愛は障害が無い方が楽
「貴様、どこから侵入した」
「どこからって入口から堂々と」
「嘘をつくな
商民ごときが入れる訳ないだろ」
「今時の商民は兵士より強いんだぜ
知らないの?」
「やかましい、てか止まれ !!」
「冗談じゃない
俺は神に呼ばれてここに来たんだ
何で捕まらなきゃいけないんだよ」
頑張ってね、捕まったら君の負けだから
「おぃ、どうなってやがる
俺が鬼で探す方じゃなかったの?
なのになんで鬼が第三者に追われてるの?」
愛と言うのは障害があるほど燃えるものなの
「はぁっ?意味わかんないし」
「貴様、さっきから何を独り言を喋ってやがる」
「うるせぇ、神との会話中に首を突っ込むな
どこにいるんだよ神様」
ん〜どこでしょうねぇ・・
「ノーヒント?」
イエス
「死ねっ !!」
あぁ、そう言うこと言う?
せっかく追っかけてる人どうにかしてあげようと
思ってたのに
「すみませんでした神様
もう死ねだなんて言いません」
じゃぁ、次の廊下を右に曲がって
「わかった」
だが、右に曲がるとそこには
城の警備員的な人が二人立っていて
こっちに振り向きました
「・・あ、あれ?」
「侵入者だ !!」
「どうなってるの?神様」
あれ、おかしいな
じゃぁ次は左
「し、侵入者だ━」
結果は警備員がまた増えました
「わざとだろ、絶対わざとだ
未来創ってる癖にこんなにミスるだなんて
おかしいもん」
バレた?
「やっぱり、これからは俺の勘で行かせてもらうからな」
そう言って、巧真は
上にジャンプをして姿が消えた
「き、消えたぞ?どこに行った」
「あいつの特殊能力は瞬間移動か?」
「くそっ探すぞ」
そう言って、警備員達はバラバラに散って行った
しばらく静かになると
突然その場に巧真が現れた
「ドゥハァ〜、駄目だ息が続かない」
巧真は、ただ単に姿を消していただけだった
ジャンプして姿を消し
静かに着地しゆっくりと壁側に移動していた
あとは警備員がここから立ち去るまで
息をひそめ壁に張り付いているだけ
ズルい・・
「何がズルいだ
だったら警備員に教えれば
よかったじゃないかよ」
神様が教えたりしたらいけないでしょ
「なんだそれ?」
まぁ、とにかく私探すの頑張ってね
「はぃはぃ」
こんなおとぎ話に出てきそうな城だ
お姫様は最上階にいるに決まってる
「おし、上に行くか」
確か、入口の所に階段はあったよな・・
入口ってどこだっけ?
帰り道もわからん
階段の場所のわからん
「あぁ、なら作ればいいんだ」
そう言って壁に手を置き
力を込めると大きな音を立てながら
上に続く階段を作ってしまった
ちょっと、お城を勝手に作り変えないで
「いいじゃん、減るものじゃないし」
でも、階段が増えた・・
「そこまでだ侵入者」
振り向くと周りは警備員で囲まれていた
まぁ、無理もない
でかい音を立ててしまったし
「よう坊主、侵入者ってお前のことだったのか」
なんと警備員の中にテニム達も
混ざっていた
「え?なんでここにいるの?」
「いや、実はだな
バイロの家についた時まで戻るんだが
家につくと・・(長いのでカット)」
えぇっとつまり、家につくと
城からの使者がいて
緊急事態だから来てくれと
使者に連れられて石段の中に入ると
侵入者がいるから捕まえてほしいと頼まれ
現在の状況に至ると
「おぃ巧真、今俺が説明しただろ
何で繰り返してるんだよ」
「テニムの説明は長いんだよ
そんな使者の名前がどうとか身長がどうとか
そんな説明要らないし
どうせ使者Aとかでこれ以上登場しないから」
「とにかく、坊主
これは俺の就職がかかってるだから捕まれ」
「やだね、てか坊主って言うな
俺の名前知ってるだろわざとだろ
