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<R15>15歳未満の方は移動してください。

秘密と仇なす白羽の矢!

作者: 浅井珪香

R15は保険です。

ネタバレなので書きませんが、ノーマルなシンデレラストーリーしか受け付けないって方は、戻られた方がよろしいかと思います。


何が来ても大丈夫!!という方、楽しんでいただけたら嬉しいです。

今起きたことを説明しよう。

私、リースは数日前親が行方不明になった天涯孤独の16歳。

慎ましく生活していたため、あるのは小さいながらも温かい家1つ。

そんな家が………真っ赤に燃えていた。


いや、洒落なりませんて!これからどうすれば。いや、もう生きていけない絶望だ。

反射的に、家へダイブしようとする私を、近所のおじさんが引き留める。

後生だから止めないで!


「そなたがこの家にすむ年頃の………子供か」


私と愛する家の間に、馬に乗った役人が割り込む。


「……そうですけど」


ああ、愛しい家が私をおいて崩れていく。

待って行かないで!私も連れていって!


「そうか、そなたは白羽の火矢に選ばれた、我が火の国の王妃候補だ」


白羽の火矢、だって?

まだ役人が何か言っているが、私には聞こえなかった。

火矢ということは、この家を燃やしたのは、こいつということか!


「………るせない」

「ついては、即王宮に向かい……ん、何かいったか」

「許せないと申したのです! 人の家焼いておいて何喜ばしいみたいに言ってんですか!」


ゴウゴウと燃えていく我が家。不思議な事に、火は隣近所に広がることなく、我が家だけを燃やしている。


「ん?そなたは王宮に行くのだから家など不要だろう。 家族には城下に家を建てるから安心せい」

「私の意見は」

「白羽の火矢は絶対である」



私は膝をついた。








そう、この国には成年を迎えた王子王女の誕生日に、火矢の儀式を行う。

それは配偶者の親族の増長を防ぐためとか言われていたが、大抵は見合った貴族の家に落ちていたため、庶民にとってはただのイベントのようなものだった。

そう言えば、今日が王太子の誕生日で、イベントがあったらしいと聞いたのだが。

まさか、こんな遠くまで火矢がくるとは誰も思わないだろう。


「なんで私なんだか」


ドレスを着て、揺れの少ない高級な馬車に揺られる事数日。

私は、王宮を見上げた。

そして、その場で回れ右をしたが止められた。


「やっぱり、私には荷が重すぎます」

「白羽の火矢は絶対である」

「もしかして、誰かが真似をして焼いたのかも」

「白羽の火矢は、対象の家しか焼かない上に、1日で元に戻る」


ん?


「戻るんですか?」

「うむ、幻の火だからな」

「帰ります!」


このまま王太子に面会しても、不敬罪確定である。

私には、根本的に秘密があった。相手が王太子…王子である以上、どうしても結婚など出来ないのだ。


「無理だ、諦めよ」

「えぇぇ……」


城の門が開く。私にとって地獄の入り口みたいに思えた。









数刻後、私は謁見室の1つで待つように言われた。

もしかして、白羽の火矢は嘘でしたとかはないだろうか。でなければおかしい。何故なら私は…。

私の思考を切るように、扉の向こうから声がした。

国王陛下、妃殿下、王太子が入室するとのこと。

あぁ、私の人生終了のお知らせ。

目を伏せ、最敬礼で出迎える。


「面をあげよ」


私に、鈴がなるような可愛い声がかかった。やけに若い妃殿下だな。

そう思って顔をあげる。

目の前には、厳つい男性、優しくたおやかそうな女性、そして王子服に身を包んだ美少女がいた。

いや、本当に美少女。男装の麗人とかじゃなく、美少女が男装しましたという感じだ。

成人…18歳の割には幼く、真っ赤な頬、ぷるっぷるのピンクの唇、くりくりの瞳、華奢な肢体。

そういう事だったのか!!


「君がリース……リィストレイ・サルバトロイ次期伯爵、だね?」

「………次期伯爵以外は」


そう、私の秘密とは、性別を偽って庶民に紛れていたことだ。

両親、つまりサルバトロイ伯爵夫妻は、まさに政略結婚だった。始めから冷めきった夫婦は、互いに愛人を作っていた。

勝手が悪いのか、一人は夫婦の子供でないと、と励んだ結果が私だ。

望まれない子供である私は、7つの時心を崩しかけて乳母夫妻に助けられるように庶民に紛れ、容姿も女性のように扮した。元々母親似の女顔だったから、容易ではあった。

そして両親の干渉が法定上不可能になる成人になった暁には、堂々と男として暮らし、可愛いお嫁さんを…と計画していたのだ。


「伯爵はアウトと思ってましたよ」


そう、白羽の火矢は結局半分が公爵か侯爵に当たる。そして残りは、何故か伯爵を避けるように子爵、男爵に当たる。微々たる確率で伯爵か庶民かだ。


「それにしても、可愛らしいお婿…いえ、お嫁さんですこと」

「恐れながら、私は普通に女性が好きです」

「あら、うちのエディちゃんは女の子よ、王太子だけど」


根本的に、なぜ王太子が女性なのか。

そういえば、噂で「どんな厳つい男が女装させられて嫁ぐのか」と意味の判らない話を最近聞いたな、と思い出す。

私じゃなければ、キラキラした青年貴族が女装させられて嫁ぐことになったのか、可哀想だな。


「通称はエディ。本名はエミーナ・エルフレイムだ!リースには睦言むつごとのみこっちで呼ぶ事を許す!」

「………はぁ」


確かに、睦言くらいは男の名前を呼ぶのは嫌だからね。

って、睦言言うような関係にはなりません!


