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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

術者シリーズ

舞台の上にようこそ!

作者: 秋月煉

昔書いたボツ小説を、手直ししたものです。色々ツッコミがあると思いますが、どうぞ、生暖かい目でご覧下さいませm(__)m

暗闇の中、スポットライトに照らされて、観客達の熱狂的な拍手により、今宵もまた、物語が紡がれる――――――。


『皆様、ようこそおいで下さいました』


舞台の上、シルクハットをかぶり、ビシッと糊の効いた白のタキシードを着こなすのは、真っ黒い兎。


『今宵の舞台をどうぞお楽しみ下さいませ』


朗々と会場に広がる声は、この舞台を楽しむ司会者故の愉悦感。


『今宵、司会を勤めますのは、“赤目の黒”でございます』


右手を胸元にあて、会場に一礼する様は、何と洗練された事か。と、舞台上からガタガタと音が上がる。


『おやおや、待ちきれないお話達が騒ぎだしたようですね』


苦笑をするその姿でさえ、司会者は様になる。


『ふむ、今宵はこのお話に致しましょう』


そう言った彼は、ガタガタなる箱の一つに、懐から出した美しい銀色の鍵で、扉を開ける。


『皆様、どうぞお楽しみ下さいませ』


その声と共に、箱から煙が上がり始める。


『あぁ、皆様、どうぞお気を付けください、お話達は悪戯が、大好きですからねぇ、わたくしめも気を付けませんと―――――』


そう苦笑気味に答えつつ、姿勢を正す。


『今宵の演目は――――――』


幕は、開いた。



◇◇◇◇◇



星の輝く満月の日に、お寺に行っては行けないよ。

何故ならあの世から、帰ってきてしまうからね。

誰かって?

さあ、それは知らないよ。

だって見た人達は、誰も帰って来ないんだから―――――――。



◇◇◇◇◇



とある教室を開く少女がいる。長い髪をみつあみにして、眼鏡をかけた少女は、名前を鬼凪院(きなぎいん)  結江(ゆえ)という。この部室、心霊同好会の三年生である。


「部長〜……あの〜」


控え目に教室に入ると、いかにもな眼鏡オタクがパソコンから、顔をこちらに向けた。


「やあ、鬼凪院くん、今宵は満月、絶好の怪談日和じゃないか」


ニヤリと笑う部長に、半場諦めの境地にさえいる。やはりそういうお話ですか。半分検討を着けたとはいえ、やはりこの展開にはなってほしくなかった。


「またですか?」


問い返せば、嬉しそうにパソコンを指差す部長。その姿は、まさしく新しい玩具を手に入れた子供のようだ。


「まあ、そう言わず、見てくれたまえ、この書き込みを!」


胡散臭いとはいえ、見なければならないだろう。部長に言われた部分を読んでみる。


「何々……満月の都市伝説……満月の日に寺に行っては行けないよ………何ですか? これは」


呆れて物も言えない。これが都市伝説? 馬鹿みたいに普通の話じゃないか。まるで常識を言われているような。


「まあ、試してみようじゃないか! 今夜は満月、メンバー全員で参加だ」


部室として使っている部屋のカレンダーを確認する。これは満月を差す印がついたやつで、見れば満月の丸い印があった。

はぁ、またこうなるのか……………。


「わかりました…………連絡しておきます」



◇◇◇◇◇



今宵は満月。

すでに廃寺の寺に、場に似つかわしくない若者達が集まってきていた。数は五名。少ないがこれで全員である。


「で、部長、何でこんな場所に集合なわけ? 今、何時かわかってます? 11時55分、法律上まずいはずですよ?」


彼女は早乙女ひさの、一年生である。髪をポニーテールにした、はつらつとした明るい少女だ。


「そう言うな、もう慣れただろう?」


そういうのは、短い髪の少年、名前を龍ヶ崎 (とおる)、二年生である。


「楽しそうじゃないですか」


場にそぐわない程、穏やかな声が響く。柊 陵介(りょうすけ)、一年生だ。肩より少し長い髪を結んで、着物を着ている彼は時代を間違えたような気さえする。


「あの、取り敢えず皆さん揃いましたし、始めましょうか」


何とか仕切ろうとした矢先、時計が12時を差した。


「始まったようだね!」


懐中電灯を頭にさして、御守りを山のようにつけた会長が言った。まるでお化けみたい、とその場の全員が思ったが口には出さなかった。人間、目を逸らしたい物の一つや二つ、あるものなのである。

と、嘘みたいに辺りが暗く、じとっとした嫌な風が鳥居から流れてくる。


「何かしら?」


ひさのが訝しげに言うが、その一瞬で赤い鳥居は黒く染まり、先程よりも嫌な風が吹き始める。


「まさか、あの世と、この世が繋がっていくのか! まさか自分の目で見れるとは!!」


感動しているのはいいが、それってまずい事だとか、そういう危機意識はないんだろうか? この部長は!