一瞬で負けたことがそんなに悔しいか?」
バイロから火の玉が飛んできた
「うわっ、危な何するんだよ」
「うるせぃ、バ〜カ」
「はぁ、馬鹿って言う方が馬鹿なんだよ
この馬鹿が」
「何ぃ〜?」
そんな、餓鬼みたいな口喧嘩をしていると
火が城に燃え移ってしまった
「だぁぁ、城が燃えてる」
「バイロ、これどうにかできないの」
「無理無理、消すことは俺できないの」
「いや、両手に炎を持ってくればいいじゃん」
「馬鹿、あれすごく熱いんだぞ
こんな大量に取れる訳ないだろ」
「やっぱり、熱いのかよ
テニム、水出してよ蒸気出すみたいにさ」
「いや、水が無いと俺蒸気出せないし
水は出せません」
「え?どうするのこれ?」
「だ、大丈夫だ警備員がどうにかしてくれる」
警備員は慌ててどこからかホースを持ち出し
火を消していた
「それよりも、坊主
悪いようにはしないから捕まっちまえよ」
「断る、俺は神に会いに行くから」
「なら力ずくで捕まえてやる」
「やめといた方がいいよ
俺、ここにきて
今までにないくらい力がみなぎってるんだ
多分、今最強だよ
見てよこの階段だって俺が作ったんだよ
今までにはない力が使えるようになってるんだ
と言う訳で、俺行ってくるから」
「巧真」
「何さテニム?」
「確かに、力は成長しているみたいだな
でもなみんなに囲まれてるってことを
忘れてるんじゃないのか」
「なに言ってるの?
後ろに階段があるじゃん」
「無理だ、それ以上は巧真も俺達にも入れない」
「なんで?入れるじゃんほら」
そう言って階段の中に入って見せた
すると、全員が驚いた
「馬鹿な・・ありえない」
「何に驚いてるの?」
テニムはゆっくりと階段に近づき
階段の手前で何も無い所に手を置いた
すると、何も無い所が揺らぎだした
「見えない壁・・ここにもあったの
じゃぁ、俺の潜在能力はレベル6以上ってこと?」
「いや、巧真の潜在能力は神クラスだ」
「え?」
「どういうことだ?」
「いや、それはこっちが聞きたいよ
まぁ神に会って聞いてみるよ」
そう言って巧真は階段を駆け出した
何となくだが、神がいる部屋の場所もわかった
「ここか・・」
目の前には巨大な扉があった
まるでまた別の世界につながってそうな扉だ
これも軽いのかな?
そう思い軽く押してみると
そんな事はなかった
見た目通りの重さだ
体全体に集中し
力を一気に扉にぶつけた
「破っ!!」
扉は勢いよく開き
そして勢いよく戻ってきた
「うっそ、なんでこう言うオチ」
気を取り直して
今度はジワジワと扉を開いた
扉の向こうには
巨大な背もたれのある椅子に神が座っていた
いや本当にでかい背もたれだ
「神様、見つけた」
「鼻血出てるよ
やっぱりさっきのでぶつけた?」
「もちろん、結構痛かったよ
俺の勝ちだな」
「うん、そうだよ」
「で?」
「え?」
「なんで、俺を呼んだの?」
「あなただって会いたかったでしょ?」
「そりゃぁ・・まぁ」
「だから呼んだの」
「俺が色々と聞いてもいいってこと?」
「そう」
「じゃぁ、俺の力は神クラスって言うのは本当?」
「もちろん、潜在能力はね
まだ使いこなせてないみたいだけど」
「じゃぁ未来を創るって言うのはどういうこと
そんな事が出来るのか?」
「案の定やってるでしょ」
「人の生き死にまで操ることができるのか?」
「それは、無理
たとえできたとしても彼女が許してくれない」
「彼女?」
すると、突然だが神の風陰気ががらりと変わった
そうだなさっきまでは積極的で
明るさが空回りしてると言うかそんな感じだったが
今は、なんと言うか
大人しいと言うか
夢に出てきた彼女に似ているかな?
