「はぁ、腐ってきたなお前は

 神様の目にそっくりだ」

「うるさい・・」

そう言って俺は眠りに入った



この頃、同じ夢を見るようになった

バイロが、俺の目の前で

胸を刺される夢

そして、刺しているのは、俺だ

刺しながら、俺は笑ってる

それだけでは飽き足らず

周りにいる敵をも

斬って、斬って、斬りまくる

それに怯え逃げ去ろうとする

敵も必要に追いかける


そんな俺を、止めようと

必死に脚にしがみつき

静止させようとする

だが、俺は止まらない


全員を斬り終わると

最後に神が現れる

神は俺を見て怯える様子もない

むしろ哀れんでいる

そんな神の態度にムカつき

俺は、神に向かって刀を振り下ろす

そこで夢から覚める




布団から跳ね上がると

横には俺がいる

「よぉ、またあの夢か?」

俺は汗を拭きながら

「あぁ、最悪な夢だ」

「あれのどこが最悪な夢だ

 むしろ、いい夢だ

 お前の本心を現してるじゃないか」

「あれのどこが、俺の本心だ」

「見ての通りだ

 お前は、人を殺すことを好んでる」

「ふざけるな

 冗談じゃない」

「現に今までの戦いでもそうじゃないか

 攻撃をかわして、一撃を食らわす

 それは相手が

 斬られる!!そう思った時の

 絶望感、目に現れる恐怖の表情

 それを一刀両断する

 その感覚が、お前にはたまらない」

「違う」

「今でも人斬りの感触が忘れられない

 鬼だと思ってたら実は人だとわかった時

 思い出すと、やけに鮮明で背筋がゾクゾクする」

「そんな事はない」

「そぅ、そう思いたかったお前は

 あの時、心が混乱し涙があふれた」

「黙れ」

「あらら、図星かい?」

「黙れって言ってんだろ

 消えろ !!」

耳につく笑いを残し俺は消えた

それと同時にチコが入ってきた



「どうしたの、すごい汗」

「なんでもない

 どうした?もぅ飯か?」

「そう

 神様、今日も来ないみたい」

「そうか・・」

「神様、心配してた」

「何をだ?」

「巧真を」

「余計な心配はしなくていいのに」

「私も心配

 巧真、バイロの事があってから変」

「・・・そうかもな色々と見えるようになったし

 でもチコも変わっただろ」

「?」

「よくしゃべる様になった」


そう言うとチコが顔を赤くした

それを見て軽く笑っていると


チコの後ろに、俺が現れた

その事にチコは気づいていない

どこからか刀を取り出し

チコに刀を振り下そうとしていた

「なっ・・」

俺は必死にチコを引き寄せ

何とか俺を盾にしようとした

もう一人の俺は、刀を顔の目の前で止め

それを見て笑いながらまた消えた

「くそっ」


チコは状況が理解できず

硬直していた

「あっ、わりぃ」

そう言ってチコを放した

殴られる、そう思ったが

「ご飯、下で待ってるから」

そう言って、部屋から出て行った




「どういうこと?」

突然目の前に神が現れた

やけに深刻な顔をしている

「なに、突然現れるの流行ってるのか?」

「いつから」

「?」

「いつからよ」

「はぁっ?もしかしてチコの事か

 いや、違うぞ何にもないぞ」

「そうじゃない(それもあるけど・・)

 もう一人の自分よ」

「・・・」

「見えてるんでしょ」

「あぁ、バイロの事があってから

 本能とか名乗る俺が現れる

 でも、大丈夫だ外には絶対に出さない

 もう少しでで全てが終わるんだ」

それを聞くと真由は

ムッとした表情をした


「・・?どうした?」

「私は別にいいと思うけど

 本当にそれでいいの?」

「しつこいな・・

 お前が望んだ未来だ

 せっかく実現するのにどこが悪いんだ」

「でも・・」

「おぃおぃ、弱気だな

 今はどっちの性格が出てきてるんだ?」

「・・わからない」

「?」

「どっちでもないの」

「おぃ、まさか・・」

「とにかく、夕飯を食べたら

 話があるから城に来なさい」

「駄目だ」

「どうして?」

「予定にない事をしようとするな

 今やってることだって

 本当なら、予定にないんだぞ」

「いいから、ここでの最後の夕飯食べたら

 来なさい待ってるから」

「最後の夕飯か・・

 最後なんだし、お前も食っていかないか?」

「予定にない事は、したくないんでしょ」

そう言って神は消えた




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