ラノベの神様
今日も一と裕也学校終わりに買い食いをしていた。
コロッケやアイス、たこ焼きなど……おいしそうなものは手当たり次第に買って食べていた。
「いやーこれは晩飯食べれないなぁ」
膨れ上がった腹を擦りながら歩くのはずぼらな性格の一。
「俺はまだいけるけどな」
あれだけ食べてもなお余裕な顔をしているのが知的な印象を持つ裕也。
頭も良くなく食って遊んでいるだけの一と勉強はでき運動もできる裕也が何故つるんでいるのか……。それは誰しもが――
「なあ、今誰か俺の悪口言ってなかったか?」
「……なにか聞こえはしたな」
――気になることだ。
「俺のことは馬鹿にして、お前のことは褒めてたな」
「褒められていたな」
学校でも一緒にいるため一部の女子からは影でネタにされていたり――
「え、俺たち女子のネタにされてんの!? ネタってBLの!?」
「だろうな。というか、さっきから頭の上から聞こえる声はなんなんだ。一、この竹やりで頭の上辺りを刺してみてくれ」
「あいあいさー」
――また、ホモ男から密かに狙われているな…………。え、ちょ、なんですかこのやり? あ、あぶなっ、危ないですよ! や、やめて! やめてくださ――
「きゃっ!」
「おぉ! なんか変な空間から可愛い女の子が落ちてきた!」
「……どうなってるんだこれは」
いてて、お尻をぶつけてしまいました。……えーと、ここはどこでしょう? 周りにはお家しかないですし……。
「おい、大丈夫か?」
頭上から声をかけられたので向いてみると、ヤンチャな印象をもつ男性とメガネをかけている知的なイメージの……。
「って、あぁ! 一さんと裕也さんですね!?」
「おぉ、そうだぜ。俺は一、こいつは裕也だ」
「やっぱり……ん? てことは、もしかして、ここは地球ですか?」
「そうだが……お前はどこから来たんだ? 宙に穴が開いて中から女性が出てくるなど訳がわからん」
裕也さんが私が出てきた穴を指差しながら問い掛けてきました。私は一度立ち上がり「こほん」と咳払いをして語り始めました。
「私も想定外なことが起こって混乱しているんですが……簡単にいうと私はラノベの語り手です」
「「ラノベの語り手?」」
一さんも裕也さんも同時に首を傾げました。予想していた反応に思わず笑ってしまいます。
「ラノベの語り手って、つまり、あの神様みたいなやつか?」
「そうですね。私たちは地の文を担当している者です」
「なるほど……。では何故俺らのことを語っていたのだ? これから異世界に行くわけでもあるまいし、彼女もいない。連載なんぞできないモブキャラだぞ?」
随分と自分自身を卑下する裕也さん。確かにラノベにするなら面白くない方達ですが、しょうがないことなんです。あの方からの命令ですから。
あの方の名を呼ぶと蕁麻疹がでそうで嫌ですが、説明しないわけにもいきません。我慢しながら私は答えました。
「それはですね、神様(作者)の意向です」
「「神様(作者)?」」
ああ、反吐が出そうです。何でこの神様(作者)に仕えてるんでしょうか私は。他の神様(作者)に仕えたかったです……。この神様(作者)なんて爆死すればいいのに。
私の心がどす黒く染まりそうになっていると、考え事をしていた裕也さんが顔を上げました。
「神様(作者)の意向で始まったこの物語……。つまりは、語り手さんが地上に落ちるのもストーリーのうちなんだ」
「その通りですね。私が落ちるのもプロット通りなんでしょう。私は聞いていなかったんですが……」
身勝手すぎますこの神様は! ストレスが溜まりすぎてやばいです。
私が文句を言っていると、裕也さんがメガネをくいっと上げました。
「では、この物語のオチはなんだ?」
「「オチ?」」
今度は私と一さんの声が被ってしまいました。
言われてみるとオチが見つかりませんし、そもそも私は知らされていません。この物語のオチはなんなんでしょうか?
……
…………
………………
――完――
「え!?」
いきなりの『完』の文字に思わず声がでてしまいました。というか、なんなんですかあれ!? 意味がわかりません!
「……なるほどわかったぞ!」
私が頭を抱えていると、一さんが手を大きく打ちました。
訳がわからない私は、一さんにしがみつくように答えをねだります。
「あの『完』はなんなんですか!? 教えてください!」
「ふっふふ、それはだな……」
一さんは何秒か溜めた後、変なポーズをとりました。
「オチがないのがオチ! そう、これがゴール○エクスペリエンスレクイエム!」
「…………あぁ、なるほどです。では、あのアニメネタばかりだすヘンタイ神様(作者)ぶっ殺してきますのでまた機会があればお会いしましょう」
「おう、またな」
「また会おう」
私は宙に浮いた穴をくぐり神様の元へと向かいました。
この小説を書き終わったのが四日前。投稿するのすっかり忘れてました。
あ、作者は生きてますので。こ、殺されかけてなんて……いません、から……