「ふむ、王太子もそなたを気に入ったようだな」

「はい、父上!どんな厳つい女装男が来ると思っておりましたが………リースは、かわゆらしいです」


おーおー、乙女のように顔が真っ赤ですね、王太子サマ。


「1つお聞きします」

「なんだ?」

「王太子を廃嫡なさるつもりは…」

「何を言うか!そんな事をしたらエディが可哀想じゃないか!」

「ほ、ほら、私と同い年に第二王子ルイス殿下がいらっしゃるじゃないですか。若くして有能と聞きますよ」

「聞き捨てなりません義姉上!!」


バーン、と背の高く威厳を醸し出した少年が現れた。それこそ本来の王太子ルイス殿下だ。



「愛らしい姿、それは王室に新しい風を吹き込むんです。それはすなわち、国にも吹き込む!兄上の可愛さは世界を救う!!」


あ、だめだこのブラコン。いやシスコンか。


「周辺諸国の言語と歴史、外交手段に法律、すべてを叩き込んだ僕の頭脳は、兄上に捧ぐためにあるのです!」


ハイスペックなのに、残念な王子ですね。


「可愛らしい兄上と、麗しい姉上に仕える事こそが至上の喜び」

「ふむ、優しい弟を持って嬉しいぞ、ルイス」

「はい!」


王太子に頭を撫でられて、ルイス殿下は嬉しそうだ。

ひとしきり撫でた後、王太子は私に顔を向けた。

うん、私好みの美少女だね。


「リース、左手を出せ」

「はぁ…?」


状況に疲れて、不覚をとった。王太子は、私の手を掴むと、薬指に指輪を嵌める。

台座には、王家の紋章。

ハッとして取ろうとしても取れない。

なにこれ呪いの指輪か!?


「この指輪は、第一子が宿らぬと取れぬのだ。 しっかり励め!」


目の前にはにっこり笑った美少女。どうしても逃れられそうにはなさそうだ。

私は、小さくため息をついて国王に向き直った。


「国王陛下、僭越ながらどうしてもお聞きいただきたい条件がございます」


私が言うと、まだ不満かとばかりに国王の表情が威圧を増す。


「この結婚、発表をするのはあと2年お待ち頂きたいのです」

「なにゆえ」

「私がリィストレイクとして王太子に嫁げば、未成年ゆえ実家が口出しをしてくるでしょう。 私は実家とは縁を切りたいのです。 成人になるまで、お待ち頂きたい」

「ふむ……まぁ、そなたの実家は、余も思う所がある」


国王にそう言わせるほど、良くないようだ。


「もしくは、庶民出身のリースとしてお側に上がるか、です。 こちらは天涯孤独になっておりますので、庶民というネック以外は問題ないかと思われます」


義理の両親…乳母夫妻は、基本的冒険好きで、よく置き手紙をしては1年ほど行方不明になる。ギルドトップのSクラスは伊達じゃない。40歳のまだまだ現役だ。

ちなみに、私はAランクだ。二人ほどの力はまだないが、このか弱い王太子を御守りするくらいはできるだろう。


「ふむ、では平民のリースとして花嫁ドレスを着てもらうとするか」


ん?


「いや、さすがに神の前で性別を偽るのはいかんと、リィストレイクには男の礼服を用意させていたのだが……仕方ないのぅ」

「ふむ、私もドレスを着るのは苦しいから嫌だったのだ!さすがは私の嫁だな!」


一瞬、思考が止まる。


「ちょ!2年、2年待ってください!!」

「そなたは、2年も私に禁欲せよと申すのか!?」

「何ですかその、新妻迎えたばっかの男のような言い方はっ」

「事実ではないか、可愛い新妻を迎えた夫だぞ?」


どの口がそれをいう。

口調こそ王太子だが、美少女だ。


「じゃあ満足させてくれたら、ドレスを着ましょう。 王太子サマはどう私を悦ばせてくださるんでしょうねぇ?」

「む、いいおったな!」

「もし悦ばなければ、延期ですからね」

「よかろう!男に二言はない!」




結果、2年に挙式を迎えたのは言うまでもない。


おかしいな、最初は普通の男女でシンデレラストーリーだったのに。

そして、キーワードに必ず「コメディ」が付く気がしてきました。


こんばんは、浅井です。

へんてこなシンデレラストーリー、いかがだったでしょうか?

というのも、男子が好きな女子のため女装してアイドルグループのトップに立とうとする…というマンガを読んでまして、なんとなく、女装男子を書きたくなりました。

浅井、実はまったくBL読めず書けずです。仕事上なんとかしたいんですが…。

なので、女装男子と男装女子で良いじゃないって結果がこれです。

男装の麗人は、悪役令嬢で使ったので、こっちは明らかな美少女です。

自分は王太子と言い張る王女といいようにあしらう執事のマンガが好きだからです。早く2巻でないかな。


こんどこそ、これはまったく続きません!と言い張れる短編です。

本当に好きな題材だけで作ったので、めちゃ楽しかったです。

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