「あの、神様?」
神は俺の方を向きにこやかに
「はじめまして、巧真さん」
と言ってきた
「はぁっ?なに言ってるの」
「わ、私とは初めて会うじゃないですか」
オドオドしながら俺にそう言ってきた
「???」
「あ、あの・・そのつまり」
「つまり?」
「私は多重人格者なんです」
「はぁ・・」
「気づくの遅い、なんで私に言わせるのよ」
「今も変わったのか?」
「そうあの子は引っ込み思案だから」
「聞いてみたかったんだが
多重人格ってどっちかがベースとかあるの?」
「彼女がベースよ」
「どっちだよ」
「私じゃない方よ
あの子が私を生み出したの」
「どうして」
「退屈してたから」
「はぁっ?何言ってるの?」
「な、何よその反応 !!
あなただっていつかはなるんだから」
「いや、ならないし」
「本当になるの !!」
「??」
「まぁいいわ
本題に入るから」
「本題?」
「どうやって、未来を創ってるかについてよ」
「そんなこと教えてくれるのか?」
「うん、もちろん
言っておかないと大変なことになるし」
「で?どうやって未来を創ってるんだ?」
「私達は物語を作ってるの」
「はぁ?なんだって」
「物語よ、私達がいいと思うように
話を作ってるの
そしたらみんながその通りに動いてくれる
この世界は、私達の理想を描いてくれる」
「理想?」
「そう、争いもなく
毎日が穏やかで平和なのが私達の理想
そうやって、この世界は続いてきた
だけど突然あなたがやってきた」
「俺?」
「そう、あなたは私達の物語には存在しない
そしてどんなに操ろうとしても
あなたは私達が思い描いたことと
違う事をする
だから、あなたは危険な存在だった」
「それで俺を殺そうとしてあの村を
トカゲに襲撃させたのか?」
「それは違うわ
あれは私達が考えた物語じゃない
物語を書いてるとしても
完璧な訳じゃない
突然話が変わることだってある」
「でも、村が滅ぶと教えてくれたじゃないか」
「それは、事前にわかって
忠告しただけ
そしてトカゲの襲撃をあなたが救った後
本当なら、村からひどい迫害を受け
あなたはこちら側に来るはずだった
だけど、村の中に理解者が出てきた」
「村長の事か?」
「もう一人、甘次郎さん
あなたに影響を受けたんだと思うけど
物語とは違う行動をとるようになった
本人たちは自覚はないだろうけど」
「そうだったのか」
「否定しないの
私がやってることは人間の支配みたいなものよ
もっとこぅ、なんでそんな事するんだとか
こんなの人間のすることじゃないとかさ?」
「別に・・これまでもこれで
平和にやってきたんだろ?
それをどうこう言える立場でもないし
悪用してるわけでもないのにそんなこと言えないよ」
「変わってるのね」
「そうか?自覚はないけど
ところで、俺も神クラスってことは
未来を創れるってことか?」
「わからない、神クラスを
私以外に見たことが無かったもの」
「じゃぁ、可能性はあるってことだな?」
「どうだろうね?」
「神様がそう言う設定にすればいいじゃん」
「だから言ったでしょ
あなたは完全に独立してるの
私にはどうする事もできない」
「そうか、残念だな」
「どうして?未来を創りたいの?」
「そりゃ一度はやってみたいだろ
自分が思い描く未来
それが現実になるだなんて素晴らしい事だ」
「そんなことないよ
むしろ、こんな能力ない方がいいわ
少なくとも彼女はそう思ってる」
そう言って、神は暗い表情になった