「何か出た!! あれは落武者、あれは顔無し、あれは幽霊か!」


なまじ視る力があるだけに、会長は興奮状態である。平時なら絶対に近づきたくないご人である。


「まずいな……………囲まれているぜ」


龍ヶ崎の言葉通り、悪霊とかした幽霊達は皆が一斉に鳥居を目指している。こんなのに巻き込まれたら、洒落にならない。生きたまま、あの世へ行く事になるだろう。


「ヤッホー! 凄いぞ、凄いぞ〜!」


興奮ここにいたり。だがその前に、彼だけがガクンと倒れてしまう。


「えっ? 部長!?」


突然倒れた彼に近づいて行くと、それを塞ぐ影が現れた。まさに一瞬の事である。


『いやいや、これ以上、私の話を壊して貰っては困りますな、お客様が飽きてしまう』


現れたのは、黒い漆黒のウサギ。シルクハットにタキシード、右手に杖を持ったウサギは、彼女が知っている人物であり、何よりも。


「赤目の黒! 何故お前がここに…………!?」


赤い目のウサギは、憎悪から。青い目のウサギは、優しさから。二人は双子。二人で一つ。

赤目の黒は、憎悪から生まれ、負の感情を増大させる存在。故に、この裏の世界では、危険視された存在なのだ。


「青目の白はどこ? 二人でいるはずではないの?」


そうか、赤目の黒がいるからには、この都市伝説は彼が作り上げた話なのだ。サイトの言葉に力を込めて、誘い込んだのだろう。興味本位の間抜けな人間達を。目撃者等いないだろう。今頃、あの世へと彷徨っているはずだから。


『さあ、私は知りませんよ、青目の白は自由に過ごしていますからね、しかしこの話は、私の傑作の一つ、邪魔はさせませんよ?』


凄まじい迄の怨霊達が、鳥居に向かっていく。それは生身の人間である彼らにも影響を及ぼし始めていた。


「くっ、引き込まれる!」


龍ヶ崎が一番近くにいたためか、鳥居に引き込まれ始めていく。


「皆、副部長命令よ、発動させなさい!」


『おやおや、面白いお話が生まれそうですね、私はおいとまいたしましょう』


シルクハットを手に持って、優雅に一礼すると、さっと消えてしまった。


『ご機嫌よう――――』


「っ! こら、待ちなさい! 陰険うさぎっ!!!」


「鬼凪院先輩!!」


ひさのに言われて、結江は歯噛みしながらも、自分の眼鏡とみつあみを解いていく。


「腹立つ! あの黒ウサギ、いつか見てなさいっ!」


結江は普段、自分の力を封じている。それは自分の身を守るためである。だが後輩を守るためなら、絶対にそれを解く。


「柊くん、結界を」


結江の声に柊は、今までてこずっていたとは思えない程、鮮やかな手際で結界を作り上げる。


「ひさの、貴方の魔術で悪霊達をあの鳥居に集めなさいっ!」


「はい!」


ひさのは、どこからともなく杖を取り出すと、美しくも早々と呪文を唱えていく。


「龍ヶ崎、貴方はさっさと抜け出して、ひさのが取り逃がした魂を除霊しなさい!」


「ちっ」


舌打ちが聞こえたが、まあいつものことだ。

さて自分もするとしよう。赤目の黒が造った核を壊す。それは私がやるべきだ。龍ヶ崎は脱出と雑魚が多い所為で、そこまでする余力はない。


「あの陰険ウサギ、どこに造ったのよ!」


周りを見渡すがどこにもない。焦りだけが過ぎていく。


「あっ! 鳥居!」


皆が鳥居を目指しているんだから、それを何とかすれば! 鳥居に向かって跳躍する。術で上にトンと着地すると、すぐに気付いた。黒い毛が鳥居に絡み付いているのだ。


「あの陰険ウサギ、味な真似をしてくれるじゃない!」


これは厄介だが、燃やせば問題なしだ。


「燃えなさい!」


ぼうっと勢い良く燃えていく。それと同時に、幽霊達も消えていく。やはりあれが、核となって霊達を呼び込んでいたのだろう。


「終わった………」


誰かの呟きが風に塗れた。

勿論、気絶した部長は責任もって、御自宅に送り届け、皆も帰宅したのである。

勿論、次の日の部室が荒れたのは、仕方ない結末なのかもしれない。


「鬼凪院くん、次はこの怪談を――――」


「部長、いい加減にして下さいっ!」



◇◇◇◇◇



呆気なく、この都市伝説は姿を消した。変わりに生まれた都市伝説がある。


――――満月の夜、お寺に行っては行けないよ、あの世の炎に燃やされてしまうからね。怖い恐い鬼の火が、貴方を燃やすのさ――――



もしかしたら、ほら、貴方の後ろにも………………。


読了、お疲れ様でした。


初めましての方も、お久し振り〜な方も、改めまして、秋月煉です。

本日は、初めてのジャンルであるホラーです☆ この寒い時期にホラーって、何だかイマイチな感もしますが、お楽しみ頂けましたでしょうか? 最後、ゾクッと来てくれたら嬉しいですね(笑)

昔、このタイプの話が好きで、勿論、今も好きですが、自分でも書いておりました(笑) 悪い奴をやっつける、カッコいい?ヒーローが好きなんですよ。

今では、勇者様や、恋愛、婚約破棄モノ………しか書いてませんが、たまに書きたくなります(笑)


色々とツッコミがあるとは思いますが、どうぞ笑って流して下さいね。


感想、誤字脱字、ご意見、いつでもお待ちしております。なお、秋月はあまりメンタルが強くないため、甘口で書いて頂けたら嬉しいです。なお、返信は一部を除きメッセージで送らせて頂きます。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 和洋が上手くミックスされていて、 新鮮な感じがしました。 [気になる点] 特にありません。 [一言] 和洋の恐怖が、相乗効果を上げているような 面白い設定ですね。 コメディタッチのところ…
2017/02/14 20:05 退会済み
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