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中二風味

中二病って、結局なんなんだろうなと思いました。

 小鳥のさえずりが俺の目覚まし時計だ。

 カーテンなるものを開け起きたばかりの大地を見渡せば、俺の知っている世界とは程遠い風景がそこにはあった。

「そうだ……ここは俺の居た世界ではない……」

 俺の名は、ン・ミキタカゾ・ヌシ。ここ『チキュウ』では、香坂誠(こうさかまこと)という名で通っている。異世界から訪れた俺は、ここ香坂家を乗っ取り『チキュウ』の技術を元いた世界に持ち帰ることが任務だ。『チキュウ』に来て一週間。まずはこの環境に慣れ、『チキュウ』の『ニホンジン』として疑われることなく順応しなければいけない。

 今は高校二年生として『ニホンジン』を欺きながら任務を遂行するために必要なものの調達をしている。


「お兄ちゃん! ごはんできたよ!」

 階下から俺を呼ぶ声が聞こえる。学校の制服なるものに着替え栄養を摂るべく階下へ向かった。

 リビングなるものの扉を開けると芳醇な香りが鼻腔をくすぐり、腹の虫を騒がせた。穏やかな朝、そう形容して良い場に邪悪なるオーラを発している者がいた。

「お兄ちゃん来るの遅い!」

 短く切られた髪の毛はセットされることなくぼさぼさにはね、胸も貧弱背も低く女性として魅力的とは程遠い一歳年下の俺の妹、香坂ひばりはエプロン姿のまま頬を膨らませていた。


「あぁ……すまない」

 こいつは、俺のことを香坂誠だと思っている。実の兄の体をした中身の違うモノだと気づかずに話しかけてくるのはいつ見ても滑稽だ。

「お兄ちゃんもしかしてまた頭おかしくなったの!?」

 椅子に座りスクランブルエッグなるものを食しようとしたところに、ひばりに手で制された。

「……なんだこの手は……。俺の食事を邪魔するのか?」

「あー! ほらやっぱり! お兄ちゃんまた中二病になってる!」

 中二病……? この世界にはそのような病気があるのだろうか。俺の情報にそのようなものはなかったが……。

 どのような病気か推察している俺に気など使わず、ひばりは面倒くさそうに語り始めた。


「どうせお兄ちゃんあれでしょ? 語尾に『なるもの』つけたりとか片言にしたり変な間をおいたり、自分は違う世界の人間だとか言ってるんでしょ? 痛いよそーゆうの。高二にもなってさ」

「貴様! もしや新手のスタ○ド使いか!?」

 俺の思考を読み取るとは、只者ではないはず。帝国軍が送ったスパイに違いない!

 家の中だからと安心して近接武器を持ってこなかったが……。俺のス○ンド邪王心眼で殺るしかないか……。殺すのだけは避けたかったんだがな……。

 我が世界で伝わる必殺の構え、出巣歯宇度(デスハウド)の構えをし気を練る。

「何そのポーズ? どっからどうみてもジョ○ョ立ちだよね?」

「帝国軍のスパイめ! 余裕ぶっているのも今のうちだ!」

 この技を使うとここら一帯が吹き飛ぶが、すぐに時間軸を捻じ曲げればいい話だ。

 練り上げた魔力を手のひらの一点に集中し…………解き放つ!


「黄昏よりもなんたらこんたら……俺のスタン○! 邪王心眼の気……じゃない魔力を受けてみよ!」


 ――俺が解き放った魔力はこの家を中心に爆発を起こした。脳を揺さぶる爆音と爆発。悲鳴や怒号をあげる間もなく人々は灰になった。残ったのは見るも無残な姿になった大地と悲しみに暮れた家族だけだった。

 ……

 …………

 ………………

「んなわけあるかぁああぁああぁああ!」

「あ、はい」

「お兄ちゃん勝手に妄想するのはいいよ! 設定がばがばなのも別にいいよ! けどね、テーブルを倒すのはどうかと思う! 床にスクランブルエッグが撒き散らされて……誰かがゲロしたみたいだよ!」

「いや、それは、まじでごめん」

「これ誰が片付けるの!?」

「それはぼくがやりますです、はい」

「だよね! 遅刻する前にこのスクランブルゲロ片付けてね! あたしは先に学校行ってくるから! 朝ごはんはコンビニの弁当でも食ってろ馬鹿!」


 言いたい事を言ったひばりは俺に蹴りを入れてから学校に走っていった。

 残ったのは見るも無残な姿になったスクランブルエッグと悲しみに暮れる俺だけだった。

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